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安楽椅子ニート  作者: お赤飯
59/141

短編

ウメ「それで杏子ちゃん、何とかならないかな?」

瀬能「簡単ですよ、太ももあたりを触らせてあげれば、一発ですよ?」

ウメ「あのね?そういう事じゃないのよ。」

瀬能「男子高校生なんて、常に女子の事しか考えていないんですから、太ももを触らせてあげれば、直ぐに好きになってくれますよ?」

ウメ「だぁかぁらぁ。杏子ちゃん?そういう、体を触らせるとか、直接的な事じゃなくて。しかも、太もも?オヤジ?変態じゃん。お尻とかおっぱいならまだ分かるけど、太もも?フェチじゃん?完全な確信犯じゃん!」

瀬能「ウメさんはぁ、その、なんとかっていう学校の男子と、交際したいんでしょう?だったら、体を触らせた方が早いと思いまして。」

ウメ「あのねぇ。あたしは体を触らせるとか、軽い女じゃないの?・・・もっと、こう、ちゃんと、お付き合いしたわけ。」

瀬能「・・・・。ウメさん。そんな事、言っていると他の女子に、取られちゃいますよ?あのぉ。男子は積極的な女子が好きですから。」

ウメ「はあああ?ノリが良くて、サバサバしていて、呼べばすぐ来るような女が良い、とか、言っているんでしょ?バッカじゃないの?そんな都合の良い女がいる訳ないじゃない?そういうのは男の妄想です。そんな女、存在しません。」

瀬能「・・・いや、結構、いると思いますよ。ウメさんが見ていないだけで。・・・ウメさんが狙っている男子も、既に、そういう女にヤられちゃってますよ?」

ウメ「ちょちょちょちょちょっと。杏子ちゃん。ミソラ君に限って、そんな事はありません。ミソラ君は真面目です。簡単に、体を触らせる様な売女に落ちる人ではありません。」

瀬能「若いのによく売女なんて言葉、知ってますね?」

ウメ「そんな事はどうでもいいのよ、杏子ちゃん。今度のバレンタインデーで、ミソラ君にチョコレートを渡して、あたしの気持ちを伝える作戦なんだから、もう少し、協力してよ!」

瀬能「私は構いませんけど。暇だから。でも、いくらパン工場アルバイト仲間とはいえ、引き籠もり同然の私に、よく相談しに来ましたね。」

ウメ「あの時は、廃棄になったパンを山ほど持って帰って、工場の人に怒られたね。」

瀬能「怒られましたね。限度を知らないのか、と。」

ウメ「あたし、あれ、宝の山だと思うのよね?天国と思ったよ。」

瀬能「人生でシフォンケーキにダイブできるなんて、そんな経験もう二度と出来ないと思います。」

ウメ「・・・幸せだったねぇ。・・・じゃ、ないわ!違うわ!バレンタインデーの話よ!」

瀬能「ああ、そっち。」

ウメ「今年はミソラ君に、あたしの想いを伝えて、ハッピーで楽しい学生生活を送るのよ!」

瀬能「ウメさん。ハッピーで楽しいとか、学力指数が分かっちゃいますよ?」

ウメ「ミソラ君と出会って、あたしの人生は変わったわ。だから、この想いを伝えたいの!」

瀬能「どんな風に変わったか知りませんけど、その、なんとか君?」

ウメ「ミソラ君」

瀬能「ミソラ君。おモテになるんですか?」

ウメ「ううぅうん。そうねぇ。・・・隠れたヒット商品って感じ?」

瀬能「・・・隠れている時点で、ヒットしていない気がしますが。」

ウメ「クラスの大黒柱のような存在で、目立たないんだけど、いざって時に、すっごく頑張って、頼りにされていないんだけど、でも、ミソラ君がいたから、何でも上手くいっているの。ミソラ君がいないとダメなの。全部ダメなの。でも、みんな、その事に気づいていないの。ミソラ君が本当は大黒柱で、無かったら、倒れちゃうの。もっと、みんな、ミソラ君に感謝するべきなのよ!もっと注目すべきなのよ!ミソラ君がいなかったら、成り立たないんだから!」

瀬能「・・・はぁ。・・・それは、ウメさんが贔屓目に見ているからであって、実は、そんなに活躍していないのでは?」

ウメ「そんな事ないわ!だって、ミソラ君はいつもクラスの中心にいるもの!中心の輪にいるのはミソラ君だから!・・・物理的に。」

瀬能「・・・物理的に」

ウメ「みんな、ミソラ君の魅力が分からないのよ!・・・分かられちゃ困るけど。独り占めできないし。」

瀬能「・・・恋は盲目と言いますから。」

ウメ「ミソラ君はカッコイイし、マジメだし、頭もいいし、勉強もできるし、スポーツも凄いし、優良物件なの。」

瀬能「仮にそんな優良物件があったら誰も放っておかないでしょ?・・・事故物件の臭いがプンプンしますけど。ほら、誰かがお亡くなりになった部屋でも、次に一日でも誰かが住めば、表向きは事故物件ではなくなるって言いますし。」

