ミア、次の革命へ!
更に数か月が過ぎた。王都の街並みはかつての重苦しい布の壁ではなく、色とりどりの軽やかな布で彩られていた。子どもたちは走り回り、兵士たちでさえ肩の布を工夫し、誇らしげに胸を張っている。──革命は確かに成功した。けれど私の胸には新たな問いが芽生えていた。
「この針で次に何を縫うべきかしら?」
工房は王都の中心に根を張り、毎日多くの人々が訪れる。老人が孫のために小さな服を作り、若い娘たちは祭りのために鮮やかな布を染める。子どもたちは余った布で人形を作り、笑いながら走り回っていた。私はその光景を見つめ、胸の奥にじんわりとした温かさを感じた。だが同時に工房の壁の向こう、王都の外に広がる大地を思った。
「この革命はまだ王都の中だけ……」
地方の村では依然として布の格差が残り、飢えと寒さに苦しむ者たちがいる。私の耳に届いたのは、辺境の地で「布の独占」を守る勢力がまだ生き残っているという噂だった。
その夜、工房の屋根裏で私は地図を広げた。オルガが階段を上がってきて、私の隣に腰を下ろす。
「また次の戦いを考えてるな」
「ええ。王都は確かに変わったけれど、まだ世界のすべてに布で革命を起こせてはいないから」
オルガは少し笑って肩をすくめた。
「君らしいな。でも無茶はするなよ。俺はいつだって一緒に行く」
そんな甘い言葉にいつもほだされそうになる。私は彼の瞳をまっすぐに見つめ返し、ゆっくりと頷いた。
翌日、リュシアンが工房を訪れた。かつて組合の後継者として冷徹な顔をしていた彼は今ではすっかり柔らかな表情をしていた。彼は手に針を握り、拙いながらも子どものためにシャツを縫っていた。
「僕はもう父の影では生きない。もし君が旅に出るなら、僕も共に針を持とう」
その真剣な眼差しに私は小さく微笑んだ。
「心強い仲間が増えましたわね」
やがて私たちは決めた。工房の仲間と共に、新たな「布の道」を作る旅に出ることを。王都を起点にして、村から村へ、街から街へ。布と針を携えて巡る旅を。それは武力でも権力でもない、布を通じた交流と連帯の道だ。
「次の舞台は王都の外。世界そのものを縫い直すの!」
私の言葉に仲間たちは歓声を上げた。誰もが胸に布片を抱き、旅立ちの日を夢見る瞳をしていた。工房の灯りの中で私は一枚の布を縫っていた。それは「未来の旗」。白布に大きく縫い込まれたのは、針と糸が輪を描き、人と人を繋ぐ模様。私は完成した旗を高く掲げ、そっと呟いた。
「この布がある限り、私たちは何度でも立ち上がれる」
妹と自分を比べてその才能を羨んだ日々。そして自分のコンプレックスを抱え眠れない夜もあった。けれど今は違う。その体もこの手も全てを抱えた上で──私は誰よりも堂々と前に進んでいる。……自分を好きになるってこんなにも大切だったのね。
「さあ、次は世界全土を美しくしてあげるわ!」
その声は夜空へと響き、星々の光と交じり合った。




