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『婚約破棄された令嬢ですが、探偵稼業で無双してたらなぜか王子と再婚することになりました――第二王子の心を射止めたのは、前世弁護士で王家の闇を暴く“真実の王妃”でした』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『婚約破棄された令嬢ですが、探偵稼業で無双してたらなぜか王子と再婚することになりました』第一部:嘘を暴くは、ただの令嬢にあらず ~真実と裁きを携えて、婚約破棄から王妃へ~
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◆第10話《前編》『探偵失墜──暴かれた過去と、“一通の偽り”』


王都ヴェルセリク。朝の鐘が鳴る頃、貴族たちの間に一通の“告発文”が出回った。


──セシリア=フォン=リーヴェルト侯爵令嬢は、

かつて王都学院在学中、平民の青年と“身分を隠して”交際していた。

その男は不正に資金を得ていた容疑で王都から追放された人物であり、

当時、セシリアが黙認していた可能性がある――


告発文には、青年の名前。

複数の貸金文書。

“彼女の筆跡に似た署名”の写しまでが添付されていた。


王都は、揺れた。


「まさか、こんな形で……」


書斎の机の上に広がる文書。

レオンが握りしめた拳から、わずかに血が滲んでいた。


「筆跡まで用意されている。内容も、“真実に近い嘘”ばかりだ」


「ええ、上手いわ。とても」


セシリアは、何一つ狼狽えず、ただ静かに告発文を読み終えた。


「……あの青年は、本当に不正をしていたの?」


「……していなかった。彼は潔白だったわ。

むしろ彼を嵌めたのは、王都の資産家グループ。

わたしがそれに気づいて、法廷に訴える寸前で、

――“転生”したのよ」


淡々と語る声の奥に、わずかに滲む痛み。

それは、誰にも伝えてこなかった“現実世界での後悔”。


「じゃあ、署名は……」


「偽造よ。でも……私が彼を“守りきれなかった”のは事実」


部屋が沈黙する。


レオンはゆっくりと立ち上がり、セシリアの前に進み出た。


「セシリア。君は今、試されている。

敵は、君の“正義”ではなく、“人としての過去”を突いてきた」


「……信じるの?」


「信じるに決まってる」


即答だった。


「君が過去に誰と手を繋ぎ、何を悔やんだかなんてどうでもいい。

大事なのは、君がいま、俺たちの前に立って“真実”を語ってるってことだ」


だが、世間はそうではなかった。


昼過ぎ、セシリアは《貴族会議》への呼び出しを受ける。

王家直属の調査官からは、出廷命令すら仄めかされた。


貴族の間にはこう囁かれていた。


──「彼女は王の血を引く」などというのも、自らの地位を上げるための虚言だったのでは?


──異世界から来た、などという話も嘘では?


──探偵令嬢? いや、王族を貶める危険人物だ。


「まさに“真実を暴く者”が、真実に潰されかけているわね」


皮肉に口元を吊り上げながら、セシリアは自室の鏡を見た。

化粧が剥がれたその頬に、疲れの色が浮かぶ。


(この国は、真実を望んでなどいなかった)


欲しかったのは、“都合の良い正しさ”だけ。


「セシリア様、失礼します──」


扉を開けたのは、女官・リサだった。

その手には、使者から届けられた封書がひとつ。


「……これは?」


「差出人不明です。ですが、中に“銀の鍵”が入っておりました」


セシリアは封筒を開き、同封された小さな紙片を見た。


そこには、こう記されていた。


『北の礼拝堂 地下書庫、第五室。

王太子の“嘘”を知るなら、来たれ。

この鍵でしか開かぬ真実がある』


彼女の瞳が細くなる。


「……招かれてるわね、“次の謎”に」


レオンが静かに問いかける。


「君は、また一人で行くつもりか?」


「ええ。でも今回は――あなたにも同行してほしい」


「……ああ、喜んで」


夜更け。

セシリアとレオンは、誰にも気づかれぬよう王都の北端にある古びた礼拝堂へと潜入した。


石造りの階段を下り、鍵で開いたその部屋には、

無数の紙束と“音声記録魔石”が残されていた。


その中のひとつに、セシリアは手を伸ばす。


そして、魔石が再生されたとき──


『我が王子、レオン殿下。

王太子カイン殿下が、“真王血統”ではない可能性があると示す、第一級記録を報告いたします』


『実子ではない。……あれは、“王妃の子”ではないのです』


セシリアは、目を見開いた。


「……やっぱり、“あの人”が偽りだったのね」


「証明できれば、“王位の正統性”が崩れる」


「そして、わたしが“本当の王の血”を持つと証明されれば……」


レオンが深く頷く。


「……セシリア。君に、覚悟はあるか?」


「ええ。

この国に、“真の継承”を問い直す気があるなら──

わたしは、全ての偽りを暴く覚悟があるわ」


彼女の眼に、迷いはなかった。


その決意が、この国の“最後の扉”をこじ開けることになるとも知らずに。


(つづく)



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