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【コミカライズ】俺だけ余裕の異世界サバイバル ~転移先の無人島で楽しむハーレムライフ~  作者: 絢乃


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072 前哨戦

 南の縄張りへ進軍することしばらく……。


「お?」


 周囲から動物の気配が消えた。

 前哨戦に巻き込まれないよう、事前に付近の動物を退避させておいたのだ。

 つまり――。


「そろそろ敵の縄張りに入るのか」


 弓を持つ左手に力が入る。


「ここからは歩いていく」


 トラから下りる。

 周囲に警戒しつつ、真っ直ぐ敵の縄張りを目指す。


「思った以上に不利なフィールドだな」


 進めば進む程、熱帯雨林の色合いが強まっていく。

 獣道と呼べるほどの足場すらなく、上から下まで緑で染まっている。

 木々の密集度も高く、普段以上に蒸し暑い。

 どうやっても肩に当たる草木が鬱陶しくてたまらなかった。

 可能な限りここでは戦いたくない。


「鉈がほしいな」


「ガルゥ」


 隣を歩くトラが「同感」と言いたげに鳴く。

 一方、サル軍団はこれまでより快適そうに移動していた。

 樹上で活動する動物にとってはありがたいフィールドのようだ。


「ガルッ!?」


 トラが止まった。

 少し遅れて俺も察知する。


「敵だ!」


 木々が入り組んでいて肉眼では見えない。

 だが、草木の奏でる音から獣が迫り来る気配を感じる。


「グォォ! グォォ!」


 独特の声が森に響く。


「オランウータンっぽいな」


 という俺の読みは当たっていた。

 10頭ほどのオランウータンが木々を飛び移りながらやってきたのだ。

 半円状に展開し、背の高い木に片手でぶら下がっている。

 反対の手にはソフトボールの球のようなサイズ感の石。


「チュイィ!」


 甲高い声で何やら言うと、オランウータンは仕掛けてきた。

 持っている石を投げつけてきたのだ。

 地球だと大人しい性格だが、ここの奴等は違う様子。


 狙われたのは俺とトラだ。


「避けろ!」


「ガルァ!」


 俺は木を盾にして防ぎ、トラは後ろに跳んで回避。


「お前は下がっていろ!」


 トラに命じる。

 高所から攻撃されると、トラに太刀打ちする術はない。

 いても的になるだけだ。


「サル軍団は攻撃だ! やれ!」


「「「ウキィ!」」」


 サルたちが可愛らしい矢を放つ。


「チュイー! チュチュイー!」


 オランウータンは大きな図体を軽々と動かして回避。

 日頃から縄張り争いを繰り広げているだけあって戦い慣れている。

 だが――。


「忘れてもらったら困るぜ!」


 隙を突いて俺も矢を放つ。

 この攻撃は的確にオランウータンの頭を射抜いた。


「グォォ……」


 攻撃を受けたオランウータンが木から落下。

 派手な転落だったが、仕留めきったかは分からない。

 俺の位置からだと姿が見えなかった。


「「「グォ!?」」」


 他のオランウータンが驚いている。


「増援が来る前に敵を殲滅するぞ!」


「「「ウキィ!」」」


 一気に攻勢を掛けていく。

 サルの矢は致命傷になり得ないが、それでも当たると効いていた。

 当たり所にもよるが、10本ほど命中させれば失血死に追い込めそうだ。


「2頭目! 3頭目!」


 俺は隙を突く攻撃に終始し、最小限の矢で仕留めていく。


「「「ウォー! ウキィ! ウォッキィ!」」」


 順調に戦っていると敵の援軍がやってきた。

 今度はチンパンジーだ。


「「「キィ! キィキィ!」」」


 オランウータンよりも機敏で数が多い。

 30匹はいる。


「キィ!」


 チンパンジーが投擲攻撃を開始。

 枝やら何やら手当たり次第に投げてくる。

 狙いは俺――ではなくサル軍団だ。


「ウ、ウキィ!」


 数では勝っているが、旗色は一気に悪くなった。


「チュイー!」


 チンパンジー軍団の登場によってオランウータンも息を吹き返す。

 生き残っている個体が俺に仕掛けてきた。


「これはうざいな……」


 樹上から止めどなく物が飛んでくるのは辛い。

 手頃な物がなくなるとウンコを投げてくるのでこれまた辛い。


「チュイー! チュイー!」


 勢いづいたことでご機嫌そうなオランウータン。


「あんまり舐めるなよ」


 矢筒から三本の矢を抜き、木から身を出して三連射。


「「グォォ……」」


「キィ……」


 オランウータン2頭とチンパンジー1匹を仕留める。

 そこから俺たちの反転攻勢が開始……とはならなかった。


「「「ウホッ! ウホッ!」」」


 敵の主力であるゴリラ軍団が登場したからだ。

 ボスの巨大ゴリラの他、数十頭のゴリラが四足で駆け抜けてくる。

 こいつらは地面を走るようだ。


(奴がボスだな)


