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【コミカライズ】俺だけ余裕の異世界サバイバル ~転移先の無人島で楽しむハーレムライフ~  作者: 絢乃


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090 最後の夜

「やっぱり……すぐにはくぐれないよな、このゲート」


 切り出したのは俺だ。

 皆は暗い面持ちでコクリと頷いた。


「タイムリミットは明日の夜だったよね?」と吉乃。


「夜が具体的に何時を指すのか分からないから、遅くとも夕方あたりをタイムリミットにしておきたいな」


「今って何時だっけ?」


「17時23分だな」


 俺はスマホを確認した。


「なら24時間くらいしか残されていない感じかー!」と千夏。


「最後に何かしたいよね!」


 麻里奈が言った。


「ああ、思い残すことがないよう気になることは全部しないとな」


「そうは言ってももうすぐに日が暮れちゃうよ? 夜になったら危ないからあんまり行動できないんじゃないかな?」


 明日花が心配そうに俺を見る。


「問題ないっしょ! この島で私らを襲う動物なんて残っていないし!」


 千夏が答えると、エミューのジョンが「グルルーン!」と鳴いた。

 ジョンとルーベンスだけは近くに残っている。


「そういや動物は転移できないのかな?」


 吉乃が答えを求めて俺を見る。

 もちろん俺に知る由もないが――。


「たぶん無理だろう」


 ――というのが俺の推測だった。

 確信したいので宇宙人を呼ぶが、セコイアからは応答がない。


「なんで無理なん?」と千夏。


「宇宙人の発言からそう推測したんだ」


「発言?」


「宇宙人は転移先について『転移直前に居た場所』と言っていただろ?」


「つまり学校っしょ?」


「俺たちはな。だが、学校を休んだり抜け出したりしている者については、家や外に着くと言っていた」


「そだっけ?」


 千夏の目が吉乃に向く。

 吉乃は「うん」と頷いた。


「その発言から推測するに、転移先が人によって異なることは間違いないとして、転移先を決める方法には何かしらの条件があると思うんだ。転移先が固定ならジョンも日本に着くが、人によって異なるわけだからさ」


「条件? 固定? なんか難しいこと言うなぁ」


 両手で頭を掻きまくる千夏。


「こういう風に考えたら分かるんじゃない?」


 吉乃は右の人差し指を立て、俺に代わって話し始めた。


「私たちがこの島に転移した瞬間を23年10月10日の10時10分10秒だったとする。同じ頃、ジョンはこの島のどこか……第二拠点にでもいたことにしよっか」


「うんうん」


「このゲートはタイムマシンみたいなもので、23年10月10日10時10分10秒に自分がいた場所へ繋がっている。だから千夏が通ると、千夏は学校に到着する。でもジョンは――」


