帝都到着
「帝都到着」
——長きに渡る戦いの果てに、ついに帝都の門が見えた。
馬蹄の音、荷車の軋む音、傷ついた騎士たちの重い足取り。
輸送隊はぼろぼろになりながらも、大河を渡り終えた後の最後の道を進み続けた。
ヴォルフは疲れた目をこすりながら、前方にそびえ立つ帝都の城壁を見つめる。
頑強な石造りの壁が夕陽を浴びて輝き、帝国の威厳を象徴するかのようだった。
「ようやく、帰ってきたか……」
誰ともなく、そんな言葉が漏れる。
だが、感慨に浸る余裕はなかった。
「負傷者を最優先で医療施設へ! 怪我の重い者はすぐに治療を受けさせろ!」
ヴォルフの指示が飛ぶ。
騎士団の者たちが、負傷者を抱えて帝都の門を潜った。
帝都防衛軍の兵士たちは、彼らの姿に驚愕していた。
戦場を潜り抜けてきた輸送隊は、全員が傷つき、疲れ果てていた。
一部の者は担架で運ばれ、まともに歩けない者もいる。
それでも、彼らは胸を張っていた。
「……魔核は無事だ。」
その言葉を聞き、帝都の役人たちは安堵の表情を浮かべた。
「よくぞ……よくぞここまで……!」
帝国の工学技術を支える技術官たちが、魔核の入った厳重な輸送箱を確認する。
彼らの目には涙すら浮かんでいた。
この魔核こそが、帝国の未来を支える力。
これがなければ機械人形の開発は不可能だった。
そして、これがなければ次に訪れる災厄——地龍グランディの侵攻を防ぐ手段はなかったのだ。
「ヴォルフ殿、エリオット殿……! そして、輸送隊の皆様……!」
技術班の長官が震える声で言う。
「この国の未来を、あなた方が守ってくださいました……!」
ヴォルフは深く息を吐き、背負っていた重責をようやく解き放つように肩を落とした。
「まだだ……これが終わりじゃない。」
ヴォルフは、魔核を運ぶ技術者たちの背を見送りながら、静かに言った。
「戦いは、これからだ。」
——輸送作戦は成功した。
しかし、これはまだ序章に過ぎない。
帝国の命運をかけた、機械人形の開発が始まる。