安楽椅子ニート
「おう戻ったぞ。」
「お疲れ様です。」
「なんかさあ俺、臭くない?大丈夫か?」
「いえ、におわないですけど。」
「そうか、いっぱいファブリーズしたからなぁ。ま、大丈夫か。
臭かったら言ってくれ。瀬能さんには参っちゃうよ、ほんと。」
「今日は瀬能さんのお宅だったんですか?」
「お前さ、ちゃんと先輩の仕事先、見ておけよな、そういう所だぞ、ほんと。」
「あ、すみません。」
「まいっちゃうよ、ほんと。久しぶりに行ったら、お前じゃなくてがっかりされちゃったよ。
今日は~石峰さんじゃないんですか~?だってよ、ほんと。気に入れられてるんじゃないの、お前?」
「はははは。そうなんですか。」
「ひっさしぶりに行ったけど、半年ぶり位かなぁ行ったの。相変わらずのゴミ屋敷でさ、ゴミ捨てるの手伝っちゃったよ。」
「ああ、それで!臭いがついちゃったんですか?」
「まあ瀬能さんも変わってるよな、別段、ゴミに執着してる訳でもないのに捨てないんだよな。不思議だよな~。」
「彼女の場合、面倒くさいが先に行っている気がしますけどね。」
「たぶん、そうだろうな。
でも、あれだろ?瀬能さん。
実家が大財閥なんだろ?いいよな~。」
「そうなんですか?」
「ああ、言ってたぞ。なんか月に百万くらい生活費が送られてくるんだってよ。うらやましぃよ、上級国民だよ、働かなくていいんだぜ?
まあ、実際、瀬能さん、働いてないけどな!な!」
「・・・知らないですよ、興味もないですし。」
「ま、そういうなよ。あれで瀬能さんに難がなければ考えちゃうんだけどなぁ。」
「・・・難ばっかりじゃないですか!ゴミに囲まれて生活なんか出来ませんよ、普通。見た目とかも気にしてないし。キリがないですよ・・・」
「そう、それでさ、今日行ったらさ、目がギンギンだったんだよ。玄関あけたら目がギンギンでさ、思わず開けたドアを閉めちゃったね。
そしたらキレられちゃって!」
「・・・それは、木崎さんが悪いと思いますけど。」
「そうなんだけどさ。俺だって驚くよ。目がギンギンの女が出てくれば。それで瀬能さんに聞いたんだよ、なんで目がギンギンなの?って。」
「はぁ。」
「そしたらさ、昨日の夜は寝てないって言うんだよ。でさぁ、興味ないけど、ひと晩中何してたの?って聞いたら、
ひと晩中イタしてたんだってよ!
・・・すげぇよなぁ。お前言える?そんなこと?」
「イタしてたって・・・。まさか、あのゴミ屋敷に男を上げてヤってたんですか?」
「バカ、一人に決まってるだろ!
ひと晩中、イタしてて一息ついたところに丁度、俺が行った訳。・・・もう少し早い時間に行ってたら鉢合わせしてたところだぜ!」
「・・・ま、そうですよね。」
「瀬能さんとの付き合いも長いからそんなに、そんなには驚かないけど、そこいらの女に言われたら引いちゃうよな。
綺麗な女が、イタしてたとか言われたら、俺、引いちゃうよ~!」
「はぁ。・・・あのう、木崎さんは女に幻想を持ちすぎなんじゃないですか?女子高なんてそんなもんらしいですよ。」
「なんだよ、それ、どこ情報だよ?」
「共学と違って女子高だと女ばっかだから、そういう話は明け透けらしいですよ。」
「なんだよそれ、女子高、行ってみてーなー!天国じゃん!」
「・・・あんまり職場でそういう事を言わない方がいいですよ。」
「でもよ、瀬能さんは違うだろ?ありゃ性格だろ?たぶん。
それで、聞いてもないのに『弱気リーマン攻め』とか勝手にオカズの話をしてくる訳よ。」
「・・・なんですか?唐突に。」
「だから『弱気リーマン攻め』。
昨日の夜はそれをオカズに朝までイタしてたらしい。」
「・・・えっと、あの、木崎さんは、うちの管轄とは言え、ゴミ屋敷の、女の、オナニーの話を聞いてきたんですか?」
「しょうがねぇじゃん。生存確認が仕事なんだからさ。無視する訳にもいかねぇだろ?俺が無視しちゃったら次に訪問する奴、瀬能さんに何されるか分からねぇぜ?