 ボスがどいつか一目で分かった。

 1頭だけ5メートルを超す巨体だからだ。

 ヒグマ以上の迫力があった。


「撤退だ!」


 これ以上の戦闘は危険と判断。

 俺は矢で牽制(けんせい)しつつ後退してトラに乗った。


「退け! 退け!」


「「「ウキィ!」」」


 必死に逃げる俺たち。

 一方、巨大ゴリラは追撃してこない。

 先ほどまで俺のいた位置で立ち止まっていた。


「ウホォ! ウホ! ウホォ!」


 巨大ゴリラが胸を叩きながら叫ぶ。

 ドラミングと呼ばれる行為で、これには色々な意味がある。

 今回のケースだと勝ち(どき)のようなニュアンスだろうか。


「「「ウホォ! ウホォ!」」」


「「「キィ! キィ!」」」


 ボスは動かないが、手下どもは違っていた。

 ゴリラ軍団とチンパンジー軍団が追撃してくる。


「ボスは追撃してこないのか」


 この点は本戦に活かせそうだ。


「お? 引き返していった」


 敵の追撃はすぐに終わった。

 追いつけないと見るや諦めたのだ。

 深追いは危険だと判断したのかもしれない。


 なんにせよ、俺たちは無傷で逃げ切ることに成功した。


 ◇


 拠点に戻ると、広場で昼食をとりつつ、女性陣に戦果を報告した。


「思ったよりきつい」


 それが俺の感想だ。


「そんなに?」と吉乃。


「ぶっちゃけ巨大ジャガーのほうがよほど楽だったな」


「ゴリラよりジャガーのほうが強そうなのになぁ」


 千夏はアナグマ肉の串焼きにかぶりつく。


「サシで戦う分にはジャガーのほうが苦しいよ。でも、今回の相手はチームで挑んでくるからな。ボスの巨大ゴリラにしたって、自分の縄張りでは部下を引き連れている」


「どうにかタイマンに持っていけないのかな?」


 明日花がコップに水をついでくれる。


「今のところ難しいな。巨体に反して慎重な奴でな、自分の縄張りからは出ようとしないんだ。そのうえ、部下に追撃させる時もオランウータンだけは自分の傍に置いていたからな」


「するとボスの前にザコを全て倒す感じですかね」と七瀬。


「そういう戦い方になってくるな。こっちの縄張りまで釣り出して、チンパンジーとゴリラの軍団を殲滅。で、反転攻勢に打って出てボスを仕留めるってのが理想的な展開だ」


「言うは易しって感じがするね」


 吉乃のセリフに、「そうなんだよ」と頷く。


「チンパンジーやゴリラは決してザコじゃないし、なにより連携しているからな。チンパンジーが樹上から物を投げつつ、ゴリラが地上戦を仕掛けてくる。ゴリラについては情報が不足しているけど、武器を持っていなかったから肉弾戦の可能性が高いだろうな」


「ならこれから考えるのはおびき出した敵軍団をどう分断するかだね」


「そういうことだ」


 真剣な顔で話し合っていると、突然、千夏が「ぷっ」と吹き出した。


「どうしたんだ?」


「軍団とか地上戦とか、なんか戦争ぽいなぁと思ってさ」


「戦争ぽいというか、戦争をしているわけだしな」


「えっ」


 目をぱちくりさせる千夏。


「俺たちは今、サルを除く類人猿の軍団と戦争をしているんだ」


「マジで!?」


「むしろ今まで気づいていなかったことに驚きだよ私は!」


 麻里奈がため息をついた。

 他の女子も呆れ顔で笑っている。


「千夏の間抜けぶりはさておき、大まかな方向性はまとまった。次は計画を詰めていこう。今回はサバイバルじゃなくて戦争だから俺もズブの素人だ。皆の知識を貸してくれ」


「「「了解!」」」


 その後も話し合い、具体的な作戦を煮詰めていった。

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