表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝国魔獣災害戦記  作者: 夕餉
魔獣災害
2/50

決断

10年前の惨劇の跡は、今もなお帝都の一部に残されていた。


焼け爛れた大地、崩れた城壁、そして人々の心に刻まれた消えない恐怖。


地竜グラディア。


それはもはや単なる魔獣ではない。


帝国にとっての「災害」、そして「悪夢」そのものだった。


「帝国評議会 緊急会議」


グラディアが去った後、帝国は即座に緊急会議を招集した。


皇帝をはじめ、軍部、学者、技術者――国の未来を左右する者たちが、一堂に会する。


大理石の長い円卓を囲み、重苦しい沈黙が流れた。


そして、口火を切ったのは軍務卿グスタフ・ヴェルナーだった。


「諸君、言うまでもなく、我々は敗北した。」


その一言に、誰もが息をのむ。


「帝国は、巨大魔獣の侵攻を防げなかった。防衛線は突破され、避難民すら守れなかった。我々の武力は、地竜に通じない。」


グスタフの言葉には誰も反論できない。


帝国軍は決して弱くはなかった。


グラディア迎撃のために数万の兵士を動員し、魔術師団を投入し、大砲を撃ち尽くした。


それでも、歯が立たなかったのだ。


「ならば、次の襲来に備え、策を講じなければならん。」


「次の襲来は、10年後」


学者のひとりが立ち上がる。


「地竜グラディアの行動周期は、およそ10年と推測されます。」


「やつは再び現れるというのか?」


「ええ。そして次も、この帝国を横断する可能性が高い。」


誰もが凍りつく。


10年後――帝国はまたしても蹂躙されるのか。


いや、もう二度と同じ悲劇は繰り返さない。


「機械人形計画、始動」


皇帝が重く口を開く。


「軍務卿、ならば我々はどうすればよい?」


グスタフは即答した。


「魔獣には、魔獣を凌駕する兵器を。」


「……何を言う?」


「決戦機動兵器・機械人形の開発を提案する。」


円卓の面々がどよめく。


「魔術と機械を融合させた、巨大戦闘兵器。人が操ることで、対魔獣戦に特化した武力とする。」


「人が……操る?」


「そうだ。」


魔術師団の長老が静かに言った。


「それは、帝国の歴史にない新たな戦力となるだろう。しかし、それは現実的なのか?」


グスタフは力強く頷いた。


「すでに基礎技術は確立しつつある。魔核を動力とし、魔導技術を駆使した機動兵器の研究は進んでいる。これを、より対大型魔獣戦に特化した兵器として開発するのだ。」


魔術と機械の融合。


それは、これまでの帝国軍にはなかった新たな戦略だった。


そして、機械人形計画は、ここに正式に決定された。


「帝国の未来をかけて」


「よろしい。」


皇帝は立ち上がり、厳かな声で告げる。


「ならば帝国の総力を挙げて、その兵器を完成させよ。」


「二度と、あの災厄を許さぬために!」


こうして、帝国は未来をかけた巨大計画――


決戦機動兵器「機械人形」開発計画を始動させたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