ぶっ飛んでるからな、瀬能さん。」
「・・・分かる気がします。なんか、ちょっと、呪われそうで怖いですもん。」
「だろう?
一発目のオカズが『弱気リーマン攻め×強気ハングレ店長受け』だそうだ。んで二発目が『弱気リーマン攻め×強気売り元女子高生受け』で、次が・・・」
「ちょちょちょちょちょちょ、ちょっと待って下さい!」
「なんだよ?」
「あの、よく分からない言葉が聞こえてきて、えっ、言葉なんですか?歌かなんかの歌詞なんですか?そもそも僕は聞きたくないですよ?そんな話・・・」
「まあ待てよ。待てよ。
俺も瀬能さんに言われた時は何言ってんだコイツ?って思った訳。でも、彼女、丁寧に俺に説明してくれるんだよぉ。あのギンギンの目で。怖かったけど。
要するに、布教?
たぶん、あの人、根は真面目なんだろうなぁ。言ってる事とやってる事は相当アウトだけど、法的にも。
知らない国の言葉を習得するのと同じで、ひとつひとつ教えてもらえると、言っている意味は理解できるようになる訳よ。
俺もさ、まったく知らない話だから、ついついメモ取りながら聞いちゃったのよ!
いやぁ、俺だったら自分の性癖をべらべら話せないけどね。瀬能さんはやっぱ凄げぇわ!」
「・・・はぁ。」
「お前、分かる?『弱気リーマン攻め×強気ハングレ店長受け』って。」
「・・・真面目に聞かれても困るんですけど、まったく何言ってるか分かりません。」
「カップリングって言うんだけど、」
「カ、カップリング?」
「カップルだよ、カップル。アベックだよ、アベック?アベックって言わない?
一人が弱気なサラリーマン。もう一人が見た目も性格もコワモテハングレな店長。
弱気なサラリーマンが攻めて、強気なハングレの店長が受ける。攻めるっていうのは入れる方な。受けるっていうのは入れられる方な。ここ大事らしいぞ、瀬能さん曰く。
ちなみに、リーマンとはサラリーマンの事で、ハングレっていうのは、半分グレー、半分反社会的勢力の人。まあ、お祭りの的屋の人なんかが想像しやすい。」
「・・・入れる?入れられる?」
「男同士のカップルだよ。オッサンズラブとか知らない?見たことない?」
「ああ。ああ。はい。ゲイとか、そういう人の趣味みたいな。」
「まあ、詳しくは違うんだけどな。俺も知らなかったんだけど、かなり性的嗜好は細分化されていて、本人達もよく分からない位、多様化されているらしい。勉強になるよな~」
「ああ。ええ。うーん。確かに。多様性の時代ですからね。国会でもやってましたけど。」
「俺は知らなかったんだけど、男と男がイタしているのを尊ぶとか尊いと言うらしい。その尊ぶのを妄想しながら一晩中、イタしてたらしい。」
「・・・まあ、人の趣味はそれぞれだし、何とも言えませんけど。」
「でな、『弱気リーマン攻め×強気売り元女子高生受け』っていうのは、まあまあ普通の援助交際モノらしいだが、弱気のサラリーマンが、援助交際の元締めの女子高校生とヤるっていうシチュエーションらしい。」
「・・・なんかディティールが細かいですね?」
「そこら辺が、ニート歴十年以上、瀬能さんの凄い所だよな。驚いちゃよ。妄想のディティールが細かすぎて。」
「あと、その、所々に出てくる、その弱気リーマンってなんなんです?」
「そうそうそう。
そこが瀬能さんの妄想一人プレイの一丁目一番地!
