タケシ、スキルを覚えるそして探索へ
食事にありつけてから、しばらくの間は、拠点防衛に木を拾ってきて柵を作ったり、落ちていたヤシの実みたいな殻に穴を開けて中を空洞にしたものを作って水汲みに行ったり、ウサギを捕まえたりしながらとりあえずの生活を送った。
その間経験値や生産スキルが増えていったが何か変化を感じる事もなかった
そしてついにまたゴブリンに出くわしてしまった、ゴブリンはまた躊躇もなく襲いかかってきて持っていた剣を振りかぶった、俺は持っていた槍を構えて、一気にその胴体を突いた。
「おりゃぁぁぁ!!」
見事に胴体に槍が刺さりゴブリンは絶命した
「やった!やはりリーチがあると落ち着いて対処できるな」
その時
『武は経験値を2手に入れた』
またかと思っていた俺に声が続きを言った
『経験値が一定に達しました、これよりステータスが解放されます』
「なんだ?」
すると目の前に何やら文字や数字が現れた
ステータス
名前 タケシ サワムラ
職業なし
スキル 火おこし 採集
加護 女神の加護(幸運)
魔法 火 鑑定
スキルポイント3
戦闘
生産
「おお!!これは、ステータスが見える・・・ん?女神の加護(幸運)?あの女神加護なんてしてくれてたのか? それから・・・・魔法だ!!」
実感はないがどうやら魔法が使える世界らしい、ファンタジーだ!
「火? どうやって使うのかな?」
それからしばらく
「そりゃ!」とか「おりゃ!!」とか「ファイヤーボール!!」とか
「◯ラ!!」とか色々と試したものの魔法は使えなかった。
「ん〜?わからん 次!」
「鑑定!!」
何も起こらない・・・・
「ん〜? あぁ何も鑑定対象がないからか?」
そこで俺はあたりを見渡して、ステータスに夢中になりすぎていて忘れていたが、ゴブリンは確かに武器を持っていた
探してみるとゴブリンの死体のそばに剣らしきものが落ちている、そっと近くに寄っておずおずと剣を拾ってから
「鑑定!!」
すると頭に直接情報が流れ込んでくるどうやらこれは(腐りかけの剣)らしい
まぁそれは見れば分かるのだが、しかし魔法ってすごいな!!
初の魔法は鑑定になってしまったが、本当なら(メラ◯ーマ!!)とかやって見たかったのだが・・・・いや、別に厨二病ではない、自分たち世代の魔法と言えば、ドラゴンをクエストする奴なのだ!!
とにかく鑑定は使えた、すごいな!まぁ精度はイマイチみたいだけど、解らない植物とかあったから助かる!
あとはスキルポイントってやつか、意識してスキルポイントを見てみる戦闘と生産とあるからそれに使えるらしい、今はとにかく生活なので生産に意識を向けると生産に3と出た
「スキルを獲得します、生産(鍛治)が使えるようになりました」
「鍛治?剣とか打てるのかな?」
武は剣をイメージすると剣の打ち方は分かるようになったみたいだが、それ以上のことは起こらない
「これは道具や材料は自分で用意しないといけないやつか」
しかしできる事が増えていくのは楽しいな
「ところでゴブリンはどこからこの剣持ってきたのかな?奥に行けば人にも会えるのかな?」
それから武は死体を始末して、剣を手にして寝ぐらへ引き上げたのだった
その日の夜、いつも通りウサギを解体して串に刺す作業をしつつ魔法の事を考えていた
「火の魔法ってどうやって使うんだろうな?」
とりあえずの火は残り火を絶やさないようにしているので、また苦労してあの方法で着ける事は無いにしても、大雨とかで種火が消えてしまってまたあの方法で着けるのは骨が折れるからなぁ
「こうライターみたいに指先からボッとか出ないかなぁ」と指先にライターの炎を思い浮かべた瞬間に火が出た
「うあ!!!」
武は驚いて手を振って火を消してしまった、全然熱さなどは感じなかったが、正直驚いてしまったのだ
「今火が出たよな?」
もう一度ライターの火をイメージして指先に集中すると
「また着いた!!これが魔法かぁどうやら具体的にイメージが出来ないと使えないようだな」
まぁメラ◯ーマとか実際には見たことがないわけだしな
「けど、これぐらいの火では攻撃などは完全に無理だな、けどライターを手に入れたのと同じなのだからすごい進歩だよな」
それから武は、ウサギ肉をほうばりつつ魔法をつけたり消したりし、魔法を自分に馴染ませるのであった
翌日、昨日の魔法遊びで、イメージできればバーナーぐらいまでは火力が出せる事を発見した武は、昨日拾ってきた腐りかけの剣をバナーで炙って石で叩いて歪みと腐った部分を直した、水を使って焼き入れ焼き直しも行った、焼きを入れないと金属は脆いらしい、と鍛治スキルが言っている、研ぎも平たい石を拾ってきて水を馴染ませながら研いだ
「とりあえずはしばらく使える剣にはなったな」
鍛治スキルのおかげか素人のくせに何をどうやったら、元に戻るかがなんとなく分かる
鞘は木をくり抜いたものを二つ作って合わせ、簡単にツルで縛ったものだ、
「よし!完成!」
出来立ての剣を鞘に入れ背に背負った、ナイフ槍もあるし、竹で作った水筒も作った、あとは何が必要かなぁ
「保存食も必要だな」
保存食はウサギを少しずつ干しておこう、あとは背嚢なんかも欲しいなこれもウサギ皮を石でナメしてあるからそれをツル紐で編んで作るか
そう武はついに森へ入る準備をしているのである、今まではゴブリンが怖くて入り口ぐらいしか入っていないのだ!
