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『婚約破棄された令嬢ですが、探偵稼業で無双してたらなぜか王子と再婚することになりました――第二王子の心を射止めたのは、前世弁護士で王家の闇を暴く“真実の王妃”でした』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『亡国の復讐者たちと、探偵王妃の“帝都潜入”編』 第三部:すべてを奪われた者たちが動き出す。闇を裂くのは、王妃探偵の冷徹な眼
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◆第36話『建国の偽史、裏王統の記憶――探偵王妃が下す裁き』




戦いの嵐が去った《第四の継承地》。


そこに残ったのは、

崩れかけた石柱と、血の匂い、

そして、記録を守り抜いたひとつの影。


セシリアは、黒曜の書を胸に抱え、

なおも立ち続けていた。


その前に、剣を落とし、膝をついた男――

カイゼル=ダレイオスがいた。


「殺せ……そうすれば、お前の“正義”は満たされるだろう」


「私は……正義を名乗るつもりはないわ」


セシリアの声は、静かだった。


「私は“探偵”よ。

ただ事実を見て、矛盾を暴いて、裁く者」


カイゼルが苦笑する。


「ならば見ろ。

この記録を、建国の“裏史”を」


彼が差し出したのは、

赤い封印で綴られた古文書――


『ルークス王朝非公式記録:裏年譜』


そこには、かつて封じられた王の名が綴られていた。


「第一代王ルークスには、“双子の弟”がいた。

だがその弟は、記憶と魔力において上回っていたがゆえに、

謀略によりその名を奪われた。

そして弟の血統こそが、我ら“第八王家”の始祖である」



「……つまりあなたたちは、

“正統”の座を、本来は奪われた側だったと?」


「そうだ。

我らは奪われた。

歴史の表に出ることも、記録に残ることすら許されず――

ただ、封印され、監視され、滅びを待つ存在として生きてきた」


カイゼルの目は、怨嗟ではなく、静かな“真理”の光を宿していた。


「だがな、セシリア。

それでもなお、“正義”とは、力の上にしか存在できないのだ」


セシリアは沈黙する。


彼の語ったことが、すべて“真実”である確証はない。

だが――


「裏史は、確かに存在していた。

そしてあなたたちは、その血を引いていた」


「それだけでは、国家を揺るがす理由にはならない。

けれど……」


セシリアは、ゆっくりと腰を下ろし、

ひとつの“聴取記録”のように、記録帳を開く。


「私は、すべてを照合する。

あなたたちの裏史と、王国の正史。

そして“今なお生きる人々”の記憶と、未来に起きるかもしれない戦火」


「そのうえで、あなたを裁く。

私の“証拠主義”に基づいて」


その言葉に、カイゼルは初めて目を伏せた。


「証拠……か。

ならば、まだ残っている場所がある」


彼は、懐から小さな鍵を差し出す。


「これは、“王家原典室”の鍵。

ルミナリアの王城地下にある、

誰も入れぬ“記録の間”の扉を開ける鍵だ」


「あなたはなぜ、そんなものを?」


「我ら第八王家は、封じられる前、

“全記録を沈めよ”という王の命令に従い、

真実の一部を“鍵”に封じた」


「皮肉だな。

正史を歪めた王の命令に、最後まで忠実だったのだから」


セシリアはその鍵を受け取る。


「ならば行くわ。王城地下、原典室へ。

真実の最奥へ――この手で、すべて暴くために」


王統の闇は、なおも深く、

真実と偽りの境界線は、にじんでいる。


だが、たとえそれが“正統王統”の罪であっても――

王妃探偵セシリアは、決して目を逸らさない。


すべてを、暴く。


すべてを、記す。


その先に、誰が玉座に立とうとも――

正しい“記憶の継承”がなされるまで。


(つづく)



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