弱気リーマン攻めっていうのが、妄想のキモらしい。
なんでも、その弱気リーマンが今回の主人公で、そのリーマンには家庭があって、その強気ハングレ店長と不倫している、という設定だ。」
「・・・なんかもうコメントしづらいんですが。」
「俺もよく分からんが、男同士でも不倫なんだそうだ。不貞は不貞だからな。
そもそも弱気なサラリーマンがどうして、ハングレと知り合ったかと言えば、パチンコだ。店長というのもパチンコ屋の店長だ。
サラリーマンはギャンブル依存症で、サラ金、今でいう消費者金融で金を借りてまで、通っていたらしい。
ま、昼間からパチンコ打ってる奴は、だいたいそんな感じなんじゃないの?
ちょっと本筋からズレるが、店側の人間は、ギャンブル依存の人間はすぐ分かるらしい。目が違うらしいぞ、目が。
パチンコ屋の店長は、そういうおかしい人間を見つけては、接触し、まあ、自分の言いなりにさせてたんだ。
簡単な話、金を稼げるとか、金を貸すとか、金をちらつかせればそういう人間は簡単に振り向くからな。
まてまてまて。
俺が言ったんじゃない、瀬能さんが言ってたんだ。
借金で首がまわらないサラリーマンを金で釣って、ヤっちゃう訳よ。それが一番の目的だからな。
最初は嫌がっていたサラリーマンも金のチカラには叶わない。一度、掘れば二度三度掘るのも一緒。」
「・・・掘るって嫌な表現だなぁ。
えっ、あのちょっと待って下さい!サラリーマンがヤラれちゃうんじゃないんですか?普通、弱みを握られている方がヤラれるんじゃないんですか?」
「お前さぁ、最初に言っただろ?よく聞いておけよ。ヤるのがリーマンで、ヤられちゃうのがハングレ店長!」
「・・・よく分からないんですが。」
「そこが萌え要素なんだよ。
弱みを握って言うことを聞かせるのがハングレの店長!サラリーマンの弱みを握ってヤるだけじゃぁ普通のゲイだろ?な~にも面白くない。そうだろ?
ちがうんだよ、天才は。
サラリーマンの弱みを握って、俺のケツを掘れ!と命令するわけよ!
凄くない?瀬能さん、天才じゃない?」
「・・・な、なんで自分のお尻を掘らせるんですかね?意味がまるで分かりませんが。イチミリも分かりたくはないですが。」
「バカ!それがハングレ店長の隠された性癖なんだよ!
ヤられたいの、店長は!男をヤるんじゃなくて、男にヤられたいの!
あのね、ここ、難しいんでメモ見るけど、あのね、ハングレが自分の欲望で男を犯してもそれは普通の事なの。だってパワーバランス考えてみてみ?
普通にパワーバランスが強い方が弱い方をヤるのは当たり前でしょ?でもハングレ店長には、犯されたい欲求があって、
でも、パワーバランスが上だから犯してもらえないの。
つらいよね?犯してもらいたいのに、犯してもらえないなんて。理不尽だろ?
だから、弱みに付け込んで、犯してもらえるように働きかけるんだよ!
泣いて馬ショクを斬るって感じだよなぁ?」
「・・・いや、まったく違うと思いますが。」
「嫌々やってたサラリーマンも何度もヤるうちに人間って不思議なもんで抵抗感がなくなってくるのな。
ここからが面白いところで、」
「面白くないですけど。」
「だんだんと立場が逆転していくのよ、サラリーマンとハングレ店長の関係が。
自分が立場が上で弱みを握って、コントロールしていたと思っていたサラリーマンに、ハングレ店長がだんだんとのめり込んで行くわけ。
もう、そのサラリーマンがいないと生きていけない体になってしまったんだ。サラリーマンというより、イチモツの方かも知れんが。
当初、強気で命令していたハングレ店長も、次第にサラリーマンの言いなりに。頭では分かっちゃいるが、体が抵抗できないんだ、これも依存って奴だな。
怖いのは、一つサラリーマンにも性癖があったことだ。」
「・・・もう何も怖くないですけど。」
「サラリーマンの性癖は、相手に白の靴下を履かせること。あるだろ?白のソックス。小学生の時、履かされてた、アレだよ、アレ。
サラリーマンは相手が、白のソックスを履いてないと興奮しないんだ。
相手が男だろうと女だろうと、白のソックスさえ履いていれば興奮して勃起するんだよ!怖いだろ?