ウメ「じゃあ、なに?ミソラ君に、前の彼女がいて、その一日で別れちゃった彼女が、過去のとんでもない事を帳消しにしたって言いたいの?杏子ちゃんは!」

瀬能「彼女がいる男子の方がモテるって言いますから。・・・その、なんとか君は」

ウメ「ミソラ君。ミソラ君、いい加減、覚えてよ!」

瀬能「そのミドラ君は前に彼女がいたんですか?」

ウメ「いや。ええっと、聞いた事ない。・・・まぁ。ちゃんと喋った事もないけどね。」

瀬能「ブホォ!」

ウメ「汚いなぁ、杏子ちゃん!」

瀬能「ゴホッ、ゲホ、・・・はぁ?今、なんと?・・・ろくに話した事がない男子の事が好きなのですか?」

ウメ「うん?・・・ま、そ、だね。恋する乙女は素敵なのよ?」

瀬能「別に話した事がなくても、見た目だけで好きになる事はあると思いますが、えええええええええええええ?」

ウメ「えええ?って何よ?」

瀬能「今までの言い方だと、結構、親しい仲だとばかり思っていましたが。今までの話は妄想ですか?」

ウメ「妄想じゃないわよ、希望よ!」

瀬能「同じです!」

ウメ「ちょっと待って!妄想と希望は違うわ。妄想っていうのは、もう、淫らな事だけど、希望は、将来の展望よ!あたしとミソラ君の未来は、明るいの!たぶん、きっと、おそらく。」

瀬能「たぶん、きっと、おそらく、ダメだと思いますが。」

ウメ「そんな事ない!だから、バレンタインデー大作戦を決行するわけじゃない!」

瀬能「決行する前提なんですね?」

ウメ「あたし達は、このバレンタインデーをきっかけに、熱烈に愛し合い、共に、学業に励み、有名大学へ進学。あたしは総合商社へ就職するも、彼は地元に帰って安定した公務員になるの。二人は別れ離れ。遠距離恋愛が長く続くはずもなく、あたしは歳の離れた将来、出世するであろう先輩に言い寄られ、ミソラ君という人がいるのを知りながら、体を許してしまう事に・・・。ミソラ君は、病気で父親と母親を亡くし、失意のどん底。二人の運命は、離れ離れになってしまうのか?」

瀬能「・・・しまうんじゃないでしょうか?」

ウメ「杏子ちゃん。止めなさいよ。」

瀬能「つっこむのも面倒臭い時もあるので。あの、ウメさん。バレンタインデーで浮かれている所、申し訳ないのですが、バレンタインデーで交際するような人達は、もともと交際しているようなもので、既成事実がある人だけです。いわゆる答え合わせっていう奴です。」

ウメ「は?」

瀬能「ですから、普段から、言葉にしないだけで交際していて、何なら肉体関係もあるような人達です。バレンタインデーでわざわざ交際宣言するんですから、もう最初から決まっているんですよ。出来レースです。」

ウメ「出来レース」

瀬能「古今東西、バレンタインデーは出来レースですから、初対面の人間がバレンタインデーで交際を迫っても、上手くいくはずがないんです。・・・ウメさん。諦めて下さい。もう、始まる前から負けているんです。」

ウメ「はあああああああああああああああああああああああ?・・・そんなの!そんなの!あたしが認める訳ぇぇぇぇぇぇぇええ、ないでしょうぉおおおおがあああああああああ!」

瀬能「こればっかりは事実ですから。」

ウメ「そんな事はございません。あたしのミソラ君に限ってそんな事はありません。あたしの想いに応えてくれるはずです。」

瀬能「ええ?・・・いきなり、知らない女に、好きです、とか言われたら気持ち悪いと思いますけど。しかも、得体の知れない、食料を持ってくるんでしょ?絶対、衛生上、まずいものに決まっているじゃないですか?ゴミ箱ポイ~ですよ。」

ウメ「得体の知れないもの、言うな!チョコレートよ、チョコレート!・・・ミソラ君の為に愛を込めて作るの!」

瀬能「それが怖いんですって。愛の他に、変な物、入れそうじゃないですか、ウメさんの場合。」

ウメ「入れないわよ!愛だけよ、・・・」

瀬能「入れたそうじゃないですか。」

ウメ「いや。・・・入れたいけど、入れたら、食品衛生上、危ないものになってしまうから、入れないわ。」

瀬能「ウメさん。チョコレート作るとか言って、チョコレート作るんですか?どのレベルで?・・・あの、たぶん、市販のチョコレートを溶かして、また、別の型に入れて固めるのを想像していると思いますが、あれ、間違いなく失敗しますからね。」

ウメ「え?なんで?」

瀬能「市販のチョコレートは、チョコレートを固める為に凝固剤を入れたり、味を調えるのに別の甘味料を入れたり、他にも、油分を加えたり防腐剤入れたり色々、調整しているんですよ。だからあの味が出せて、長期間の保存が利くんです。そんなものを溶かして固めても、専門の機械じゃないから、化合物が途中で凝固してしまって、見た目も味も悪くなるんです。市販品は市販品のまま食べるから、美味しいんです。」

