◆第34話『第四の継承地と黒曜の指輪――封印の地に眠る王政の真相』
王都ルミナリアから北東へ。
険しい岩山と霧の渓谷を越え、
地図にも記されぬ地に、その扉は存在した。
《第四の継承地》。
それは、王政創始の遥か以前――
建国よりも古い“原初の契約”が眠る場所。
古き王たちの記憶。
血統に秘された、もう一つの系譜。
そして、それを開く鍵こそが、
セシリアが七曜の祭壇で受け取った《黒曜の指輪》だった。
•
「……ここが、“継承の終端”」
風が鳴いた。
レイ=アルディオスが、剣を腰に、周囲を警戒する。
「気配がない。いや……気配すら“消されてる”」
セシリアは指輪を掌に掲げ、ゆっくりと歩を進めた。
眼前にそびえるのは、黒い石造りの神殿。
柱も、天井も、刻まれた文様すらも、どこかこの世のものではない――
「これは……ナザリア王家の記録にすら存在しなかった」
「じゃあ……この場所は、“隠された王家の系譜”か?」
「ええ。おそらく……“正統”ではなく、“裏系統”の継承地」
•
セシリアが黒曜の指輪を祭壇の台座に差し込んだ瞬間。
石壁が震え、奥へと続く階段が露わになる。
その奥、深く沈んだ地底の封印室。
そこには、“何か”が待っていた。
•
――それは、一冊の書だった。
黒い装丁。
金属で縁取られ、七つの鍵の封印で閉じられている。
そしてその表紙には、確かに刻まれていた。
『レギストリア・ルークス王統記録書第零章』
「王統記録書……?」
セシリアの指がかすかに震える。
それは、歴代王家の血と記憶、政策、暗殺、愛妾、裏の歴史までも書き記された“禁書”。
だが、ここにあったのは“第零章”――
つまり、“創始より前の物語”。
•
(まさか……この国の成り立ちは、嘘だった?)
その疑念が頭をよぎった瞬間、
黒曜の指輪が、ひとりでに光を放つ。
七つの鍵が次々と解除されていく。
それと同時に、部屋の空間が揺らぎ、
書の奥から“音”が流れ出す。
「ここに記す。我が名は、ルキウス=アスカルド。
王の名を捨て、真実の守人となった者なり。
建国の真実は、血によって塗り替えられた。
王となった者たちは、“記憶”を改ざんし、
自らの血統こそ正統と名乗った」
セシリアは息を呑んだ。
「だが、真の正統はここにある。
血ではなく、“選ばれし記憶”によって王は継がれるべきだった。
私が託したのは、“継承の器”という存在。
未来において、真実を裁く者が現れるならば――
その者こそ、真の王統にして記録者なり」
•
「……まさか、私が……?」
レイが一歩近づき、セシリアの肩に手を添える。
「お前が誰よりも、この国を見てきた。
誰よりも真実を暴き、誰よりも人を救ってきた。
なら、これを読む資格は――お前にある」
•
セシリアは覚悟を決める。
ゆっくりと、“第零章”を開いた。
ページの奥からあふれ出す、幾百年の“記憶”。
かつて裁かれた王。
処刑された正妃。
そして、亡命した姫と“記録係”。
その最後に記されていた名前に、
セシリアの手が止まった。
『記録を継ぐ者、エリス=リュシア。
その血は、いずれ“選ばれし少女”へと継がれる』
「……私の中に、“彼女たちすべて”がいる」
セシリアは目を閉じた。
すべての記憶が、彼女の中に息づいていた。
それは、歴史に殺された王妃たちの声。
子を守るために刃を取った女たちの願い。
真実だけを抱えて消えていった、無名の記録者たちの祈り。
•
「……私は、継承する。
血ではなく、意志と記憶を。
この国のすべての“嘘”を、暴くために」
その声は、もはやひとりの王妃のものではなかった。
“王を選ぶ記録者”としての、
新たな“王統”の胎動だった。
(つづく)
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