人間と巨人の共存は……
神々が暮らす世界。
天界から神たちは人間を見下ろした。そして神たちは思った。『黄金の時代に帰りたい』口々にそう言った。
それは遥か昔の事、一同に地上に降りた神たちが世の中を征服し暴れていた時代である。
その時代での行いや発見は様々である。神と神が交わると神の子や国、世の中の理など全てを生み出す事できた。そして好き勝手に生み出しすぎた事が原因により、大地は揺れ海は荒れ人類は戦争の毎日。その光景を見限り、神たちは天界に場所を移したのである。
人類は、災害をどうにかしようと自分たちが崇める偽造神を作る事により何とか災害は収まった。しかし人類の戦争は終わる事がなかった。
そして現代、鉄の時代。神たちはこの醜い人類を作り替えるため、地上に降りる事を決意したのである。
陽が上がり、光が窓越しから照りつける朝。ジリジリっある家の部屋から、大きな目覚まし時計の音がした。ベッドで寝ていた少年は、手を上げるように目覚まし時計を止めた。
少年は起き上がり、時間を確認した。
「えっっ……ウッソ、もうこんな時間かよ」
朝の8時。少年は中学の入学式である。開始は8時20分からで、ギリギリであった。
「ヤバいっ、早く着替えないと」
そう言い服を脱ぎ捨て、制服に着替え部屋を飛び出した。
「母ちゃんっ、これもらってくね」
テーブルの上のパンとリュックを手に取り、一目散に玄関に向かった。
「もうっシンジロウ、また夜更かししてたのね」
母ちゃんに怒られた。
「違うやい、楽しみで寝れなかっただけさ」
「それを夜更かしっていうのよ」
母ちゃんからのツッコミが入った。
「じゃっ行ってきます」
「いってらっしゃい」
シンジロウは急いで家を飛び出し、走って学校に向かった。
その時、上から何者かが舞い降りてきた。
「だっ誰だ⁉︎」
「私はヒューズ。神である」
見た目はカッコよくて神っぽいが、この世に神など存在しないと思ったシンジロウは口を開いた。
「何〜〜?神だって、そんな冗談いいから早くそこを退いてくれ。初日から遅刻になっちまう」
シンジロウは神に動じる事なく急いだ。
「あなたに頼みがあるのです」
「何だよっ早くしてくれ」
シンジロウの足はその場駆け足状態である。
ヒューズからとんでもない言葉が出た。
「私と交わってはくれないか?」
「何それ?」
中学生のシンジロウには理解不明である。
ヒューズは喋り続けた。
「私は今まで神と交わる事でたくさんのものを生み出してきた。それにより幸福や不幸が訪れた。しかしそれは神で試した結果、普通の人間と交わる事でどんな結果になるのか試してみたいのだ。結果によって世界が平和になるかもしれん」
「何言ってんだお前、世界は今も平和じゃないか……とにかく俺は急いでんだ、またな」
シンジロウは、ヒューズを置いてすっ飛んで行った。
ヒューズは哀れみな表情である。
「やはり、神と人間の共存は難しそうだ」
急いで学校に着き、体育館を覗くとギリギリまだ始まったばかりであった。
「よかった〜〜! ギリギリセーフだ」
安心したのは束の間、横から学校の先生が廊下の見回りに来ており見つかってしまった。
「おいっ、見ない顔だな。新入生が何でこんなとこにいるんだ? えっ?」
先生は怖い顔で睨みつけた。
「やっヤバい、完全にアウチだ〜〜」
シンジロウは震え声である。
するとドッガーーン! 突然何かがぶつかったような響き音がなった。ピッー、ピッー、ピッーサイレン音が、校内に響き渡った。
『緊急事態発生! 緊急事態発生! 現在校外から、何者かの攻撃を受けました。皆さんは落ち着いて速やかに避難してください」
体育館内の保護者や生徒、教師は逃げるとように地下の基地に避難した。
シンジロウは逃げようとすると、上から大きな瓦礫が降り逃げ道がなくなってしまった。怖くて怯えながら、瓦礫の影に隠れて音が止むのを待った。
少し時間が経つと、音は止み安心した。しかし油断した直後、瓦礫をどかすように手で払い大きな目がこちらを覗いている。
「うわっ、何だあれは⁉︎」
シンジロウが見たのは、生き物とは思えないほど醜い巨人であった。
咄嗟に逃げようとするも、すぐに捕まれた。そして巨人はシンジロウを食べようと口の中に運んだ。
「やっヤバい、死ぬ……死ぬ……死ぬ」
何度も自分の死んだ時の光景が頭に流れる。
「待て!」
遠方から大きな声が聞こえた。そちらの方に目をやると、それは宙に浮いたヒューズだった。
「うっ浮いてる。本当に神だったんだ」
