はじまりの島
1
俺の名前は沢村 武、四十四歳、日本人
一般的なサラリーマン職種は運転手
ひょんなことから異世界転生をしてしまう
しかしそこは異世界でもかなりの秘境のとある島
海あり森あり川あり魔物ありしかし人もいなければ街も村もない
これでは一般的な(一般とは何かは知らないが)とにかくラノベなんかでよくある異世界転生でチートでハーレムで冒険でウハウハなぁぁみたいな異世界転生ではなくこれはただの遭難なのでは?・・・・・
・・・・とにかく、
とりあえずは異世界に転生したワケなので現状確認
服装は上下安っぽい綿生地の薄手ズボンにシャツ紐ベルトいわゆる一般村人、年はかなり若くなって10代後半ぐらい?
腰には小ぶりのナイフがある刃渡15センチ程度だろうか
他の装備品はない・・・・これでどうしろと?いじめですか?そうですか・・・やっぱ転生の時に神様を・・・・
まぁ今は現状確認を続ける地面は短めの草むら目の前は深い森、あまり深くには入りたくはない、遠くには、大きな火山ぽい山が見える噴煙は出ていない、後ろは崖、崖下には海が見える、大きな波が打ちつけている、
「落ちたら死ぬな・・・」
よくサスペンスドラマに出てくる犯人が追い詰められるあの崖そのものだ、当然今は刑事も犯人も家政婦も居ない。
「かすかに海に流れ出る滝の音がするな」
そう思った瞬間森から「グギャ?」って声が聞こえた
「グギャググギャギャゲギャ!!」
緑の変な人型のそれは躊躇もなく襲いかかってきたゴブリンだった
咄嗟のこととは言え俺もよく反応できたと思う、
腰からナイフを抜き即座にゴブリンの胸元に突き出した、
たまたまうまく胸に突き刺さりゴブリンは息たえた・・・・
嫌な感触が手に伝わってきて俺は思わず顔をしかめる、
「ナイフだけでもあってよかった・・・」
その時
『武は経験値2を手にれました』
女性の軽やかな声が聞こえた
「なに?誰?経験値?」
それ以外情報なし、なんだったんだろうか?この世界はいわゆるRPGみたいなレベルがあって経験値を稼いで強くなるとか?
とにかく倒したゴブリンをどうしようか?倒して経験値は入るらしいが、死体が消えてゴールドや宝石になることもなかった、というわけで死体もそのままなわけだが、
「食べる?」
いやいや、流石に人型の魔物を食べる勇気は俺には無い
地球でも猿とかを食べる国はいくつもあるが、日本人の自分からしたらかなりハードルが高い
と、いうことで死体を海へ投げ捨てた、そのままにして他の捕食者がきたら怖いからな。
死体を始末した俺は・・・別に犯罪を隠蔽したわけではない事故だったのだ!!
とにかく死体を始末した俺は、ここは危険地帯であると言う認識のもと安全確保を一番に考え行動することにした、とりあえず拠点を確保しなければ何事も始められない。
森は危険と判断し海沿いを歩くことしばし、森が切れたところに、砂浜に隣接した洞窟を見つけた、森からも離れられるし、もし森から襲われても距離があるので迎撃しやすいと考えた。
洞窟内は暗いが広さはあるし奥には続いて無いらしく、
洞窟内から襲われることは無い
日も傾いてきて洞窟内が暗くなる、その前に火が欲しいライターやマッチは無い、現代人の俺には原始人がやるきの棒をクルクルやるやつぐらいしか思いつかない、なのでとにかく近くから木を拾ってきてクルクルやってみるが、火がつくわけもなく、汗だくになりながらクルクルしたが、体力を削られるだけだった。
あたりも暗くなり俺は火は諦めて、洞窟内に引き篭もることにした。
周辺から草や枝をかき集めて洞窟の入り口に立てかけた。
「これで少しは隠れられただろうか・・・・」
不安は残るがとりあえず洞窟内で身を潜めた。
その夜俺は、魔物への恐怖とこれからの不安に襲われ寝ることもできない、なので外の気配の気を配りつつ物思いにふけっていた、
なんでこんな事になってしまったんだろうか、そもそもあの女神が悪いのではないか!
そう俺は、あのクソ忌々しい女神によってこんな目にあっているのである、
2
俺はただのサラリーマン、普通のトラック運転手だった、ある日仕事中に目の前に飛び出てきた人、女神を(後から知ったが)トラックで轢き飛ばしてしまった、
弾き飛んだ女神は、女神というだけあって死んではいなかったらしいがかなり痛かったようだ!!
「このクソヒューマンが!!我に何しやがる!!」
その端正な顔立ちに似合わないセリフを吐きつつ俺をあっさり消し去ってしまう!!
