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帝国魔獣災害戦記  作者: 夕餉
迷宮魔核輸送作戦
7/50

襲撃

「総員、迎撃態勢を取れ!」


隊長グレンの鋭い号令が飛ぶと、隊の者たちは即座に動いた。


護衛部隊の騎士たちは前線に立ち、魔導士たちは魔法陣を展開する。


輸送隊の兵士たちは、魔核の護衛と荷馬車の防御に回った。


だが、彼らは理解していた。


——この敵は、ただの魔物とは違う。


「黒獣王バロウ」。


山岳地帯に君臨する魔獣であり、体長は優に十メートルを超える。


漆黒の毛に覆われた獅子のような巨体、その巨爪は鋼すら容易く断ち切る。


そして何よりも厄介なのは、


その知性と狡猾さだった。


普通の魔獣ならば、魔導士の結界や騎士団の陣形で足止めできる。


しかし、バロウは違う。


何度も戦場を経験し、戦術を理解し、獲物をどう狩るべきかを熟知している。


今まさに、その戦闘経験が発揮されようとしていた。




バロウが大地を蹴ると、岩の破片が四方に飛び散る。


その巨体が一瞬にして加速し、輸送隊の前線へと突進してきた。


「来るぞ!」


盾を構えた騎士たちが防御態勢を取る。


しかし、バロウは正面から突っ込んでくるのではなく、急激に軌道を変えた。


右側から回り込み、側面へと襲いかかる。


「クソッ、騎士隊、盾を右へ展開!」


副隊長ヴォルフが叫ぶが、完全に防御態勢を整える時間はなかった。


次の瞬間、バロウの巨爪が薙ぎ払われる。


盾を構えた騎士数名が弾き飛ばされ、何人かはそのまま意識を失った。


「クソッ! くそっ……! なんて怪力だ!」


吹き飛ばされた騎士の一人が呻く。


バロウはそのまま魔核のある荷馬車へと向かおうとする。


「止めろ! 魔導士隊、拘束魔法を展開しろ!」


魔導士たちが詠唱を開始し、地面から魔法の鎖が出現。


バロウの四肢に絡みつき、その動きを封じようとする。


「やったか……?」


しかし——


バロウの瞳が光を帯びた瞬間、


次の瞬間、魔法の鎖が音を立てて粉砕された。


「——ダメだ! 拘束魔法が通じない!」


それもそのはず、バロウの鱗には魔法障壁の特性があり、


中途半端な魔力では効果がない。


バロウはすぐさま次の標的へと狙いを定めた。


——輸送隊の魔導士たちだ。


「しまっ……!」


魔導士たちが防御の魔法を唱える間もなく、バロウの巨爪が振り下ろされる。


その瞬間——。


鋭い閃光が夜の闇を切り裂いた。


「雷撃槍、発射!」


——ドゴォォン!!


雷撃魔法を纏った槍が、バロウの背に突き刺さる。


炸裂する雷撃が、バロウの巨体を包み込んだ。


「ナイスだ、ヴォルフ!」


隊長グレンが叫ぶ。


槍を投擲したのは副隊長ヴォルフ。


彼は戦場での判断力に優れ、機を見て強力な雷撃槍を投擲したのだった。


雷撃による麻痺効果で、バロウはしばし動きを止める。


「今のうちに! 騎士隊、前へ!」


騎士たちが一斉に突撃し、バロウに攻撃を仕掛ける。


魔導士たちは支援魔法を使い、隊全体の防御を固める。


しかし、バロウはまだ倒れていない。


一時的に動きを封じられただけだ。


そして——その瞳が再び獰猛な輝きを帯びた。


「……まずいぞ、こいつ……!」


ヴォルフが気づく。


バロウは完全に彼らを「狩るべき獲物」として認識していた。


今までの攻撃は、あくまでも「試し」だったのだ。


バロウは咆哮を上げ、雷撃を帯びた身体を強引に動かす。


そして——


「第二波が来るぞ!」


黒獣王バロウの本気の反撃が、いま始まろうとしていた。

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