087 交流
「宇宙人に連絡してもらう方法があるんですか!?」
興奮を抑えきれない俺。
「これは祖母から聞いた話じゃが、この島には見えない壁があるという」
「見えない壁?」
「触ると温かいらしい。島でそんな感じの何かなかったか?」
すぐに分かった。
デジタルドームのことだ。
「たぶんそれが何か分かります。俺たちはデジタルドームと呼んでいます」
「そのデジタルドームとやらは宇宙人の研究施設か何からしくてな、異常を検知すると光るそうじゃ」
「分かります! 俺たちも赤く光らせました! 一カ所だけですが」
「複数あるのか? まぁそれはいい。とにかく光らせたのであれば問題ない」
「というと?」
「光ったのであれば、宇宙人は島の異常……すなわち冴島君たちの存在に気づいているはず。あとは島の中央にある大きな木で待っていれば、いずれ向こうから接触してくるだろう、たぶん」
「たぶん!?」
「なにせ祖母が言っていた話じゃからな。宇宙人である祖父は、ワシが生まれた頃には既に他界していた。じゃが、祖母だけでなく母もこの方法で宇宙人と交流したらしいから、あながち間違いではないはずじゃ」
「なるほど……」
心許ないが、現状では最も頼れる情報だ。
「冴島君が知りたい情報としてはこれで一通り話したと思うが、他に何か訊きたいことはあるか?」
長老は懐からスキットルを取り出し、グビッとひと飲みして喉を潤す。
中に入っている液体が何かは不明だが、アルコール臭さは感じない。
「たぶん分からないって返ってくると思うのですが――」
そう前置きした上で尋ねる。
「俺たちが突然この島に転移してきた原因って何ですか?」
「君の察する通り分からぬ……が、宇宙人が関係していると思う。それがワシの祖父と同じ世界の人間なのか、はたまた全く別の世界の人間かは分からないが。とにかく、この世界――アルファの技術によって引き起こされたことでないのはたしかじゃ。我々アルファ人にそんな高等技術はありゃせんからな」
「ですよね」
想定したとおりの回答だった。
「逆に島についてワシから質問じゃが、この島は今でも果物が食べ放題なのか?」
「果物だけでなく野菜や米まで何でも。収穫しても翌日には復活するので」
「おー、まさに夢のようじゃのう」
その口ぶりから察するに、植物の超常的な成長率はこの島ならではの現象みたいだ。
「ワシの質問は以上じゃが、他には何かあるかい?」
黙っていると長老が尋ねてきた。
俺は「うーん」と顎を摘まみながら考える。
しかし、これといって浮かばない。
異世界転移した理由は?
――不明。
地球に帰還する方法は?
――分からない。宇宙人に訊け。
宇宙人と会う方法は?
――ドームを光らせたのなら、セコイアの傍で待っていろ。
知りたいことは既に回答してもらっている。
「あ、そうだ!」
帰還とは関係なさそうだが、知りたいことがあった。
「ん?」
「この世界について教えてください」
「この世界について?」
「俺たちはこの島しか知らないから。アルファの地理とかアルファ人のこととか、そういうことを知りたいなと」
「なるほど、いいじゃろう」
長老はアルファについて詳しく教えてくれた。
この世界は一つの超大陸と複数の小さな島で形成されているそうだ。
大陸以外の島は無人もしくは海賊が占領しているという。
国は一つしかなく、言語もアルファ語のみ。
文明については、近年のアニメに見られる中世ヨーロッパ風の印象を受けた。
ただし、アニメと違って魔法や魔物といったものは存在しない。
「――とまぁ、そんなところかの」
アルファに関する説明を終えると、長老はおもむろに立ち上がった。
「さて、そろそろ島を離れさせてもらうよ。あまり長居して宇宙人との関係が悪化すると困るからの」
「分かりました」
俺も立ち上がり、長老に「ありがとうございました」と頭を下げる。
「なぁに、困った時はお互い様じゃ」
いつも兵藤に言っていたセリフを俺が言われる。
自然と笑みがこぼれた。
「しかし……」
長老の顔が途端に険しくなる。
それによって俺の顔からも笑みが消えた。
「会うのは今回限りにしよう。アルファ人からすると地球人は不気味な存在じゃ。ワシ以外の人間からすると、言葉が通じないから何を考えているか分からぬしのう。できれば関わりたくないと思うだろう」
「その気持ちはよく分かります。言葉が通じないと不安になりますよね」
「うむ。それにこれは地球人もそうだと思うが、単にアルファ人と言っても性格は様々じゃ。中には乱暴なことを好む輩もおる。だから、互いのために交流はしないでおこう」
「分かりました。じゃあ、この島でアルファ人と遭遇した時はどうすればいいですか? 長老のお祖母様のように乗り込んでくる人がいないとも限りませんよね」
「その場合は殺すといい」
長老はあっさり言い切った。
「この島は宇宙人の管轄、言うなれば治外法権のようなものじゃ。だからこの島に入り込んだアルファ人がどうなろうと、それは自業自得である。ワシが地球人の立場なら問答無用で殺すだろう。もちろん、今回のような公的に上陸するケースはその限りではないがの」
「なるほど。分かりました」
「分かってはいると思うが、逆もまた然りじゃからの。もし冴島君たちが我々の船や島に近づくことがあれば、その時は警告しないで攻撃する」
「分かっています」
「それでは、君たちが地球に帰れることを願っておるよ」
長老は小舟に乗り、そのまま大型帆船へ。
そして、アルファの船はこの島から離れていった。
【祝! コミカライズ決定!】
いつもお読み下さりありがとうございます。
皆様の力強い応援のおかげで、本作のコミカライズが決定しました!
(株)竹書房さんの「ガンマぷらす」というレーベルで連載します。
担当の漫画家さんはコア助先生という実力派の上手な方になります。
24年夏頃連載開始予定!
……って、「もう夏じゃん!」となりますよね!
そうなんです、なんと遠くない内に連載が始まります!
具体的な連載日は諸々の調整があるらしく決まっていませんが、
是非ともご期待していただければ幸いです。
このあとがきを書いている時点で、
既に何話かネームを読ませていただいたのですが、
非常に面白かったので自信を持ってオススメできます!
それでは、引き続き何卒よろしくお願いいたします!














