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帝国魔獣災害戦記  作者: 夕餉
支援機開発
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小型機械人形の誕生

小型機械人形の誕生


帝国技術研究院——その深奥にある工房では、今日も魔導炉の熱と魔術回路の輝きが交錯し、幾多の技術者たちの情熱が火花を散らしていた。


だがこの日、その歴史において特別な一歩が刻まれようとしていた。


「魔核装填、完了! 魔導回路、接続開始!」


作業員の声が響く。工房の中央には、他のどの機体よりも小柄な人型機械が鎮座していた。全高わずか四メートル。しかしその鋼の体には、帝国の新たな戦術思想が込められていた。


その名は——「ルークⅠ」。


技術長クロイトは、やや煤けた手袋を外し、機体を見上げながら静かに息をついた。


「ついに、ここまで……」


鋼殻甲虫アイアンビートルの魔核を心臓に持つこの試作機は、帝国初の本格的な小型機械人形であり、兵士たちを護るために設計された防御特化型支援機であった。


決戦兵器としての巨大な機械人形とは違う。これは、前線の兵たちの盾となるための「仲間」だ。


**


——ルークⅠ 試作機仕様——

・全高:約4メートル

・駆動魔核:鋼殻甲虫の魔核

・装甲:強化魔導鋼製

・武装:軽量魔導盾 / 小型魔導槍

・特性:低出力魔導防壁の展開可能


**


「魔核、制御機構に接続。魔力流入、開始します!」


青白い魔力の光が回路を奔り、機体の表面を淡く照らす。動力源である魔獣魔核は高出力こそ持たないが、安定性は抜群。暴走の危険が少なく、長時間稼働に適している。


「——起動!」


技術者の声とともに、機体の核心部が深く唸りを上げる。


ゴウン……!


重厚な駆動音とともに、ルークⅠの胸部に設置された光学装置が蒼く輝いた。ゆっくりと、その四肢が動き出す。機械仕掛けの騎士が、まるで生まれたばかりの子鹿のように慎重に、しかし確実に立ち上がった。


「動いた……!」


工房のあちこちから歓喜の声が漏れる。かつてない試みだった——魔獣魔核を用いた機械人形の開発。それが今、確かな成果として結実したのだ。


だが、浮かれる声の中でただ一人、クロイトだけは冷静だった。


「動いたのはいいが、まだ課題は多い。」


現実を見据える彼の眼差しは、すでに次の段階を見据えていた。


——魔核の出力は低く、戦場での稼働時間は限定的。

——展開可能な魔導防壁は、強大な魔獣の攻撃には不安が残る。

——支援機とはいえ、最低限の機動性がなければ立ち回りは難しい。


だが、それでも。


「……この成果は、大きい。」


クロイトは言った。これまで、機械人形といえば“決戦兵器”としての巨体ばかりが想定されていた。だが今、ルークⅠの誕生によって、**“支援機としての機械人形”**という新たな地平が開かれた。


「さあ、改良を続けるぞ!」


新たな時代の幕開けに、技術者たちは心を燃やす。


この日、帝国の記録にはこう刻まれた。


——これは、帝国機械人形開発の新たな第一歩である、と。

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