16歳の冬
全削除からのスタートです。よろしければお付き合いください。
「きゃーーーー!」
「おい、救急車!あと、警察!」
「ヤバいからあんま近づくなって」
居酒屋が多い通りの裏道で、冬にしては薄着の女が項垂れている。
女の手には血がついた包丁、そして近くに少年が倒れていた。
偶然、近くを通りかかった女性が悲鳴を上げたことで、あっという間に人だかりが出来た。
人だかりの真ん中で、血まみれで倒れている少年は薄く開いた目で、爪を噛みながらブツブツと言っている女を見た。
「アンタが悪い……あの人を繋ぎ止められないなんて……産むんじゃ無かった……アンタが悪いのよ、私は、私は悪くない……!」
同じ事をずっと言い続けている女から目をそらし、目を閉じた。
刺された脇腹の辺りが温かい……いや、温かいを通り越して熱い気もする。
脇腹以外は凍えるほど寒いのに……
痛いのか熱いのかもわからない。
俺、死ぬのかな……
俺、死ななきゃいけないのかな……
俺の事、嫌いだった?ウザかった?殺すほどに?
俺が死んだら嬉しい?喜んでくれる?
ねぇ、母さん……
救急車のサイレン音が遠くで聞こえ始めたが、ここでブツリと意識が途切れた。
16歳の冬、丹波ショウは母に刺されて死んだ。
「奥様、お嬢様は……」
「わかってるわ。顔を見るくらいいいじゃない」
《誰かが俺の横で話してる。女性が2人?
奥様?お嬢様?誰の話をしてるんだ?
……てか体動かねえし。目も開かねえ。》
「少し席を外してちょうだい」
「旦那様に禁じられています」
「何もしないわ!いいから出てって!早く!」
奥様と呼ばれた人が急にヒステリックに騒いだからか 「…5分したら戻って参ります」 と言って出て行ってしまった。
《うわ、何が何だかわかんねぇけど、もしかしてあの世?だとしたら居心地悪過ぎるんだけど。》
何とも言えない気分になっていたら、衣擦れの音とともにふわっと良い香りがした。
奥様とやらが近づいてきてるのだろう。段々と香りが強くなってきた。
《良い香りだと思ったけど、結構キツいな……しかも何か近くない?》
耳元まで顔を近づけてきた奥様はささやいた。
「ショシャンナ。良い子で寝てるのよ、ずっとずっと永遠に」
ショシャンナと呼ばれた子も奥様もどんな人かわからないが、きっとこの2人は親子だ。
そして、奥様はショシャンナに寝てるように言った。死という言葉を使って。
心臓が何かに締め付けられたみたいに苦しくなった。
体が動くのなら、過呼吸を起こしていたのかもしれない。泣き叫んだかも。
そんなお嬢様の気持ちなど知らずに、奥様とやらは「うふふ」と小さく笑い、離れていった。
バタンと扉が閉まる音とともに、ブツリとまた意識が途切れた。
新しく書き直し始めました。更新頻度は遅くはなりますが、ゆっくりと完成させたいと思っております。