そう、この時俺は死んだのだった、一瞬の事に何が起こったのかわからないまま殺されてしまったのだ・・・・
前代未聞だろう神である女神を引いてしまい、その上その女神によって殺されたのだから。
そして気づくと何も無い空間にいた、目の前には黒髪ロングの和風美女がお澄まし顔で俺を見ていた。
「あのーこれどうゆう状況ですか?」
目の前に立っているのが、先程弾き飛ばした人物という事はわかるが尋ねる
「・・・・・」
女神はお澄まし顔のまま何も答えない、なので
もう一度声をかけてみる
「あのー・・・・・・これは」
「うるさい今考えておるのじゃ、少し黙れ!!」
お澄まし顔を顔にはりつけながら、口からとんでもない口調の毒が吐き出された。
そしてしばらく女神は黙考してから
「ようこそ!ここは生と死の間の空間で我はサキカイヒメの神です」
キャピ!という擬音語が放たれたような笑顔でその女神は言った
「で?キャピ!!じゃねぇよ!俺は貴様に殺されたんだろうが!!」
と俺は激昂し女神を殴り飛ばした!
「テメェ!女神が可愛らしく挨拶してんだから大人しくしとけや!!」
やはりこちらが本性らしい
と女神も負けずに殴り返してきて
俺と女神はしばらく殴り合い罵り合い、もみくちゃになって暴れた
すでに死んでいるからか今度は殺されることはなかったがお互いにボロボロになってから、とりあえずもう一度対峙した。
(ちなみにサキカイヒメというのは、古事記に一度だけ出てくる、大国主が兄たち八十神に殺された時に大国主を生き返らせた神であるが武はそんなことは知らない。)
「はぁ、はぁ・・・で?これはどういう状況なんだ?」
俺はもう一度冷静になって尋ねた
「お主はあの時死ぬはずではなかったのだ、ちゃんと天命を全うし寿命で死ぬはずだった・・・・」
女神がそう答えた
「・・・・それで?」
俺は女神を促す
女神は目を逸らしながら
「なのでお主を生きかえらせてやろうと思ってな?」
「ほう?ならさっさと元にもどしてくれや?俺仕事中だったんだから」
「元には戻せぬ・・・・」
女神は言う
「は?」
俺は愕然として尋ねた
「なら俺はどうなる?」
「別の世界で新たな生を授けてやろう、良いであろう?今までの記憶はそのままなので生き返ったのと同じであろう?」
と女神が媚びるように言ってきた。
普通死んで生き返ることはないし、残りの人生でなくてもどこかで生きれるならそれでも良いと思ったが
「なぜそんなに焦って生き返らせようとする?人間死ねばみんなそんな事になるのか?」
俺はこの女神が何か焦っているように感じて純粋に少し聞いてみようと思っただけなのだが、
「な・な・何も焦ってなどおらぬよ?」
スースーと口笛にもなっていない口を斜め後方に向けて言っている
(なんて分かりやすい誤魔化し方なのか・・・・)
ちょっとこちらも意地を張りすぎたかと反省し聞いてみる
「いや、こちらもすまなかったと思っている、突然目の前に人が飛び出てきて引いてしまえば本当ならばこちらの落ち度だった・すまない」
素直に謝ってみた
「そうであろう!我を轢き飛ばすとは!それに!痛かった痛かったのだ!!」
女神がドヤってふんぞり返ったあと、涙目になってまたふんぞり返った
俺は呆れて女神を見ていた
「どうだ?生き返ると言うことで良いな?」
女神は安堵し、ふんぞり返って言ってきた。
「いや、俺は死を受け入れるよ、天涯孤独だったし未練もないしな」
「寂しいこと言うでない!!」
とまた女神に殴り飛ばされていた
「さっさと生き帰れば良いのだ!!」
女神はさらに焦り散らしている
「なぁ女神様よ、なんでそんなに生き返らせたいんだ?」
女神は思案した後
「・・・・わかった、我も素直になろう・・・そもそもお主はあの時死ぬはずではなかった事は話したな? 普通なら天寿をまっとうするはずのものが死ぬはずがないのだ、事故や病気問わずな?」
女神が素直になって話し始めた
「でも俺は死んだと?」
「そうだ、イレギュラーなのだ、そのイレギュラーは普通はありえない」
「でもイレギュラーは発生したと?」
「そうだ、ちょーと出番も少ないし、天界も退屈だったので下界である葦原の中国に遊びに行っておったのだ!そこでお主にひかれてしもうた・・・・」
「で?痛かったので殺してしまったと?」
「そうだ!!」
「そうだじゃねぇ!!やっぱお前が原因じゃねぇか!!」
俺は女神のこめかみをぐりぐりしてやった
しばらくそうして俺は冷静を取り戻し尋ねる
「で?これからどうなる?」
「・・・・早く転生しなければ他の高位の神たちにお主の事がバレる」
「バレたらどうなる?」
「お仕置きされる・・・・・・」
「されておけ」
「それは絶対嫌じゃぁぁぁぁぁぁ!!」
女神は体裁もかなぐり捨てて俺にしがみついてきた、俺の服は(服なのか?どうかもわからないが)
女神の涙と鼻水でベトベトになっていた
「わかったよ、別の世界かなんか知らないが、生き返れるんだろ?言葉は通じるようにしておいてくれよ?あとあんまり人の多いところは嫌だな、のんびり暮らしたい。」
パーーーっと女神は笑顔になり
「わかった、お主の希望通りにしてやろう!!では、いくぞ?」
ドーーーンっとまた殴られた
「ちょっと待てまだ望み・・・・・」
最後まで言えないまま殴られて今ここに至る
「クッソ女神が!!」
洞窟の中でこの状況に追い込んだ女神と、これからの不安で身悶えする武であった。
「絶対に諦めん、必ず生き抜いてやる!!!」