魔法の訓練と皆からの贈り物
数日後、ゴブリンたちと獣人たちの家の目処もつき、あたり一帯の木々は無くなって広々としてきた、数本の大きな木は残しめいめいの家を木の周りに建てた
「やっと、皆の家も完成したな」
と呟く俺に皆礼をしてくれる
「しかし、お主は変わった魔法の使い方をするのう?」
とサーシャが言ってくる
「変わったって、他に魔法の使い方を知らないだけだ、イメージが大切なのはわかるんだがそのほかどうやっても、ファイヤーボールみたいな魔法らしいことが出来ないんだよ・・・」
そう、いろいろと出来るようにはなっているが、魔法らしい魔法はいまだに使えていない
「今度、我が魔法の特訓でもしてやろう」
そうだな、魔法も使えないといざ何かあった時に困るから今のうちに覚えておいても悪くはないな
「なら簡単な遠距離系の魔法を教えてくれないか?」
いまだに使えない放出系の魔法を覚えたい、洞窟にサーシャを救出に行った時に一番苦労したのがコウモリの魔獣で、ジャイアントバットと言うらしいが、あいつを倒すのが放出系が使えない俺にとってはかなりの強敵だった
「なら、お主は風を操れるようだから、ウインドカッターかの、他の属性は何が使える?」
「俺に使えるのは、風、火、土、光、鑑定、探知かな?」
「なるほど、鑑定と探知(浄化)は置いておくとして、多分きっかけがあればお主であれば、全属性を使えるようになるじゃろ、今まで多様しているのが風属性なら今はそれを伸ばしてやる方がよかろう」
全属性が使えるようになるらしいが、キッカケって必要に迫らなければ発現しないと言うことだろうか?
「わかった、じゃあそのウインドカッターを教えてくれないか?」
「うむ、わかった」
サーシャが承諾した時には周りに全住民が勢揃いしていた、
「皆も覚えるか?」
とサーシャが皆に尋ねる
『『『『『『ぜひ!お願いします』』』』』』
それから、俺たちは皆してサーシャに魔法の特訓をしてもらった
皆優秀だった、マナの制御こそ最初苦労していたが、ガビンたちゴブリンは火属性の魔法に親和性が高いようだ、早くもガビンなんかは着火の魔法を通り越してファイヤーボールをマスターしていた、獣人たちは風魔法が得意らしく風を体に纏わすことで、飛ぶように早く動けるようになっている、今は俺と共にウインドカッターの練習中だ、ちなみに俺も素早さがかなりのものになった、しかしだなかなか、風が体から飛ばないのだ何故だ?
コラルドたちは、遠くの枝は切断していると言うのに・・・・
「タケシ殿、焦ることはないですもし出来なくても、我らがお守りする!」
コラルドが慰め?励まし?をしてくれるが、そんな言葉慰めにならねーよ!!!
「どうしても、イメージが上手くいかない皆の技を見ているのに」
いろいろと苦労しているとサーシャが
「お主は、器用にマナを操作する力はあるが、放出になると絶望的なまでにセンスがないの?」
グサッ!!!!!!
「お前なぁ、もうちょっとオブラートに包んでくれないかなぁ・・・・涙」
「だ・大丈夫じゃ・・・そのうち出来るようになるはずじゃ・・・」
くそっ・・・・俺が涙して悔しがっているとサーシャが
「とりあえずの応急処置として、魔石でも使ってみるか?」
「?魔石ってなんだ?」
何か代用策があると聞いて俺は顔を上げる
「魔石と言うのは、魔物や魔獣のコアになるものじゃ、お主もウサギや狼を狩っていて気づかなんだか?」
「あぁあの骨でもない、石の事か、今までの石は纏めてあるけど、あれ使えるのか?」
魔石とは、魔獣を解体している時に何かと邪魔だと思っていた石が体内にある事には気づいていたが
「あの魔石にはマナを溜め込む性質があってな?その魔石に魔法を封じ込めれば、魔法が使えないものでも、魔法が使えるようになるのじゃ、一度使用すると力を失ってしまうがの」
なるほど、俺にも放出系の魔石を使えば飛び道具が手に入るって事か!
それから、俺はサーシャにウインドカッターを封じ込めてもらった魔石を持って訓練場にしていた広場にきていた、サーシャが見守る中、魔石を起動させる
「ウインドカッター!!!!」
的にしていた、丸太は見事にバラバラになった!