「第二拠点! あ、だからジョンは日本に行けないんだ!」


「そう、それが海斗の推測。私も同意見だし、宇宙人の発言とも合致するから間違っていないと思う」


「なるほどー! やっぱり吉乃は分かりやすいなぁ!」


「ありがと」


 ふふ、と笑う吉乃。

 俺はガクッと肩を落とした。


「じゃあこれから24時間ジョンとベタベタして過ごさないとなぁ!」


「グルルーン!」


「だいぶ話が逸れたけど、元々の明日花の質問にも答えておこう」


「私の質問?」


 首を傾げる明日花。


「暗くなると危ないんじゃないかって」


「あー! そうだ! まだ答えてもらっていなかった!」


 誰かさんのせいで、と千夏を睨む明日花。


 千夏は「ごめんごめん」と笑って流した。


「たしかに暗いのは危ないから松明を作ろう。竹か何かに松ぼっくりを突き刺して燃やせばいい。松ぼっくりは油がたっぷりでよく燃えるから、即席の松明にちょうどいいんだ」


「おー! 松明があれば安心!」


「じゃあ時間も惜しいし、思いついたことから手当たり次第に消化していこう! 最後の24時間をこの島で楽しみまくるぞ!」


「「「おー!」」」


 ◇


 それから俺たちは駆け足で島での生活を満喫した。

 動物に乗って森や草原を駆け回ったり、ジョンの故郷であるエミューの生息地に行って他のエミューと交流したり。

 夜になっても、しばらくの間は松明を片手にアレコレした。


 そして、深夜――。

 ノンストップで動き回ることに疲れ、第四拠点に戻ってきた。


「この大量の竪穴式住居、結果的には造る必要なかったよねー」


 麻里奈の発言に、七瀬が「船と一緒ですねー」と同意する。


「サルや他の動物が有効活用してくれるさ」


 答えると、俺はセコイアからほど近い住居に向かった。

 自分で建てたものだ。


「それじゃ、また明日。おやすみー」


 家に入ってルーベンスと明日を迎えるとしよう。

 と、思いきや。


「まだまだ寝かせないぞー!」


 千夏が俺の腕を掴んだ。


「そうですよ先輩!」


 反対側の腕には七瀬。


「最後は皆でスペシャルな夜を過ごそー!」


 明日花が後ろから抱きついてきた。


「わ、私も負けません!」


 由芽は正面から。


「私も混ぜてー!」と希美。


「吉乃、私たちだけ蚊帳の外になっちゃうよ」


「それは困るわね」


 麻里奈と吉乃も抱きついてくる。


「よし分かった! じゃあ最後の夜は皆でオールナイトだ!」


「「「うおおおおおおおおおお!」」」


 ルーベンスとジョンを適当な家に移し、皆で俺の家に入る。


 朝までイチャイチャして過ごした。

 二度と味わえないであろう夢のハーレムナイトである。


 ◇


 翌日。

 オールナイトで弾けたため、起きたら昼になっていた。

 ゲートは残っているが、宇宙人からの応答はない。


「今日も派手に暴れる予定だったが……」


「そういうのは昨日で満足しちゃったね」と吉乃。


 同感だった。


「よく地球が滅亡する日とかを題材にしたSF作品でさ、最後の時を特別なものではなく普通に過ごして終わるシーンが描かれているけど、本当にあんな感じの気持ちになるんだなぁ」


 七瀬が「分かります!」と同意する。


「最後だからこそいつも通りに過ごしたい、みたいな気持ちが込み上げてきていますよね! 今!」


「予定を変えて、今日は大人しく過ごすとするか。外側の森から動物たちを招集して、のんびりと最後の時を満喫するか」


「「「賛成!」」」


 俺はルーベンスとジョンに頼み、招集を掛けてもらった。


 ◇


 サルやサイ、ゴリラにチンパンジー。

 その他、様々な動物たちと第四拠点で過ごした。

 セコイアがそびえ、竪穴式住居が乱立する草原は、さながら動物園のよう。


「さて、そろそろだな」


 時刻は17時30分。

 タイムリミットがやってきた。


「ウキ、ウキウキ! ウキー!」


 動物を代表してサルが言った。

 サル語はさっぱりなはずなのに、何を言いたいかは分かる。

 別れを惜しんでいるのだ。


「すまんな」


 できればずっと一緒に過ごしたい。

 しかし、そうすることはできない。


「なんか怖くなってきた……ゲートを通るの」


 ボソッと呟く明日花。

 それに対し、麻里奈や希美が「私も」と頷く。


「冷静になればなるほど怖くなるよなぁ」


 宇宙人の言葉には何の確証もない。

 それどころか、宇宙人がどんな姿なのかも分かっていない。

 文字通り得体の知れない存在だ。

 そんな者の言ったことに、俺たちは全てを託そうとしている。


「他の連中みたいに勢いで行くのが正解だったかも」と吉乃。


「アイツらそこまで考えていたのかー!」


 やるなぁ、と笑い飛ばす千夏。

 しかし顔は強張っていた。


「念のために確認しておくけど、本当にいいんだな? ゲートをくぐって。島に残って生活するという選択肢だってあるにはあるんだぞ?」


 前までなら健康上のリスクなど、様々な不安があった。

 しかし今は違う。


 何かあれば宇宙人に助けてもらえるだろう。

 地球よりハイテクな宇宙にだって行けるかもしれない。


「私は残りません! この島のことは大好きだけど、それでも、やっぱり日本で過ごしたい!」


 七瀬が言った。


「私も同じ! 怖いし不安だけど、ゲートを通る!」と麻里奈。


 これに他の女子も同意する。

 皆の覚悟を見て、俺は笑みを浮かべた。


「じゃあ、いくか!」


 俺たちはゲートに向かって歩き出した。

 あと一歩というところで振り返り、動物たちに言う。


「短い間だったけどありがとうな! 最高に楽しかったぜ!」


「「「ウキー!」」」


「「「ウホ! ウホー!」」」


「「「ブゥ!」」」


「ガルルァアアアアア!」


「グルルーン!」


「あばよ!」


 俺は右の拳を突き上げ、ゲートに足を踏み入れた。

お読みいただきありがとうございます。


本作をお楽しみいただけている方は、

下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして

応援してもらえないでしょうか。


多くの方に作品を読んでいただけることが

更新を続けるモチベーションに繋がっていますので、

協力してもらえると大変助かります。


長々と恐縮ですが、

引き続き何卒よろしくお願いいたします。

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