表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

EP1 本間豊 転生

テレビのニュースアナウンサーが伝える。


「本日、K市では季節外れの強風と雷の為、

複数個所で火災が発生しております。

原因は異常気象が起こした現象で・・・。」


ニュースでは解説が行われていた。

そんな中、本間豊はその巨体を小さな椅子に預け、

PCの前に座っていた。

椅子が少し動く度にギシギシと悲鳴を上げている。

もう引きこもって2年が経つ。

2年間、不摂生で本間の体は激変していた。

社会人になりたての頃、

小さな建築会社に就職していた時の体重より、

すでに倍の140kgを軽く超えている。

140kgから、体重計では計測不能になった。

測れなくなって、数カ月。

もはや、本間の体重はわからない。

肥え太った腹が、邪魔をする。

そばにはポテチ、片手にコーラ。

PCでゲーム三昧だ。

建築会社を辞めた後、リサイクルショップ店員、

運送配達員など、いろいろな仕事をしていたが

辞めてしまった。

そこから、2年。

社会に適応できなくて失意の本間は、

貯金を崩しながら自宅に籠城した。

必要な物はネットで買って、自宅から出ない生活。

自堕落な生活が体に顕著に表れていた。

本間の住む安アパートの窓から、

夜の帳に雷の閃光が走り響いてる。

依然、雷が落ちている窓外で、

ひときわ大きな音が轟いた。

ドドーン、バリバリバリ!

アパートの道路を挟んだ向かい側の木が

燃えている。

木の下に小さな道祖神のお地蔵様があるのが、

炎で見える。

「え!?」

外に出ると、強風と雷のせいか、そこかしこで、

消防車のサイレンの音が鳴り響いている。

誰も外に出てこない。

「どうなってんだよ!」

とりあえず、家に帰ってバケツに水を張って、

水をかけようと飛び出す。

体が重すぎてすでに息が上がる。

腹が上下に揺れて、走るのもやっとだ。

息も絶え絶えに、道路を渡り、

水をかけようとした瞬間だった。

トラックの運転手は

道路脇の木が燃えている事に気を取られ、

飛び出していた本間に、気づくのが遅れた。

バケツを持ち、道路に飛び出た本間は

トラックに轢かれた。

吹き飛ぶ巨体。

本間は丁度、お地蔵様の前に転がる。

道路に激しく打ち付けたようだ。

頭からドクドクと血が流れる。

鼻や口から大量に流れ出る血液。

本間は意識が遠のいていく。

そこにはっきりとした声が聞こえる。

「供えよ。」

声の方をみると、お地蔵様の姿が見えた。

本間はもうすでに体も動かせなくなっていた。

・・・供えられるものがないや。

・・・この脂肪なら供えられるか。

唯一動く目を下に動かす。

お腹につく脂肪の塊が見えた。

・・・いらないか。こんなの。

最後まで自虐思考でこの世を終える瞬間。

「・・・よき旅を。」

お地蔵様が話しかけたような気がした。


体の感覚がない。

・・・死んだはずでは?

しかし、意識だけがある。

・・・なんだこれは?

『交換完了いたしました。』

・・・え?

『籠城スキルが付与されました。』

・・・誰?

『・・・終了。転生します。』

そう聞こえた時に、体の感覚が戻った。

どこかにふわりと浮いているようだ。

目を開けようとした瞬間、落ちた。

二段ベッドの上段のくらいの高さから落ちる。

地面に背中を打ち付け、激痛がはしった。

ゴホッゴホッ!

息が詰まる。

・・・息がある?

痛みと意識がはっきりした。

むせながら、辺りを見回した。

どこかのレンガ造りの建物の外廊下のようだった。

古びたレンガで積まれた腰ぐらいの高さの壁。

所々に穴が開いてなくなっている床。

どこかの屋上のようだ。

生暖かい風が本間包む。

「誰だ!お前!」

突然の絶叫が響き渡る。

横たわる本間に対して、兵隊が駆け寄ってくる。

何が何だかわからないまま、槍を突き付けられて、

あっという間に兵に囲まれてしまった。

「おい、何だ、放せ!」

いくら叫んでも、兵は囲いを解かない。

「だまれ、このやろう!」

懸命に抵抗したが、

叫ぶたびに槍の柄でぶっ叩かれる。

ガッ!

後頭部へ強烈な一撃を受けて、本間は気を失った。


窓のない部屋の中で椅子に縛り付けられている。

水をぶっかけられて気を取り戻した。

「お前は誰だ?」

いきなりの質問に何がなんだかわからない。

すると、ビンタが飛んできた。

バシッ!

「どこから来た?」

今度は拳が腹に突き刺さる。

グエッ!

瞬時に答えないと、

躊躇なくビンタや拳が振り下ろされる。

口の中に血の味が混ざる。

答えられたのは、名前くらいだ。

何も知らないので、後は話にはならなかった。

どこの国の者だ?

どうやって入ってきた?

仲間は?

なにか聞かれるたびに殴られる。

返答が遅れても、言えなくても殴られる。

殴られ過ぎて、もう目が開かない。

本間の顔は腫れて、唇は裂け、

口から血が涎と一緒にでる。

気を失うと水を浴びせ、無理やり起こされる。

切れて血が流れている所に水がしみて痛い。

体の至る所を殴られ、傷みつけられた。

何度目かの気絶した時、

手首を縛られたまま牢に放り込まれた。

全身が痛くて、すでに動くことができない。

息を吸う時ですら、痛みが走る。

その時、目の前に半透明の画面が現れる。


『スキルの条件を満たしました。

籠城スキルを発動しますか?(はい/いいえ)』


すでに意識が途切れそうだ。

朦朧とする意識の中で考える。

・・・助けになればなんでもいい。

すがる思いで本間は画面に返事を入れ始める。

・・・はい。


『MPを消費しますか?物理交換しますか?』


・・・MP?・・MPで。

疑問を感じる余裕すらない、即答していく。


『範囲を指定してください。』


牢の中の3D画面が映し出される。

部屋の隅にポインターがついている。

・・・・・・・この牢の中全部。

ポインターを全部選択して、確定。

そこまで、操作を終えると、

体の奥から何かが抜けるような感覚に襲われた。

そのまま、痛みとともに気が遠のくのを感じる。


『スキル籠城を発動します。

条件が満たされた為、

派生スキルが使用可能になりました。』


その言葉を聞きながら本間は意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