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【コミカライズ】俺だけ余裕の異世界サバイバル ~転移先の無人島で楽しむハーレムライフ~  作者: 絢乃


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086 長老

 船から現れた日本語の分かる老人。

 その齢80を超えていそうな白髪の男が、絶望を希望に変えた。


「今からそっちに行く! お主の言葉が理解でき、そして話せるのはこの世界ではワシだけだ! コミュニケーションを求めるならワシに危害は加えてくれるなよ!」


 そう言うと、爺さんは謎の異世界語で船員に命じた。

 船員の一人が小舟を用意し、爺さんとともにハシゴを使って移る。


 爺さんが陸までやってきた。


「よっこいしょっと」


 高齢に見えないしっかりした動きで砂浜に降り立つ爺さん。


「ようこそ、地球人。ワシのことは長老とでも呼んでくれ」


 爺さんが握手を求めて手を伸ばす。

 俺はその手に応じ、緊張に満ちた声で返した。


「ど、どうも。俺は冴島海斗です。冴島もしくは海斗と呼んでください」


 相手が高齢者だからか自然と丁寧な口調になる俺。


「冴島君と呼ばせてもらおう。話すのはこの場でも良いかな?」


「あ、はい、大丈夫です」


 長老は「では失礼」と砂の上に座った。

 高級感たっぷりのローブが汚れることを気にしていない。

 俺は拳二つ分ほどあけて隣に腰を下ろす。


(どういう風に話を展開していけばいいのか)


 色々と訊きたいことがある。

 なかでも知りたいのは地球への戻り方だが、答えは期待できない。

 相手が地球を知らないと言っているのだから。

 それでも訊いてみる価値はあるが……。


「前方に我々の船が見えるじゃろ?」


 考え込んでいると長老から話しかけてきた。


「はい、見えます」


 大航海時代に活躍していそうな大きな帆船だ。

 数本のマストを備え、乗組員も見える範囲だけで数百人。


「あの船はこの世界における最新鋭の代物だ。君のいた地球に、あの船よりも凄い船は存在するか?」


「あります。地球にはもっと大きな船や飛行機があって、電車なども走っています。中の構造が分からないのでなんとも言えませんが、外観を見る限り、地球では数百年前に主流だったものに思えます」


「飛行機!? 乗り物が空を飛ぶのか!?」


「はい」


 驚く長老。

 演技をしているようには見えない。


「地球の技術は我々の世界より遥か先を進んでいることになるな」


「そう……なるのでしょうか。魔法とかあったら別ですが」


「魔法? ハハ、そんなものはこの世界に存在しないよ」


 あっさり否定されてしまった。


(帰還の道のりが遠のいたように感じるが、念のために尋ねておくか)


 あと、どうして日本語が話せるかも知りたい。

 なのでそれらを訊こうとしたのだが。


「地球に帰る方法とワシが日本語を話せる理由――」


 心を見透かされているかの如く先回りされた。


「――気になるじゃろ?」


「はい。ちょうどそれを訊こうとしていました」


 ふぉっふぉっふぉ、と笑う長老。

 小舟で待っている船員は緊張感たっぷりに俺を睨んでいる。

 長老にデコピンの一つでもしようものなら俺の首が飛びそうだ。


「最初に悲しませて悪いが、ワシは地球に帰る方法を知らん。ワシが知らないのだから、この世界の誰も知らないことは間違いない」


 断言する長老。

 想定していた答えなので、俺の相槌は「ですよね」のみ。

 ただ、分かってはいても悲しかった。


「次にワシが日本語を話せる理由だが、実は少し違っていて、実際には話せない」


「え?」


 理解できなかった。

 長老は明らかに日本語を話している。

 それも日本人のよう流暢さで。


「ワシは今、この世界の言語を話している」


「というと……この世界で使われている言語が日本語ってことですか?」


「違う、そうじゃない」


「え?」


 意味が分からない。


「ワシには特殊な血が流れていてな、あらゆる言語を無意識に操る能力があるのじゃよ」


「無意識に……?」


「ワシの感覚としては、冴島君に話している時とこの世界の人間に話している時で、言語を使い分けるようなことはしていない。しかし、喉から声を発する瞬間に、脳が相手に最適化した言語に自動で変換するのだ」


