東方見聞録
皆帰り際に、俺に挨拶してくれるようになった、この事は素直に嬉しい
「お?終わったか?」
サーシャがやっと起きた・・・こいつは本当にどこでも自分らしさを失わない奴だと呆れと尊敬を抱いた次第だ
「タケシ殿、帰りも我らに同行してくれるのだろうな?」
ジュディスさんがそう声をかけてきた
「いえ、ジュディスさんお言葉はありがたいのですが、俺たちは東回りで帰りますので、コラルドだけを一緒に連れて帰ってもらえますか?」
この島を守るためには、地形も知っておく必要があると考えた、今はまだ東寄りは未開の地だったので、北東に来たついでに見ておきたかった、その言葉に即座に反応したのはコラルドだった
「なぜ我だけ除け者なのですか!?」
除け者って・・・俺は苦笑して
「除け者じゃねぇよ、お前にはエルフの里から来てくれる方の護衛と案内人を任せる、帰りに自分の村にも立ち寄れるだろうが!それにガラス製品の運搬もある」
あぁそうだった・・・と天を仰いだコラルドだったがすぐに任せらせたと喜びになったようだこいつら魔物はどうも主君とかに命令とか忠誠を誓うとそれに応じて強さも増すようだ、なのでしきりに主君ごっこのような事をする・・・ごっことは失礼だったか・・・逆に俺に主君としての自覚がなさすぎなのか?会議で俺が司令官になる事を強く求めたのもその辺りの性質のようなものが作用さていたのだろうか・・・
「そう言う事であれば、仕方なかろう人選はもう済ませてある、ついでにここにいる二人はその東方の旅に同行させると良い、この二人は何かと役立つ」
そう言ってジュディスさんはユリアとゴートンを残し去って行った
「よ・よろしくお願いします」
「よ・よろしく頼む」
ユリア・ゴートンは自分の意思も訊ねらることもなく強引に置いて行かれた、気持ちが着いて行ってないのだろう口篭っている・・・その内気持ちの方が追いついてくるよ?がんばれ?
「ちょっとよろしいか?」
そこにいたのはダークエルフの美女だった銀髪なのはユリアと一緒だが、肌が黒いせいもあってその白さが際立って見える、しかしユリアたちとは違い野生味溢れた雰囲気を醸し出している
「はい、なんでしょう」
見惚れていた俺の膝が痛むのを庇いながら俺は返事をした
「我は、ダークエルフのダフネと申す」
と武人風の少し浅い礼をした、ダフネと言うダークエルフは言葉を続ける
「タケシ殿は船を製作する技術はないだろうか?我らの種族は海洋民族であるため船の操船に長けている、今後の戦いに水上戦があるなら戦いにいける船を作ってもらいたい」
水上戦か・・・ないとは言えないか・・・しかし船は作れるかどうか
「今現在ある船の仕様は?」
「ハッ!マスト一本とアウトリガー仕様の小型船です!総数は十艘ほどであります!」
軍人らしい答え方だった
「小型のアウトリガー船かぁそれなら作れないこともないが、船のサイズ的に人間が海を越えてくる船には勝てないだろう、しかし船の操船が出来る者の力は頼りになる船の事は考えておく」
人間の船に勝てないと言った所に少しムッとしたようだったが、話を聞いてダフネは納得したようだ、俺は少し考えダフネに聞いた
「島の周りを周回する事は出来るか?海岸線沿で良い」
ダフネも少し考え
「他の種族のエリアに入って構わないのであれば可能だ」
種族間の縄張り争いがあるのか・・・
「それは許してもらおう、取り決めた連絡網で回しておくから、島の周囲を監視してほしい何か異常を見つけたら、すぐに海岸線沿いにいる見張り員に通報するようにしよう、もちろん生活に支障が無い範囲で構わない」
「承知した」
「ありがとう、他にも何かあれば西南の大樹に俺の拠点があるのでそこにいつでもくるといい」
ダフネはキビキビと敬礼をし去って行った交戦的と言うのは間違いではないと思うが、ただ戦いが好きとは違うような印象だったな、ただ何かを守りたいとかそんなふうに俺には見えた、
ダフネと話ていると次第に様々な種族が列を作るようになった・・・皆島を守りたいのだろうと全員と話した、結局その日は旅立つことは叶わず遺跡に泊めてもらうことになった
様々な種族と会話し、その中で特にダフネの船の案、ハーピーの空の案、オークの重量級部隊案など参考になる事も多かった、シルビーさんが用意してくれた寝所は快適でゆっくりと体を休める事が出来た、
翌日
「よし準備は出来たな、とりあえず出発するぞ?」
『『『『『『おう!』』』』』
