◆第35話『奪還の刃、異邦の密使――裏王統の闇が動き出す』
《第四の継承地》。
それは王国の歴史から封印された地にして、
“真の記憶”が眠る王統の最終記録地だった。
セシリアは、今まさにその“第零章”を手にし、
王政の起源に秘された禁忌の真実と対峙していた――
だが、その瞬間だった。
•
「王妃セシリア殿下、お下がりください――!」
鋭い声と同時に、石壁が爆ぜた。
神殿の外周から、黒装束の兵士たちが雪崩れ込んでくる。
その旗印には、見覚えのない紋章――
否、それは歴代王家の中でも“廃された血筋”が用いたとされる、
《獣面と刃の双紋》。
「これは……“隠された第八王家”……!」
•
「第八王家は……王統の“裏系譜”!?」
レイが剣を構えながら、敵の動きを読んだ。
「奴らは《裏王統継承派》――
つまり、“黒曜の記録”を奪うために派遣された部隊だ」
セシリアが指輪を外し、胸に抱き締める。
「奪わせるわけにはいかない……!
これは、未来の“裁き”を変える力なのよ!」
•
黒き軍勢の中央、指揮を執る者が名乗った。
「我が名は、カイゼル=ダレイオス。
裏王統の正嫡にして、
“歪められた王史を正す”者」
その目は、確かに“正義”を帯びていた。
だが、その正義は血にまみれ、滲んでいた。
「貴様らは、偽王に仕える傀儡。
血の記憶は、正しき継承者の元へ返されねばならぬ!」
「正しい継承者……?」
セシリアは睨み返した。
「正義を語るのなら――
なぜ、真実を奪おうとするの?」
「真実は、強き者が持つものだ」
「それは暴力でしかない」
「違う、これは革命だ」
「革命の名を借りた、ただの簒奪よ」
火花が散るように、言葉がぶつかる。
•
刹那、カイゼルが呪印を起動した。
神殿内部が歪み、封印術式が強制展開される。
「しまった、結界が……!」
「奴は、この場所そのものを“転位門”として利用するつもりだ!」
•
「――絶対に渡さない!」
セシリアが魔導具を展開し、
レイがその隙を守るように前に立つ。
「時間を稼ぐ! この記録だけは、絶対守れ!」
剣と魔法が激突する。
古代の記憶が響く神殿の空間で、
“記憶の継承者”と“偽りの正当継承者”がぶつかり合った。
•
――そしてその最中、遠く帝都の片隅では、別の動きがあった。
《異邦の密使》たち。
黒いフードをまとい、声を持たぬ影の民。
彼らは既に、“次の計画”を動かしていた。
「黒曜が揺れた。王統が再び分岐する」
「ならば、我らが王座に手を伸ばす時が来た」
その名は、ヴァリト=セレスト。
そしてその妹、ミリア=セレスト。
幼き双子の兄妹にして、異邦よりの亡命者。
だがその正体は、“王家を滅ぼされた亡国の生き残り”。
彼らは語る。
「この王国に復讐を。
だが、それは剣によらず、言葉と記録によって」
•
奪われたものを、奪い返すのではない。
――“暴かせる”のだ、真実によって。
ミリアは言う。
「セシリア=リーヴェルト……
貴女が“真実を継ぐ者”なら、いずれ我らと交わるだろう」
「その時こそ、王座の座標が揺れる」
•
時代が動いていた。
王国は、表と裏の継承者。
そして異邦の王家たちによって――
静かに、けれど確実に、《再定義》の時を迎えようとしていた。
それを知る者は、まだ、ほとんどいない。
•
だが、セシリアは立っていた。
神殿の中央、血に濡れながらも、書を抱いて。
その瞳は、なお曇らず。
その意思は、なお折れず。
「この記憶は、託されたもの。
私は……裁く。すべての嘘を」
(つづく)
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