しかし先日2体目を倒して、自信がついたし、何より出来ることが格段に進歩したからだ
それから数日を掛けて、準備をした
その辺の草を鑑定しまくり、傷薬になるもの、解熱用、火傷薬、腹痛とかなりその辺の草なのに役立つ草があった
ツルをほぐしほぐしヨリヨリしてロープも作った
「剣よし、槍よし(ちなみに槍は石器製に作り替えた、ナイフが腰に無いといざって時に不便だから)背嚢にロープ、薬草類、保存食、水筒よし」
まぁちょっとした探索のつもりだから、作ったもの半分も持っていかなくても良いとは思うけど、まぁそんなに荷物ではないし、ここまでのスキルポイントも全部生産型に振り分けて、魔法も風、土が手に入っている、風は扇風機程度の風量しかなかったため、戦闘には使えない土魔法は色々試した結果その辺の粘土質の土を1㎝程度のレンガ状にすることが出来た、今のところ使い所がない
「よし!準備完了!」
計画はある、とりあえず水は心配なのでいつも水汲みに行っている川まで海岸を進む、それから川を目印に遡上する事、それだけ、
とりあえず太陽が中天に達した時点でそこを、1日で遡れる限界点として、その日は引き返す。
安全を確保出来るなら一晩明かしてそれからまた遡上を繰り返す
武は意気揚々に歩き出し、いつもの川までたどり着く、そこから川伝いに遡上を開始する、川先は森になっていて奥までは見えない、木々が生い茂り、草をかき分け入って行った
遡上を開始して10メートルも進まずに武は違和感に気づく
「ん?」
どう解釈して良いか解らずに戸惑った
「ここから空気が清浄だな・・・」
そう、違和感があるというより、今まで森から感じていた恐怖というか違和感がここには無い
「今まで水汲みをしていた所からそんなに奥には来てないのにな」
もう少しだけ歩を進め、川を上っていくすると少し開けた場所に出た
「おぉ! 滝がある」
そこには滝があり、滝壺を囲むように崖になっていた、滝と言っても落差は2メートルほどで幅も1メートルほど、滝壺の深さも2メートルも無いようだ、滝壺の幅は直径が5メートルぐらいでそこから、急激に浅くなっていて今まで水汲みに来ていた川になっている
「なんでここだけこんなに空気が澄んでいるんだ?」
マイナスイオン?森林浴効果?なんて考えていたが、滝上に生えた大きな木の根が崖から生えており、そこに何かがあった
「女神像だな・・・・」
根に絡まった80センチぐらいの女神像があった
「よく解らんが、祭祀跡とかか?この女神像のおかげでここら辺一帯が浄化されているとか?」
しばらく武は川を遡上する事を忘れこの清浄な場所を探索した
この開けた場所は真ん中に女神像を抱えた巨木、そこを中心に木々もまばらな空間になっているそこから奥は木々が生い茂るがまだ空気は清浄だった、巨木から100mほど進んだところからまた、あの嫌な違和感に襲われた
「なるほど、あの巨木から真円を描くとして半径が100メートルの正常な空間が広がっている感じかな?」
そうこうしているうちに太陽が中天に来て少し過ぎていた、
「今日は探索を諦めて、ここで一晩あかそう」
何はともあれ、武はここを第二の拠点に出来ると感じていた、
崖下の川べりに石を囲って竈門を作って辺りから薪を集める
着火魔法で火を着けて焚き火を起こした、干し肉を炙り
食事を済ませてから、これからどうするかを考えた
「第二の拠点と思ったが、ここを本格的に拠点開発していった方が良いな、防御の柵はそんなに頑丈に作らなくて済みそうだしな、第一は雨風をしのげる小屋とかがいる」
第一の拠点は洞窟を利用したため、最初から雨風はしのげていた、ここは雨ざらしとはいえ、あの恐怖に一晩中晒されることが無い
しかし、雨風を凌ぐためにはどうしても木を伐採する必要がある
そのための道具がいる
ナイフや鍛え直した剣で木を切り倒すのは刃が持たない、石斧でも作るか
あの根に絡まった女神像も救出してやりたい(この清浄な空間があの女神像であることは多分間違いないのだから)
川から石を数個拾ってきて、石と石を叩きつけながら形を整える作ったロープで木と結んで石斧の完成である
とりあえず、邪魔な草は剣で払って自分が暮らす場所を確保する、それから女神像に絡まっている根を慎重に斧で叩く
どうにか、女神像を救出し終えたが、石斧がダメになってしまった・・・
もっと硬い素材で作らないとダメなようだ
救出した女神像を観察
「西洋のマリアのようにも見えるし、観音様のようにも見えるな・・・」
服装も東洋西洋わからない薄絹で柔らかく包まれているようだ
「まぁ異世界の神様だしな・・・」
とにかく女神様を取り出した木の根の蔵のようになったところにお祀りして、日本風ではあるがお祀りしておく
「女神様、この空間を与えてくれて感謝します、これからここに住むことを許してください」
少しだけ女神像が薄く輝いたことは目をつむってお祈りしていたタケシは知らないことだ
「さてと、本格的な拠点作りは明日からにして、同時に探索も進めていこう」
この空間の清浄さで清められたかのように武の心は生気に満ちていた。
「斧どうしよかなぁ・・・」