と各自から返事が返ってくる、今回東方の旅のメンバーはコラルドを抜いた俺たちに新たに加わったユリアにゴートンとゴランたちリザードマン五人だ、とりあえずの目的地はスミスの故郷の巨人族の里だ、スミスの意向もあるが今回の会議で決まった中立地帯の北東エリアに属している彼らの里は移動しなければならなくなった、他にも里を追われた種族がいたようだが、俺の拠点に来てくれれば働いてもらうが衣食住の面倒はみると会議で言っておいたので問題なかろう、スミスには住みなれた所を離れさせてすまないと言った所、スミスは「問題ない」とそっけなく答えた、彼にしてみれば最大限の反応だった、巨人族の里はこの島の東の大樹にあるという、この遺跡からだと二日ないし三日の位置らしい、
途中ガビンが東の地形を確認するのであればサーシャの背に乗り上空から把握した方が良いのではと話しかけてきた、その言葉に答えたのはサーシャだった
「我の力は、アテにせぬことだ元の姿に戻るだけでもかなりのマナが必要なのじゃ、まぁ飛ぶぐらいはしてやっても良いがな」
リザードマンの一件で力を貸してもらっているし、今のサーシャに無理をさせるわけにもいかない
「大丈夫だサーシャ、今は力を回復させる事に専念してくれ魔物たちにこの島を守ると誓ったのは俺だからな?」
そういうと出しゃばった事を申しましたとガビンがサーシャに頭を下げていた、サーシャもいろいろな提案をして良い心がけだぞ?とガビンの肩を叩いていた
二日目、サーシャが拠点にきてすぐの頃に狩ってきたブラックベアに遭遇した、スミスのハンマーで足止めをしているうちに、ガビンが火魔法、ゴランたちの水魔法で攻撃、ユリアが弓で牽制している内に俺が懐まで入り、風魔法を纏わせた剣でトドメを刺した、なかなかの強敵だった・・・
クマを解体し、保存が出来るように燻しておく、余った肉も即席で背負子とモッコを作って巨人族の里まで運ぶことにした、
三日目の昼前には大樹が見えてきてすぐに里に辿り着いた、里の入り口付近に大きな人影が数人見てとれる
「この度は、ようこそ我らの里にお越し下しました」
一際大きい巨人がしゃがみ込んで挨拶をしてきた、族長のウィリアムと言うらしい
「タケシです、今回の件で里を離れさせてしまう事をお許しください」
会議の内容は妖精族のネットワークですでに族長も知っている、ちなみに俺にもシルビーさんの分身体の一体が見えないがくっついている、シルビーさんの分身体だけでなく妖精はそこらじゅうに潜んでいるらしい、木の精霊なども妖精族らしくその一族は皆がつながっていて、連絡を取り合っているそうだ、そのネットワークを利用して相互通信をしてもらえないか俺がシルビーさんに頼んで実現した、誰かに連絡を取りたい場合、誰から誰へ通信と語りかけると離れた特定の人物に連絡をとる事が出来る、相手の名前がわからないと特定が出来ないという難点はあるが、それは問題ないだろう、全体に連絡をする場合は名前がわからなくても通話可能だ
「いえ、我らは特に定住しているわけではないので、お気になされず今はこの女神の木が良い目印になっておりますので、ここに長居をしているだけです」
巨人族はこの島の北東部と北西部を行ったり来たりしながら狩りをして生活しているそうだ
「今回は南西にある、その女神の木に俺の拠点があるので、落ち着くまでしばらく一緒にいてくれると助かります」
「それは構わないんのですが、スミスたちはそのままその拠点でお世話になる形で大丈夫なのですが、我々は南のエリアで移動しながらの生活で大丈夫でしょうか?海岸沿いを移動しながらだと見回りにもなりますし」
「それはありがたい、ぜひそうしてくれたら助かります、入り用なものがあればスミスにでも連絡していただければ用意しますので、ではこれからよろしくお願いします」
巨人族の長から南のエリアの監視を打診してもらえたのでそのままお願いすることにした、それから巨人族の出発の準備を手伝いつつ地形を確認する、東側は低いが山々が連なっていてその奥が海らしいが海までは崖になっていて降りられる場所は限られるそうだ、こちらの女神も根に抱けれるように鎮座している、もしかしてそう言う祀り方なのかもしれない、救出と称し取り出してしまったが、しばらくして準備を整えて南に向かって出発した、もう一つの女神像のある巨木・・・(この際女神の木と呼ぶことにする)で一泊し、途中ゴブリン村にも立ち寄り、ゴブリンたちにもなるべく見張りを頼んだ、そこから拠点まではなんと石畳が出来ていた、とても歩きやすい、歩きやすくなった事で考え事もする時間が出来た