そのハングレ店長も最初はとまどった訳よ。
だって、そうだろ?自分の欲望を満たす為には、自分がヤるんじゃなくて、相手にヤられないといけない。ここ二重苦だよな。三重苦かもな。
でも、一般的に考えてみろ?男に興味ない男が、男相手に起つか?起たないよ。」
「・・・まぁ。そうですよね。普通に考えて。」
「だろ?ただ、そのサラリーマンだって金が欲しい。金さえもらえれば何でもいいんだ、死ぬ訳じゃない。ヤれば金がもらえる。でも、起たない。素人だから。
ただし、よくよく思い返してみれば、奥さんにいつも白いソックスを履かせてヤっていた事を思い出したんだ。
それでハングレ店長に、白いソックスを履かせたところ、まぁ、ハングレ店長もヤられたい一心だから、疑問に思ってもそこは譲歩するわな。
サラリーマンのムスコが起っちゃったんだよ。本人も店長も驚いたね。
でも、そこでサラリーマンは自分の性癖を認識することになるんだ。
俺は、奥さんに、女に欲情していた訳じゃない!白いソックスに欲情していただけなんだ、白いソックスに欲情する変態なんだと。」
「・・・なんか、難しい、哲学みたいですね。」
「だがな、二人の愛は長続きしないんだ、ついには一線を越えてしまうんだ。」
「えっ、あの、これ、愛だったんですか?欲望にまみれてるだけの気がしますが。」
「どうしてギャンブル依存症の男がパチンコ屋に入り浸ると思う?」
「・・・何かで聞いた事がありますが、パチンコが一番、儲かるからと。」
「まあ半分正解だな。現金だよ。現金。お前、分かるか?パチンコは即現金が手に入る。サラリーマンはサラ金から金を借りてるから現金が必要だった。
今時、現金があるのは銀行とパチンコ屋だけだ。銀行を襲うリスクとパチンコするリスクどっち取る?そりゃパチンコだろ?実際はチンコだけど。」
「・・・きっといつかは言いたいんだろうなとは思っていましたけど。」
「サラリーマンはここに現金があるのは承知の上だ。徐々にハングレ店長に多額の金をせびるようになる。サラリーマンの目的は金だからな。
でも、いくらハングレとは言え、店長だって出せる金額に限度がある。
それで、ついに手を出しちゃいけない金に手を出しちゃったんだ。サラリーマンとヤる為に。
脅してた方が、脅される様になったら身の破滅だよな。上部組織に収める上納金が少なくなっていることを指摘され、命も危ない所まで追い込まれたそうだが、」
「・・・そうだが?」
「愛の為に、サラリーマンの事はしゃべらなかった、らしい。
愛って尊いな。チンコって凄いな。俺は感動しちゃったよ。」
「・・・・。」
「ここから第二幕だよ。」
「第二幕?」
「『弱気リーマン攻め×強気売り元女子高生受け』だ。
さっきの話のサラリーマンは、援助交際をなりわいとする女子高校生とイタすわけだが、その前に。」
「・・・なりわい?・・・その前に?」
「途中で話の腰を折らないように予め説明しておくと、売りっていうのは援助交際を指す言葉だ。援助交際自体、公では認めていないんだが、
援助交際って言葉を濁しているけれども、ぶっちゃけ売春な訳よ。」
「・・・どっちでもいいですよ。」
「よかないよ~お前。そういう所だよ、ほんと。
お前さ、結婚してるじゃん?子供が援助交際してました~とか言って、NPO法人みたいなさ、よく分からないけど何かを支援している団体と交際していると思ったら売春だったよ~って事になったら、親としてどう思う?俺ぇは勘当しちゃうね。」
「・・・うちの子供に限ってそんなことは・・・」
「よく聞くセリフだよ、それ。」
「でな、元っていうのは元締めの略。売春の元締めをしている女子高校生とヤっちゃうって話なんだけど。
瀬能さんに聞いたの、俺。
そういう売春組織の元締めってそれこそハングレとか反社の人なんじゃないの?って。そしたら、今は女子高校生の中にピラミッドがあって
お前、ピラミッドって言ってもギザのピラミッドじゃないよ?ツタンカーメンじゃないよ、ヒエラルキー、カーストのことだよ?わかる?」
