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事件あとの静けさ

 翌朝、王都は静けさの中で目覚めた。燃え残りの匂いは街の記憶となり、人々は互いに手を取り合って片付けを始めた。工房は再び開かれ、裁縫台は休むことなく針を走らせる。私は人々の手で縫い合わされた大きな布を広げ、その表面に一つずつ名前を書いていった。名前は特別な飾りではなく、ただ確かにここに存在した証だ。リナがそっと寄ってくる。彼女は以前より少し背が伸び、目にしっかりとした光を宿していた。

「お姉ちゃん、私も縫いたいです」

 私は微笑んで彼女の小さな手を取り、針を握らせる。

「もちろん。あなたの針先も、誰かの笑顔を作るのよ」

 オルガは私の隣に座り、ふいに小さく笑った。泥と煤で汚れた彼の手を私は自分の掌で包んだ。言葉は少なかったが、その温もりがすべてを語っていた。リュシアンは遠くの塔を見上げていた。彼はもう組合の冷たい鎧をまとう必要はない。彼が選ぶのはこれからだ——私たちと共に歩むか、自らの中の秩序と向き合うか。

 やがて裁判と騒乱の後始末が進む中で、王都はゆっくりと変わっていった。貴族の衣装は徐々に軽やかになり、庶民の布は豊かに色づいていった。市場には小さな工房が増え、人々は自分の手で服を作る喜びを知った。法も少しずつ改められ、布の数で人を測るような法律は姿を消していった。


 数か月後、私は静かな丘の上で小さな展覧を開いた。そこには工房で生まれた数百着の服が並んでいる。布は分厚くも薄くも豪華でも粗末でも、それぞれがその人らしさを宿していた。観客の中にはかつて総帥の側にいた者たちも混じっていた。彼らは不思議そうにそして時に涙ぐみながら服を手に取っていた。オルガが私の耳元で囁く。

「君が言った通りだ。美は人を救う。俺はそれをいつも信じてた」

 私は顔を上げ、夕陽に照らされる街を見渡す。胸の中には幾つもの小さな火が灯っているようだった。太い体もくすんだ肌もまだ全部は変わっていない。だが私の胸にあるのは以前とは違う輝きだ。針を持つ手が誇りを帯び、魂が軽くなる。美は私の体を通して広がり、誰かの心に届いている。リュシアンが静かに歩み寄り、控えめに言った。

「ミア……君がここまで来るとは思わなかった。僕はまだ学んでいるところだ。だがもし君が望むなら、僕も針を持ってみようと思う」

 私は笑って肩をすくめた。

「いいわね。針は誰のものでもないのよ。だって使い方次第で世界を織り替えられるのですから」

 その夜、工房の煙突からは柔らかな灯りがこぼれ、遠くの星が静かに瞬いた。私は針を握りしめ、小さな布片をそっと縫い合わせた。針の先端が光を穿ち、私の指先に未来が触れる。革命は終わらない。だがそれはもう、私一人の戦いではない。人々の手の中で育ち、誰かの笑顔を灯し続けるものになった。私は微笑んでこう呟いた。

「これからも、ずっと――」

 胸に灯った小さな火を確かめるように、私はもう一針縫い合わせた。

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