東の地形としては、山はそんなに高くはないが、海から上陸するには切り立った崖が多いが無理すれば上陸可能な地形だった、この島の地形をざっとまとめておくと、俺たちのいる南エリアは崖はあっても長大な砂浜もある地形が多い、今来た東は崖が多いが無理すれば上陸可能、北は高い山脈があって海から上陸したとしてもいきなり山脈に阻まれるので上陸するメリットが無い、西は南に似ている地形だが砂浜はそんなに長大ではない、やはりこの島で上陸を考えるのであればこの南エリアのどこかになる、今までも感じていた事だが魔物の分布的に北エリアに魔物が多数居住しているのは昔南エリアから侵入してくる外敵から逃げていくうちに今の分布になったと思われる、つくづく人間の身勝手が招いた事だといたたまれなくなる・・・そんな事を考えて歩いていると、サーシャが近づいてきて
「どうした?何を悩んでおる」
どうやらかなり深刻な顔をしていたようだ
「いや、この島の地形やらを考えていたら、昔人間が上陸して身勝手な行動をとったせいで、この南エリアに魔物が住めなくなったんだなと考えていた、なぜ人間はそんな好き勝手な行動を取れるのかとな?しかし人とは争う事しかできないのかな?」
「人間は心が貧弱な生物よ、なので先に相手を叩く事で安心感を得ておる、我もこの世界全体を管理しておる時に散々見てきた、人同士でも争い殺しあうのだ、相手が魔物なら容赦すまい本来ならば我は人魔のどちらにも肩入れをすべきではないと思うが、タケシ貴様が魔物側に立つと言うのであればそれも致し方あるまい、何も悩むことはない自分の思うようにやると良い、我も微力ながら力になろう」
サーシャもいろいろと考えてはいる、確かに神の立場からすればどちらにも肩入れはすべきことではない、しかし俺がこの世界で関わったのが魔物ならば何か運命のようなものがあるのかもしれない、俺はこの世界で魔物に助けられている、人間の身勝手も聞いてきた魔物を助けたいと思うのは自然な流れではないだろうか・・・・なので悩むのはこれぐらいにしていかにこの島を平安の地にするかを考えよう、それが人と争う道であっても
東のエリアから数日をかけて拠点にたどり着いた俺たちは目を見張ることになった、そこには多種多様な魔物が集まりそれぞれが働いていた、俺の姿を見つけてゴブリンの副リーダーのドレイクが駆け寄ってきた、
「タケシ殿おかえりなさい!」
「おぉ・・・ドレイクただいま、ゴブリン村までの道すごいな?で?・・・これはどんな状態なんだ?」
「はい、あの会議の後に続々と集まってきまして北東エリアの魔物はこの拠点に集まるようにとタケシ殿が指示を出せれたと聞きましたが?」
「あぁ・・・確かに・・・」
確かにあの指示は間違っていない思うが、こんなにも早くにこれだけの人数が集まるとは予想外だった・・・
「食料や、棲家の手配はどうなっている?」
「今の所、リーナさんを筆頭にテレスさんとジョナさんが陣頭指揮に立って食料調達に配布、ジョナさん巨人族が棲家の建設を急ピッチで行っています」
「そうか・・・・ならいいがリーナたち女性陣が陣頭指揮をとっているのか?」
「・・・お恥ずかしながら・・・男性陣が慌てふためいている内に陣頭指揮をテキパキと・・・・」
ドレイクは情けない表情になり肩を落としている
「ま、まぁまぁこの場はリーナたちに先を越されたかもしれないが、違う方で力を示せばいいんじゃないか?」
と気休めになるかわからない言葉をかけておいた、しかしリーナたちの指揮ぶりは大したものだった男どもを狩りに出させ、新しく来たものも含め料理班を結成し、炊き出しのための大型の調理器具まで鍛治班に発注し家も簡易的なものとはいえ、ちゃんと建設が進んでいる区画整理までしてある、獣人族のジョナが木製の板に種族・名前・人数・特技・特性などを書き込んでリストにしてくれていたちゃんと文字の読み書きができたんだな、この島の識字率がどのくらいか今まで知らなかった、しかも俺にもちゃんと読める、これは女神に言葉をわかるようにしてくれるように頼んだ影響だな、あのクソ女神にも最近はちゃんと感謝する気持ちは芽生えている、女神像に祈る時はあの女神を想像しているし、女神自体はサーシャの残滓らしいが・・・まぁ両方に感謝しておけば問題なかろう!
今後のこの拠点のリーダーはリーナたち女性衆に任せてしまおう、この調子なら全く問題ないと思われる、
「おーい、リーナたち」
手が空いたのを見計らい声をかけると、三人が集まってきた
「三人とも素晴らし指揮ぶりだな?今後この拠点の指揮は三人に任せるから存分にやってくれ、相談があればなんでも言ってくれたらいいから」
三人は片膝を突き
『『『ハッ!!!承知いたしました!!!』』』
と潔く承諾してくれた、のを遠くの方で絶望の眼差しでドレイクはじめ各種族の男どもが見ていたのは見なかったことにした、