シンジロウは死ぬ事よりヒューズが神であったことに驚いた。
「この醜い生き物は、私が黄金の時代。ある神と交わった時に生まれた生命体だ。見た目はキモいが、私に従順な下僕だ」
「あっそういうことね」
シンジロウはヒューズの交わるという言葉の意味をやっと理解した。
「さあっ、最後のチャンスだ。私と交わる気はないか。無ければこの場でお前を噛みちぎり、人類を新しく作り替えなければならない。世の平和のために」
「ふんっ、お前みたいな自分勝手な奴に何が出来るってんだ。第一ここは天国でも地獄でもねえ。地球っていう星なんだ。それにケチをつけている時点でお前は地球の事を全く理解していない」
シンジロウは、さっきまでの震え声ではなく勇気ある声で自分が思うことをヒューズにぶつけた。
「たった12年しか生きとらん小僧に、地球の何がわかるんだ。やれっ、その小僧を食ってしまえ」
ヒューズは怒り狂い、シンジロウを食べることを許可した。
「そんな事させるかっーー」
横から物凄い勢いでもう一人の巨人がタックルし、醜い巨人をぶっ飛ばした。シンジロウはぶっ飛ばされた所を巨人が掴んで助けてくれた。
「次から次へと何なんだよ」
シンジロウは頭がこんがらがって何が何だか分からない。
「あんたっ、ここは危ないわ。さあっ中に入って」
巨人の首元に、入れる穴が開いた。シンジロウは醜い巨人が復活する前に中に入った。
中はこじんまりとした空間に、操縦席やモニターが張り出されており椅子に一人座っていた。
「あのっ、ここは……」
シンジロウは困惑しながらも、状況を聞いた。
座っていたのは、ロング金髪で背丈が高い女だった。女は立ち上がり状況を説明した。
「ここは巨人の中。あなたはヒューズと名乗る神に狙われていた。そこに私が助けに来たってところかな」
「なるほど、……っでお姉さん名前は?」
「人に名前を聞く時は自分から名乗るものよ」
「すっすいません。僕、帝シンジロウです」
シンジロウは注意を受けたものの、何故か嬉しかった。何故だかわからないが、何かの興奮を覚えた。
「私はマキ、篠田マキ。よろしくね……ってこんな事してる場合じゃなかった。早から敵を倒さないと」
マキは急いで操縦席に着いた。敵はもう十分動けるぐらい回復していた。マキは目標の心臓にカーソルを合わせ、銃を撃った。しかし敵は、ガードを張り攻撃を防いだ。
「なんて事⁉︎ そんな事まで」
「ははは……無駄よ、その程度じゃ」
ヒューズはこっけいな者を見るような目で笑った。
マキは焦った。一体どうしたら良いのか模索していると敵の攻撃が来た。敵は拳を心臓目掛けて振り上げた。巨人は倒されてしまった。敵は攻撃を止める事なく、一心不乱に襲いかかる。
このままでは終わりだ。そう思い諦めようとしたマキの横で、シンジロウはいい方法を思いついたという顔で操縦席の横についた。
「変わってください。俺が代わりに奴を倒します」
「無理よ、このバルクを扱うにはかなりの特訓が必要なのよ。今初めて乗ったシンジロウ君には扱えないわ」
マキはシンジロウを必死に止めようと腕を掴んだ。するとシンジロウ脳からとてつもない電流が流れ、マキは倒れてしまった。
シンジロウは、無我夢中で今の出来事には気を止めず必死に相手に喰らいつくように動いた。それは今初めて操縦したとは思えない程の腕捌きで、敵の腕を払いのけた。
「敵の心臓に銃が効かないなら。自分でこじ開ければいい」
シンジロウは全速全身、巨人を走らせた。しかし相手はまたもやガードを張り近づけない。シンジロウは関係なしに、ガードをこじ開けるように割き、敵の心臓目掛けて拳を振りかざした。
「何⁉︎ ガードをこじ開けるとは!?」
これはヒューズも驚きだ。
すると心臓は、割れ中から大量の血が吹き出した。そして敵は完全に機能が停止した。
「やった〜〜! 倒したぞ!」
シンジロウは疲れてその場で寝転んだ。
これにはヒューズも悔しそうな顔であるが、ニヤリと笑った。
「ふはははっ、今のは私が作った生命体で一番と言っていいほど弱い。あなた達に次の刺客は倒せないわよ」
ヒューズはそのまま飛んでいってしまった。
「さて帰る。入学式もまだ途中だし」
シンジロウはマキの腕を肩に乗せ、引っ張った。マキはうすら意識でシンジロウを見た。
「この子ならやれる。きっと倒せるわ……。神も……そしてグルーさえも……」
マキは願いを託した。しかしシンジロウはまだ気づいていない。本当の敵は神ではなく、他にいたという事に。