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【コミカライズ】俺だけ余裕の異世界サバイバル ~転移先の無人島で楽しむハーレムライフ~  作者: 絢乃


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081 失敗作

 翌朝、俺は吉乃と二人で海にやってきた。

 麻里奈の作った銛を試すためだ。


「さーて、海の幸を突きまくるぞ!」


 俺は全裸にゴーグルの変態スタイル。


「頑張って」


 吉乃は貫頭衣を着用して砂浜に座っている。

 俺が泳いでいる間に塩の精製を進めてもらう予定だ。


「すまないな、ゴーグルが自分用しかなくて」


「私の分があっても泳がないから大丈夫だよ」


「泳ぐのは嫌いかい?」


「あまり好きなほうではないかな。あと海で泳いだら髪がベトつくでしょ? それが嫌なんだよね」


「なるほど」


 俺は視線をルーベンスとサイに移した。


「ちゃんと吉乃の傍で大人しくしているんだぞ!」


「ガルァ!」


「ブゥ!」


「では行ってくる!」


 銛を持って海に駆け込む。

 10月31日とは思えぬ暑さなだけあって、ひんやりした海水が気持ちいい。


(こりゃすげーな)


 海の中は想像以上の美しさだった。

 外から見ていた時ですら綺麗だったが、今はそれ以上だ。

 綺麗な海を無数の魚が泳いでいて、見ているだけで心が躍る。


 適当に泳ぎ進めていくと、魚が好みそうな岩礁を発見。


 そっと近づいて様子を窺う。

 案の定、獲物が息をひそめていた。

 黒と白の縞模様が特徴的な海魚・イシダイだ。


(さて、銛を試すとしよう)


 イシダイが逃げないよう、最小限の動きで距離を詰めていく。

 まるで海中に漂う大きな岩にでもなったかの如く。


(そろそろ射程圏に入るぞ)


 銛を持ち、穂先をイシダイに向けた。

 イシダイは逃げるどころか近づいてくる。

 俺を生き物と認識していないのだろう。


(今だ!)


 スッと銛を伸ばす。

 その瞬間、イシダイはびっくりして逃走。

 渾身の一突きは空を切った。


(やっぱりそうなるよな)


 その後も何度か試すが結果は惨敗。

 俺は諦めて陸に戻った。


「いやぁダメだった」


「………………」


 吉乃は俺の言葉に反応しなかった。

 土器を包む強力な炎を眺めてぼんやりしている。

 焦点が定まっていなかった。


「考え事かい?」


 吉乃の傍まで行って再び話しかける。


「あ、海斗、ごめん、気づかなかった。考え事をしていたの」


 ハッとして俺を見る吉乃。


「どうかしたのか?」


「兵藤たちのことをちょっとね」


「兵藤?」


「海斗がいなかったら私も彼らと同じように栄養失調で死んでいたなぁって」


「どうだろうな。南の森に行けば俺がいなくても無事だったぜ。ただ隔離されるけどな」


「そういえば、なんで篠塚さんたちは無事なんだろ? 兵藤たちは栄養失調で大変な目に遭ったのに。彼女らも果物しか食べていないでしょ?」


 篠塚とは茜のことだ。


「そりゃゴリラの栄養管理が徹底しているからじゃないか。日によって色々な果物が供給されるとのことだったし」


 巨大ゴリラが支配していた頃、茜たちはゴリラから食糧を受け取っていた。


「ここの動物って本当にすごいね。ところで銛はどうだった? 見た感じ何も獲れなかったみたいだけど」


「まぁ見ての通りだな」


 と笑い、それから続けて理由を説明した。


「やっぱりゴムがないとダメだ」


 普通の銛はゴムの弾性力を利用して獲物を突き刺す。

 しかし、麻里奈の作った銛にはゴムが備わっていなかった。

 そのため、魚を突くには手で「えいや!」と銛を伸ばす必要がある。


 陸上ならそれでも問題ない。

 ただ、水中では抵抗が強まってまともな突きを繰り出せない。

 結果、油断していたイシダイにすら逃げられてしまったわけだ。


「これで麻里奈も納得してくれるね」


「だな」


 この銛でスピアフィッシングができないことは最初から分かっていた。

 それでもわざわざ挑んだのは、麻里奈に頼まれたからだ。

 やってみなけりゃ分からない、と。


「今後はゴムを作って銛を完全版にするの?」


「その予定はないよ。麻里奈がそうしたがっても断るつもりだ」


「そうなんだ?」


「スピアフィッシングにそこまで頑張る価値がないからね。海の魚が食いたけりゃ別の手段を採るさ。漁とか釣りとかね」


 俺はサイの荷台に銛を置き、代わりに石包丁を取った。


「また海に潜るの?」


「おう、今度は海藻を採ってくる」


「了解」


 吉乃との雑談を終え、再び海に潜った。

 ひとくちに海藻といっても、その種類は千差万別だ。

 用途も様々で、サバイバル環境では何かと使い道がある。


(どの海藻を持って帰ろうか)


 広大で綺麗な海を泳ぎながら考える。

 そんな時、海底に黒い異物を発見した。


(なんだ?)


 小魚の群れを突っ切って近づいていく。


(これは!)


 なんと鉄製の中華鍋だった。

 全体的に錆びてはいるものの、変形などはしていない。

 メンテナンスすれば使うことができる。


 俺は迷わず中華鍋を回収。

 手が塞がっているので海藻の調達は諦めた。


「見ろよ吉乃! 中華鍋だぞ!」


 陸に上がるなり鍋を掲げる俺。


「おお! すごい! 海に落ちていたの?」


「そうそう。錆を落とせば普通に使えそうだぞ」


「明日花が喜びそうね」


「絶対に喜ぶぜ! 錆を落とすのは俺の仕事だけどな!」


「あはは」


「とりあえず髪を乾かして体を拭かないとな」


 俺は焚き火の傍で腰を下ろした。

 ドライヤーがないので炎の熱で髪を乾かす。


「体、拭いてあげよっか?」


 吉乃はサイの荷車から俺のタオルを持ってきた。


「おー、気が利くな。でもいいのか?」


「他にすることもないしね」


 という彼女の発言で気づいた。

 いつの間にか荷台に積まれている藁の籠が果物で埋まっている。

 俺が潜っている間に済ませておいたようだ。

 流石である。


「じゃあ頼むよ」


「なら立ってもらえる?」


「はいよ」


 俺は立ち上がり、腰に手を当てた。

 実に偉そうな仁王立ちスタイルである。


 そんな俺の全身を、吉乃が丁寧に拭いていく。

 首から始まり、背中、胸、腰、腹、そして――――……。

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