「・・・はい。分かってました。」
「高校生に権力階層があって、一軍、二軍、三軍とか呼ばれている訳。一軍から二軍に落ちて二子多摩川の河川敷で練習してるのと訳が違うぜ?」
「ちょいちょい話を折ってるのは木崎さんでよ?」
「めんご、めんご、めんごじゅうご(十五)。
女子高校生の一軍って奴らは頭も良くて見た目も良くて成績も良くて、親からも学校からも信頼されている絶大なチカラを持っているんだけども、一旦、裏に回れば売春を斡旋する奴で、しかもだよ、一軍の奴は、自分達は売春しないで、二軍、三軍の女を使って売春させちゃうんだ。自分の手は汚さないで、汚れ仕事は他の奴にやらせるっていう、俺は一番、嫌いなタイプだね。」
「そういう話、聞きますよ。ニュースで見ますもん。」
「それでだな、話を戻すと、なんで男とヤっちゃうような弱気なサラリーマンが売春組織と接点を持つか、分かるか?」
「・・・いいえ、まったく。金ですか?」
「良い所、押さえてるねぇ!
さっきも言ったように、このサラリーマンはギャンブル依存症でサラ金に借金までして常に金に困っているような奴なんだ。」
「・・・ええ、はい。」
「こいつは金がないから売春したくても出来ないんだよ。元締めの女子高生はバカじゃないから金のない奴は相手にしない。だから売春目的で接点があった訳じゃないんだ。
では、何か?元締めの女子高生は、サラリーマンの持っている情報が欲しかったんだ。」
「・・・情報?」
「裏設定で、実はサラリーマンは普通のサラリーマンじゃなくて、その~援助交際の取り締まり情報を持っている奴で」
「えっ?公務員ですか?」
「ま、そうなるよな。取り締まりの情報を握っている一般人なんていないから。企業に勤めていたって行政に勤めていたって給料もらってりゃサラリーマンだからな。
そんなんで、自分の持っている情報を売春している女子高生に売っていた訳だ。」
「・・・アウトですよ、アウト!警察関係者だったら懲戒ですよ!」
「ははははははっははは。お前さ、瀬能さんの妄想って言ってるだろ?
サラリーマンにしてみたら金が入る、女子高生にしたら円滑に援助交際が出来る、お互いウィンウィンな関係な訳よ。
ただし。ただしだ、最初はお互い、クールな関係だったんだ。クールじゃないドライだ。ドライ。ドライとクールじゃな、冷え方が違うもんな。」
「・・・」
「サラリーマンの見た目が、元締めの女子高生のまんまタイプだったんだ。顔が良かったんだ、そのサラリーマン。
ハングレ店長に目を付けられるだけの事はある、イケメン野郎だったんだ、そいつは。
元締めの方が気に入っちゃって、金を出すからヤらせろって言われて、仕方なくヤちゃったんだ、そのサラリーマン。・・・正直、うらやましいよね。」
「・・・いや、ちょ、」
「売春の元締めって位だから金は持ってるんのよ、だから金にもの言わせて弱気なサラリーマンをヤちゃったの。今は女も主導権にぎる時代だからなぁ。
この元締めの女子高生も最初は、顔が良い男を買って、ヤってる位にしか考えてなかった訳。ところがだ、ハングレ店長と同じで、いつの間にか立場が逆転しちゃうんだ。
男のイチモツの具合が相当良かったんだろうな、ハマちゃったのは女子高生の方だ。
ま、男のハングレ店長をも虜にするサラリーマンだ、女なんか目じゃなかったろうな。」
「・・・価値観というか倫理観というか、なんていうか。」
「そこでサラリーマンの悪い虫が出てくる。・・・そうだ、白いソックスだ。
別に女子高生とヤるのは悪くない。むしろ、奥さん以外の女とヤれてラッキーだ、ぐらいにしか思ってなかった。男ともヤってるけどな。
ただ、自分が興奮するには若いだけじゃダメなんだ。白いソックスがなきゃダメなんだ。
女子高生も気持ち悪い、今風に言えば、キモいと思ったろうが、キモかろうが何だろうが、ハマっているのは自分の方だから、サラリーマンの言う事を聞くしかない。
白いソックスを履くだけで、ヤってもらえるんだから、従うしかないだろ?
