◆第27話『仮面に隠された本心――亡国の剣士と王妃の対面』
帝都・ルミナリア。
夜の帳が降り、街は仄かに金色の光をまとっていた。
だがその輝きの中心、かつて貴族たちが権勢を誇った旧王城跡地。
そこでは、“一夜限りの舞踏会”が密かに催されようとしていた。
その名も――《仮面の宴》。
主催者不明。
招待状は銀色の封筒に包まれ、受け取るのはごく限られた“選ばれた者”のみ。
その一枚が、今――王妃セシリア=フォン=リーヴェルトの手にある。
•
「……危険です。これは“罠”の可能性が高い」
ノエルが眉をひそめる。
「もちろん承知の上よ。
でも、その“罠”の先にこそ、真実があるのなら──私は進むわ」
セシリアの声は静かだった。
仮面舞踏会。
それは情報の密売、密約、あるいは暗殺までもが行われる“闇の社交場”。
だが同時に、“亡国の影”を炙り出すには、またとない舞台でもあった。
•
その夜。
セシリアは漆黒のドレスに身を包み、
翡翠の仮面を顔に添えて会場へと足を踏み入れた。
豪奢なシャンデリアが吊るされた空間。
音楽が流れ、人々が踊り、語り、仮面の下で笑っている。
だが彼女の視線は、ただ一人の存在を探していた。
──亡国の剣士、レイ=アルディオス。
•
「……“王妃”とは思えないほど、堂々としているな」
その声は、背後から落ちてきた。
振り返ると、そこには漆黒の仮面を付けた男。
灰色の外套に、傷だらけの指先。
どこか、過去に囚われたような深い眼差し。
彼の名は名乗られなかった。
だが、セシリアは理解していた。
「……貴方が、“仮面の剣士”ね」
「いや、ただの亡霊だよ。
“正義の名のもとに見捨てられた”亡国の亡霊だ」
•
踊る者たちの間を縫いながら、二人は無言で歩く。
まるで、仮面越しの密約を交わすように。
「私の調査では、あなたは七年前に“処刑された”はずだった」
「その通り。俺は一度“殺された”。
味方に裏切られ、王命によって“抹消”されたんだ。
だが……真実は、まだこの国に残っていた」
レイの眼差しは鋭く、だがどこか哀しかった。
「“嘘の継承者”が王座に就き、“真実の継承者”は粛清される。
そんな国に正義はない。
だから俺は、この国に“裁き”を下す」
•
セシリアは立ち止まり、仮面越しに彼を見た。
「貴方は、“裁く者”であろうとする。
でもそれは、ただ“傷つけられた過去”からの逃避ではなくて?」
「……違う」
「本当に?
もし私が“王妃探偵”として貴方の過去を洗い、
それが“復讐ではない選択肢”を示すものだったとしたら、
貴方はその道を捨てられる?」
一瞬、空気が張り詰めた。
•
レイは低く囁いた。
「……もし、君が“真実を暴く者”として、
俺の罪とこの国の罪、どちらにも目を背けなかったのなら。
その時は、俺は剣を納めよう」
「ならば、私の提案に応じなさい」
セシリアは、懐から一枚の封筒を差し出す。
《王妃探偵局・極秘特例協定書》
――通称、《赦免契約》。
それは罪人であっても、一時的に王妃直属の調査員として迎え入れ、
情報を共有し、場合によっては“協力関係を築く”もの。
「私は貴方を赦すつもりはない。
でも、裁く前に“真実”を知る権利は与えたい」
•
レイはしばし沈黙した後、封筒を受け取った。
「……いいだろう、“探偵王妃”。
だがこの取引が“嘘”だったときは、
次に剣を抜くのは、お前を裁く時だ」
「上等よ。
私もまた、“嘘をついた王妃”なら裁かれるべきだと思ってるから」
仮面の奥で、二人の眼差しが交差する。
復讐と真実。
亡国と王国。
探偵と剣士。
──帝都の夜は、静かに、新たな協定を結ぼうとしていた。
(つづく)
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