まあ、当事者だし
痛みの波が引いたら案外寝られるもんなんだ…
深夜の微妙な時間帯に目が覚めた。何故なら腹が減ったから。
夕食の時間も起きること無く寝ていた結果は助けを求めてもどうしようもない自業自得な展開だった。
でもどうせお粥だし。だからといって肉を出されても食べられる気がしない。
スマホでも見るかと思ったがスマホがない。もしかして刺された時にどっか行っちゃったとか?
はぁ、と脇腹に響かない程度に溜息をつき、現在の時間がわからないまま朝を待つことになった。
日付が変わったのかわからないが、刑事にも会うことを思いだし、また溜息をついた。
「こんにちは。○○署のものです。体調はどうですか?」
「こんにちは。どうなんですかね、刺されるとかそういう事に関わらない人生だと思っていたので…とりあえず痛いです」
刑事ってもっと厳ついものだと思ってました。
その一言は心の中だけに留めておいた。
朝食から一時間くらいで刑事はやってきた。
ちなみにBGMで腹がずっと鳴っている。朝食は出た。予想通りのお粥。うん、お粥に量とか求めてはいけない。
腹の音は聞かなかった事にしてくれてるらしく、話しを進めてきた。
よくある事件に関係してる人皆にきいてます、というやつ。
関係も何も被害者だし。加害者の息子だし、俺。
何となく虚しさを感じつつ、雑談を交えつつ形式上の聴取が始まった。
ー お母さんってどんな人? ー
「…男がいないとダメな人ですかね。一応、一番好きな男は俺の父親っぽいんですけど、顔も名前も知らないです。母は誰とも籍入れてないはずです」
ー 未婚だね。今回の事が起きる前に前兆とかあった? ー
「わかんないです。あー、刺されたときにあの人を繋ぎ止めるために産んだとか何とか言ってました」
ー 同じ証言がいくつかある。辛いことを言わせて申し訳ない。お母さんの仕事は水商売? ー
「男にフられたり酒飲むとよく言うんで。気遣ってくれてありがとうございます。水商売っていうか、風俗ですね。あとはその時付き合った男によって変わります。ヒモ男と付き合えばほぼ毎日出勤してたし。逆に羽振り良い人と付き合えば仕事辞めるし。そんな感じなので毎月収入が安定しないので、バイトしてました。一応言っておきますが、一人親家庭の子供が出来るってやつです」
ー バイトは問題ないよ。君のお金に手をつけることは無かった? ー
「さっき言った通り、フられたりすると金を出せとか暴れましたが…。安定した収入じゃないのに、金に関してはあんまりうるさくは無かったです。あー、でも入院費とかその他諸々の金はないかもだなぁ」
ー その辺は追々。お父さんの心当たりはある? ー
「無いです。あんなオバサンのどこが良いのかわからないけど、男がきれたことはないんです。フられた翌日には違う男いましたから。誰が父親でもおかしくないですよ。あの、母ってどうなるんですか?」
ー …殺人未遂で刑務所行きは確定だね ー
「そうですか」
ー こんな事言うのはなんだけど、冷静だね? ー
「なんていうか…よく、あの人があの人がって騒いで最後には繋いでくれないお前は要らないとか言われてたし。否定されまくってたんで。だから俺も保護者として書類にサインかいてくれる人って思わなきゃやってられくて。どんなに離れたくても母がいなければ働くことも難しいし。第一、なんやかんやで俺は母が待つあの人を繋ぐものだから、手放すことは考えてないみたいでしたし。でも今現在がこうなったって事は…」
ー 君の父親と思われる男性は最近、家庭を持ったみたいでね。それが今回の事に繋がったんだろうね ー
「へぇ…」
刑事さんから目をそらし、自分の手元をじっと見る。流石に色々とキツい。刑事さんもそれをわかっているからか、「ちょっと休憩しようか」と言ってくれた。
キツいから休みたいが、このどんよりとした気持ちはそう簡単に晴れることはないだろう。
気持ちを優先すると昼飯の時間が過ぎても再開は不可能だ。なら、食い意地をとってさっさと終わらせたい。
頑張れ食い意地。どんよりする気持ちを食ってくれ。そして昼飯のお粥食おうぜ。
食い意地で気持ちを立て直し、聴取の再開を願い出たのだが、体調や心の心配をされ、中々思うように進まない。それでころか先生がドクターストップを出しそうだ。
「あの!気遣ってくれるのは嬉しいんですが!犯罪者になった母や顔も知らない父親のことでこれ以上時間使いたくないし、考えたくも無いので終わらせたいです!」
ちょっと声が大きかった。傷が痛くて脇腹を押さえる。先生が傷口を診てくれたが問題は無かった。
先生の方はドクターストップでまた後日にしたいみたいだが、俺の言い分を聞き入れてくれた。
不服そうな顔をした先生を見ないように刑事さんからの聴取は再開された。
纏めるの大変ですね。以前の文はもっと散らかっていたんだろうな……。
誤字脱字あったらすいません。