ウメ「じゃあ、どうすればいいのよおおおお!」

瀬能「カカオを買ってきて、マメでもパウダーでもいいですけど、そこから始めて、砂糖等の甘味成分を加えて作るしか方法がないと思います。普段からお菓子を作っている人間ではない限り、無理だと思います。お菓子は化学ですから。いわゆるアルケミストです。鋼のアルケミスト!」

ウメ「そんな事、出来る訳ないでしょおおおお!どこにそんなお金があるの!機材もないのにいいいい!等価交換するもんがないいいいい!」

瀬能「ウメさん。諦めましょう。諦めるのが嫌なら、UFOチョコでも買って、あげればいいじゃないですか?」

ウメ「誰がバレンタインデーで、30円のチョコをあげるのよおおおお!駄菓子ぃぃいいいい!」

瀬能「UFOチョコ、美味しいじゃないですか。チロルチョコもセコイヤチョコレートも。」

ウメ「みぃ~んな駄菓子ぃいいいいいい!」

瀬能「だから最初から言っているじゃないですか。チョコレートなんか買って渡すよりも、太もも、触らせる方が上手くいくって。」

ウメ「上手くいくかも知れないけど、そんな手段は嫌なのぉおおお!あたし、変態とか痴女とか言われるじゃない!」

瀬能「どうせ付き合いだしたら、触らせるんでしょ?・・・最初から触らせてあげればいいじゃないですか?彼、喜びますよ?」

ウメ「知らない女の太もも触って喜ぶような変態とは付き合いたくないいいいいいいいいい!」

瀬能「あ、それはごもっとも。あははははははははははははははは。一本取られました。」

ウメ「笑っている場合じゃないの!・・・杏子ちゃん、真剣に考えてよ!」

瀬能「チョコレートに拘るのをやめて、日用品をプレゼントするのはいかがです?ハンカチとか?」

ウメ「高校生がハンカチなんか持っている訳ないじゃない。」

瀬能「偏見です。偏見。」

ウメ「ハンカチだったら、ハンドタオルとか、汗をいっぱい吸ってくれるものの方がいいんじゃないかしら?」

瀬能「この時期ですからマフラーとか手袋とか、いいんじゃないですか?防水、防寒、発熱、透湿」

ウメ「あのねぇ杏子ちゃん!高校生が求めている手袋は、極寒でバイク乗るとかそういう奴じゃないから!むしろ、手ぇ繋ぎたいの!そんなゴツイ手袋していたら手ぇ繋げないじゃない!・・・ミソラ君の手ぇ繋ぎたいのぉおおおお!」

瀬能「ウメさん。わがままですね。もう何から手をつけていいか。当たり障りのない所でアマゾンギフト券が一番、喜ばれるんじゃないですか?」

ウメ「そうね。好きな物、買えるしね!ってオイィィィイイイイ!誰がバレンタインデーでアマギフもらって喜ぶ奴がいるのよおおおおおおおお!実用的だけれどもおおおおおおおおおお!あたしも貰って嬉しいけどももおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

瀬能「じゃあ、スッポンとかマカとか、ニンニク黒酢とか、体に良さそうな物はどうでしょう?」

ウメ「夜のお供ぉおおおおおおおおおおお!夜、元気になる奴ばっかりじゃないいい!それ、もう、誘っているのと同じじゃない!何が元気になってよ?じゃねぇえよ、もう元気だよおおおおおおおおお!何が元気なんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

瀬能「そこで、太ももを触らせれば一発OKだと思うんですけど?」

ウメ「体、目当てと思われちゃうでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!体、目当てだけれどもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

瀬能「今の勢いで、その、なんとか君にウメさんが好きな気持ちを、録音して吹き込んで、校内放送で流すとか、どうですか?」

ウメ「ぜえぇぇぇぇぇぇええっっっつっつたああああああああいいいいいいいいいいいいいいいいいい、やああああああああああああああだあぁぁぁっぁあああああああああああああああああああああ!」

瀬能「そんなに、ケトラ君の事が好きなんだから、もう、想いは伝わっているんじゃないですか?」

ウメ「そんな訳ぇぇぇええええ、あるかぁっぁぁぁぁあああああああああああああ!

もう、いいよ、杏子ちゃん!自分で考えるからぁあああああ!」

瀬能「ああ、待って。ウメさん。・・・・行っちゃった。

学生時代の恋愛なんて、振り返って思うと、顔がいいとか、頭がいいとか、運動ができるとか、そんなの関係なくて、積極的な人がモテるの一言に尽きると思います。男女分け隔てなく話かけて友達の多い人は、やっぱり、好感度が高かったと思いますし、交際に発展している事が多かったと記憶しています。顔だけ良くてもダメ、性格が良くてもダメ。交際を続けていくと、人の良い面も見られますが嫌な面も見なくてはならなくなりますし、反対に、自分の嫌な所を見られてしまいます。いくら好き同士でも、破局破談することなんてザラなんです。まるで一生に一度の恋みたいに捉えがちですが、もう少し、気楽に考えた方が、上手く行くと私は思います。

私ですか?私は学生時代、高嶺の花でしたから。孤高の花。・・・未だにですけどね。あははははははははははははははははははははは。」


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