でも、男に更に欲が出てきてしまったんだ。
元締めの女子高生以外の白いソックスを履いている女子高生にムラムラしてヤっちゃったんだ。
その元締め女子高生、どう思ったと思う?」
「・・・どうって?どうなんですか?」
「プライド、ズタズタだよ。プライドが。
今まで蝶よ花よと振舞ってきて常にカースト一位の女が、自分が売春させてる二軍三軍の女に負けたんだ。
そりゃあ頭にくるよな?
プライドだってボロボロだよ。頭にきてサラリーマンに詰め寄ったところで、何も解決するわけもない。自分の男でもないし、金で繋がっているだけの間柄だ。
男も欲しい、プライドも欲しい、女は初めてムキになった事だろうよ。
じゃあどうする?
簡単な話だ。
男から女を遠ざければいい。
そのサラリーマンの目の届く範囲の女子高生に、白いソックスを脱ぐように命じたんだ。
白いソックスを履いているのは自分だけ。そうしたら男は自分にしか興味を持たなくなるはずだ、と。
サラリーマンはホイホイと、その元締めの女子高生に戻ってきたが、不安はぬぐえない。また違う女が白いソックスを履くか、気が気でなかったからだ。
それで始めたんだよ。」
「・・・・えーっと。なにを。」
「白いソックス狩りを、さ。」
「自分の部下?二軍三軍の女を使って、白いソックスを履いている女を文字通り、狩らせたんだ。白ソックス狩り。
白いソックスを履いた女子高生を捕まえては、脅して、脱がせる。目に入る女子高生全員だ。町に女子高生が何人いると思ってんだよ?異常だよ、異常!
まあ、でも、プライドズタズタにされたんだ、その女は気が狂ったように白いソックスを狩っただろうな。」
「・・・なんかヤバイですね。」
「ヤバイだろ?瀬能さん。」
「・・・・ホント、瀬能さん、妄想たくましいというか、何と言うか。」
「俺も絶句しちゃってさ、話したくもなるだろ?こんなオナニーきめてて。それで聞いたんだ、なんでこんなに想像できるんだって?
そしたら、家に知らない、白い靴下が捨ててあった、って言うんだ。
瀬能さん、ゴミ屋敷でも、全部、家にある物は記憶しているらしい。捨てる気がないだけで、とにかく家じゅうの物はどこに何があるか把握しているんだってよ。
あの人、基本、家から出ないだろ?そりゃそうだ、ゴミ捨てだって行かないくらい引き籠もりなんだから。
家主が家から出ないのに、知らない物が増えているって不思議だなって思ったんだって。
自分じゃ買わないから、その時、この白い靴下をオカズすれば面白いって思って、
まあ、こっちからしたら迷惑だけど、一晩中、イタしてたんだとよ~。
面白いよな、瀬能さん。
おい、どうした?なんか顔色悪いぞ、石峰?」
「・・・ははははははは。話を聞いていたらなんか具合が悪くなってきてしまいました。あ、今日は仕事も溜まってないから早退しようかな、
大丈夫ですよね、木崎さん?」
「ああ。俺は大丈夫だけど。・・・お前さぁ靴下も履かないで仕事してるから風邪でも引くんだよ。俺にうつすなよ?こう見えて俺は意外と忙しい身の上だからな。ま、今日は奥さんに甘えて寝てた方がいいんじゃないか?」
「・・・あり、ありがとうございます。では、お先に。」
「おう、お大事にな~。
・・・・・・・。
ほんとあいつ、顔色が白かったけど、大丈夫か?
それはそうと、ネットニュースでも見て~っと。なになに、パチンコ店店員が業務上横領、こっちは、市内高校生が他校生徒を暴行、はあ、怖いねぇ。
瀬能さんの妄想話に付き合ってる方が気楽でいいや。」
※本作品は全編会話劇となっております。ご了承下さい。