「この威力すごいな?」
「であろう?我の魔法を封じ込めた事もあるが、お主のあのマナの制御がすごいのじゃ、普通なら丸太に全てのウインドカッターが命中することはない、放出して運よく当たればと言う程度の代物じゃからな?わかるか?お主は、いずれ放出系が出来るようになるとは言ってもその器用にマナを操る素質を伸ばした方が良いかもしれないな?」
「おう!ありがとサーシャ」
多分サーシャなりの励ましなのだろう、素直に礼を言っておく
「まぁ、我と同じ眷属がこんな不甲斐なさを皆に見せ続けるのもなんなのでな・・・」
とちょっと照れているのか、そっぽを向いた
皆を見ると、体は練習しているが、意識は完全にこちらを注視している、皆にも心配させたのかな・・・・しかし皆が一人を心配して気を配る、主としては失格だが、仲間としては良い者たちを得たな・・・・
その後、練習を重ねゴブリンたちは火魔法、獣人たちは風魔法を習得した、本当に魔物たちは優秀だ
その日の夜もブラックベアの肉とガロイモ、デザートに梨(イエローペアというらしい洋梨のような形をしている)のような果物で宴会をした
その日の夜に聞いた話だとあの気になっていた小麦畑は、誰かの管理に置かれているものではないとの事、昔から自生しているが、食料になるものだとは誰も思っていなかったとの事なので今度一緒に取りに行くことにした
「あとは、念願の鉱石採掘に行こうと思う」
翌日
『『『おはようございます』』』
皆が、毎朝のように出迎えてくれる、最初はやめてくれと頼んだがいっこうに聞き入れてもらえないのでその内諦めたのだ、でも担当でもあるのか顔ぶれは毎朝変わる
「皆おはよう、今日は鉱石採掘に向かおうと思うが、人選は出来ているか?」
「はい、ゴブリンからは私、獣人からはコラルド、エギルで同行します、他のものは内職と集落の周りの探索と警備に充てます」
とガビンが言い淀みもなく答える、ガビンは前日や前に言ったことなどから推測して先回りして動く天才的な素質があった、まるで有能な執事のようだった本当にゴブリンなのか?
「わかった、道具類と、何日か分の携行食を用意したら出かけよう」
『『『了解です』』』
承諾の返事をもらい、川で身を清めて朝のお祈りをして朝食の準備に向かうと
なんと言う事でしょう、そこには綺麗に朝食が揃っているではありませんか!
「これは、みんなで用意してくれたのか?」
リーナたちを朝見かけなかったがこれを用意していたんだな、しかしこの数日間で料理をこなすようになるとは、数日前までナイフの細かい作業もしたことがなかったはずだが、木で出来た大テーブルには、干し肉、干し肉を戻してガロイモと茹でた塩スープ、デザートには綺麗に切り揃えたイエローペア(洋梨)、まぁ食材は毎日同じだが、そろそろ他の食材もゲットしなければ・・・しかし本当にすごいと思った
「はい、お口に合うかわかりませんが、どうぞお召し上がりください」
とリーナたちゴブリン妻勢と獣人妻リーダーテレスたちが、固唾を飲んで見守る中、俺は箸を手に取り一口食べる、味は想像を出ない今までの味だが、なんだろう・・・・
「どうしたんですか?お口に合いませんでしたか?」
とリーナが慌てて訪ねてくる
「いや、うまい・・・皆が一生懸命に何かをしてくれている味がする・・・」
俺は涙を流していた、今までの人生でこんな愛情がこもった料理を食べたのは子供の頃に母親が作ってくれる料理以外で食べた事がなかったのだ、皆が自分に出来る事を考えて行動して今ここにこの料理があるのだと思ったら、思わず涙が出てしまった
「すまない、本当にうまい・・・ありがとう、皆も座って一緒に食べよう!」
ホッとしたように女性陣が胸を撫で下ろしている
「なんじゃ今度は我が料理を作ってやろうか」
ニシシシと言いながらサーシャがいつの間にか俺の背後に周り後ろから腕を回してきた
「なんだよ?お前料理なんてできるのか?」
涙を拭いつつサーシャに尋ねてみると
「我にも、料理ぐらいできるわ!」
とその豊満な胸を逸らした
「そうかそれは楽しみだ、今度お願いしよう」
と笑顔でサーシャに言っておいた
そのサーシャが、コソコソとリーナに近づき「今度料理を我にも教えるのじゃ・・・」と耳打ちしていることは聞かなかった事にした




