表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『婚約破棄された令嬢ですが、探偵稼業で無双してたらなぜか王子と再婚することになりました――第二王子の心を射止めたのは、前世弁護士で王家の闇を暴く“真実の王妃”でした』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『婚約破棄された令嬢ですが、探偵稼業で無双してたらなぜか王子と再婚することになりました』第一部:嘘を暴くは、ただの令嬢にあらず ~真実と裁きを携えて、婚約破棄から王妃へ~
5/88

◆第5話『偽りの毒と、語られぬ過去』


夜の王宮は、昼の喧騒とはまるで別世界だった。

静けさは緊張の裏返しであり、

柔らかく灯された魔石のランプが、薄暗い廊下に揺れる影を落としていた。


「……やはり、貴族の厨房は規律が厳しいわね。

使用人の立ち入り記録、魔力の痕跡、全てが“帳尻”を合わせたように整っている。整いすぎているわ」


セシリアは厨房の隅に腰を下ろし、壁に背を預けた。

レオン王子も黙ってその隣に座る。

ふたりを照らすのは、卓上の小さな魔法灯のみ。


「まるで、“誰かの手”で跡を消されたように、完璧だった。

しかも毒は、王太子の皿に直接ではなく、厨房で使われた“銀製のレードル(柄杓)”に仕込まれていた。

その道具だけを使う料理──“特別献上スープ”にだけ、毒素が付着していたのよ」


レオンが頷く。


「兄上のスープは、調理責任者が直接よそっていたはずだ。つまり、そこにしか毒を仕込めない」


「そして、そのスープ……元々は、“あなた”の皿に配られる予定だったのよ」


レオンが息を呑む。


「……なんだと?」


「配膳直前で“配席の変更”があった。

正式な王家の式次第には、あなたが王太子の右隣、王妃候補の左隣に座る予定だった。

けれど、なぜか直前で“逆”になった」


セシリアは言う。

「つまりこの毒は、王太子狙いではない。“あなた”、レオン殿下を殺すために仕込まれたもの」


重く、沈黙が落ちる。


「……誰がそんなことを」


「それを調べるのが、私の仕事でしょう?」


セシリアの声は静かだが、どこか燃えるように冷たい。


「動機は明確。“継承権の調整”よ。

あなたを排除すれば、王位の行方は大きく変わる。

そして“毒”という選択肢は、暗殺者ではなく、もっと上品な“内通者”の犯行を示している」


王家内部に敵がいる。

それは、セシリアにとっても他人事ではない。


「……君は、本当に恐ろしいな。

まるで、すべての嘘を暴くことに“快楽”すら感じているようだ」


レオンの呟きに、セシリアは一度まばたきをしてから、視線を下ろした。


「……快楽、ね。そう見える?」


「少なくとも、君は誰にも頼らずに全てを見通しているように思える。

まるで、“自分を守るため”に人を見透かしているような……そんな印象を受ける」


その言葉に、セシリアの手が一瞬だけ止まる。

それは、鋭い洞察だった。


彼女の思考と判断は確かに優れていた。

だが、その根底には常に“疑い”と“防衛”があった。


「……人を信じるって、どうやってやるのか、よくわからないのよ」


ぽつりと、セシリアは口を開いた。


「前の世界では……“真白”という名前だった。

私は弁護士で、日々誰かの嘘と戦ってた。

浮気、裏切り、詐欺、殺意。

その中で、信じる価値がある人なんて、いなかった」


「……その世界で、何があった?」


静かな問いに、しばし沈黙が流れる。


やがてセシリアは、微笑んだ――哀しげに。


「婚約者に裏切られてね。

浮気されて、相手が妊娠して、逆ギレされて。

ああ、これはもう喜劇かって思ったわ。

それで、気づいたの。“愛”も“誓い”も、言葉だけだって」


レオンは、なぜか目を伏せなかった。


「……君が、この世界で“偽り”を憎む理由が、少しわかった気がする」


「憎んでないわ。見逃すつもりがないだけよ。

それが私の“仕事”だから」


彼女はふっと笑う。その笑みは、どこか孤独で、しかし芯の通った強さを秘めていた。


「この事件、追うつもりか?」


「もちろん」


「危険だぞ。君は王家に睨まれるかもしれない」


「……だったら、もっと面白くなりそうね」


レオンは苦笑する。

そして、彼はそっと呟いた。


「君のような女を、最初に知っていれば……

俺は、あんなくだらない“政略婚”なんて、選ばなかったのに」


その言葉に、セシリアは驚くこともせず、ただ静かに眼を伏せた。


――この世界では、まだ、信じていい人を知らない。


だが、もしかしたら。

この男だけは、少しだけ“違う”のかもしれない。


彼女の心の奥に、かすかな光が差し込んだ――

まるで、閉じかけた扉の隙間から、やさしい風が吹き込むように。


(つづく)



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