 まるでトラえもんの翻訳ゼリーみたいだ。


「このような特殊能力は喉だけでなく全身にあってな、例えば耳は冴島君の話す日本語を瞬時に翻訳する」


「なんというチート能力……!」


「どうしてワシだけがこの能力を有しているのか気になるじゃろ?」


 異次元すぎてそこまで頭が回っていなかった。

 だが、言われてみればたしかに気になる。


「はい、どうしてですか? 特殊な血というのは一体……?」


「宇宙人の血じゃよ」


「へっ?」


「地球やこの世界のように、人が存在する惑星は他にも無数にある。そうした惑星の中には、地球やこの世界を軽く凌駕する程の文明を築いているものもある」


 俺は何も言わずに耳を傾ける。

 否、何を言えばいいのか分からなかった。

 適切な相槌すら浮かばない。


「宇宙人というのは、ワシらからすると超常的とすら思えることを常識的なものとして行える超文明の世界に住む人間のことじゃ」


 SFチックな話だが、自分の状況を考えると、理解するのは難しくない。


「えっと、じゃあ、長老さんの両親もしくは片方の親が宇宙人ということですか?」


 長老は「いや」と首を振った。


「母親が異世界人と宇宙人のハーフじゃ。生粋の宇宙人は祖父じゃな」


「念のために訊きますが、異世界人というのはこの世界の人のことですよね?」


「そうじゃ。惑星に名称がないせいで紛らわしくなったな。今さらではあるが、便宜的にこの世界を『アルファ』と呼ぼう」


「長老のお母様はアルファ人と宇宙人のハーフということですね」


「そういうことじゃ。父親の両親はアルファ人だから、ワシには四分の一だけ宇宙人の血が流れていることになる」


「その血の恩恵によって、言語を無意識に操れるわけですね」


「さよう。付け加えるなら超人的な記憶力もある。故に、この世界における全ての知識がワシの脳みそに詰まっているというわけじゃ」


「なるほど」


 予想外の展開だったが理解することはできた。

 同時に、再び希望の灯がともり始めているのを感じた。


「長老の祖父である宇宙人はどうやってアルファに来たんですか? 俺たちと同じようにいきなり転移したとか?」


「俺たち? 一人じゃなかったのか」


「あっ」


「冗談じゃ。茂みに仲間が隠れていることは分かっておる」


 長老は「ふっ」と笑い流した。


「すみません。何かあった時の備えでして」


「かまわぬ。それで冴島君の質問に対する答えじゃが、祖父は自力でアルファに来た。具体的にどうやって来たのかは知らぬが、自力であることは間違いない。何故なら祖父はこの島の管理者だったからのう」


「島の管理者?」


「祖父の星の人間、すなわち宇宙人が初めてこの世界に来たのは今から1000年近く前のことでな、その時以降、この島は宇宙人が管理している。どういう経緯でそういう取り決めになったのかは知る由もないが、基本的には相互不干渉じゃ。アルファ人はこの島に近づかないし、宇宙人も他の場所には手を出さないことになっておる」


「長老の祖父はどうやってアルファ人と結婚したのですか?」


「祖母が決まりを破ってこの島に上陸したのがきっかけと聞いておる。単身で島に乗り込んできた祖母に祖父が一目惚れして云々……という話じゃ。当時は大きな問題になったようじゃが、ワシが生まれた頃には既に受け入れられておったから詳しいことは分からぬ」


「なるほど」


 アルファ人と宇宙人のことは分かった。

 トンデモ植生をはじめとするこの島の不思議についても、超文明の宇宙人が管理しているから、と考えれば納得の余地がある。

 というか、そんなものはどうでもよくて――。


「宇宙人に連絡する方法ってありませんか? 俺たちはどうしても地球に帰りたいんです」


 長老の話を聞く限り、宇宙人は理性的だ。

 日本語が通じるのは間違いないし、話すことさえできれば地球に戻れるかもしれない。


「残念ながらこちらから連絡する手段は存在せん」


「そんな……」


「じゃが、向こうから連絡してもらう手段ならなくはない」


お読みいただきありがとうございます。


本作をお楽しみいただけている方は、

下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして

応援してもらえないでしょうか。


多くの方に作品を読んでいただけることが

更新を続けるモチベーションに繋がっていますので、

協力してもらえると大変助かります。


長々と恐縮ですが、

引き続き何卒よろしくお願いいたします。

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