表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/141

99 お着替え

 わたしは自分のマジックバッグから木札と筆記用具を取り出し、あいうえお順に文字を書いていった。


 それを見ながら、バーナビーだけでなくディエゴやユルドもウンウン言っている。


 そして、ルオーとのやり取りをバーナビーに任せることを書いた手紙を書いてバーナビーに渡した。


「ありがとうございます。これで引き継ぎができますよ。じゃあ、ユルド。屋敷に裁縫道具を置いておくから、服作りを始めてくれる?」


「ええ、任せて」


 おお。こんなところで、トリー達から買った布が役立つことになるなんてびっくりだよ。買ったはいいけど、仕立てなんてしている時間はなかったからね。


 でも、そうだよね。ディエゴ達にいつまでも毛皮を纏わせておくわけにもいかないし、服は必要だよね。


 服ってどんなふうに仕立てるんだろう?見たいな。気になるよ。


 先にバーナビーが外へ出て行き、ユルドは台所の後片付けをメイド2名に指示してから家を出て行った。


「クロム、ユルドの作業を見て来ていい?」


「ああ、気をつけて行け」


「うん」


 クロムの膝からするりと降り、わたしはユルドを追って隣に建つ屋敷に入った。


 屋敷に入ると食堂のようなスペースでサムサとアリア、そしてメイドさん3名が談笑していた。


 そう、談笑していたのだ!


 え?家にいたメイドさんは話せなかったのに、こっちのメイドさんは話せるの?どうして?


「あ、エル様。どうしたの?」


「うん。ユルドが服を作るっていうから、見に来たの」


「ユルドなら、そこにいるよ」


 サムサが指さした先を見ると、布の山を前にユルドが嬉しそうな顔をしていた。隣にバーナビーもいる。


 バーナビーとユルドは二言、三言話すと、わたしを見つけてこちらへやって来た。


「エル様にお聞きしたいことがあります。これ混ては、その都度、必要な物をリングス商会へ注文していたと聞きました」


「うん。そうだね」


「今後は俺が管理しますので、注文は俺に任せてもらえませんか?」


「いいよ」


「それは助かります」


「いままでは、リングス商会に売ったクロムの鱗や魔物、畑の収穫物を買い取ってもらって、そこから買った物の値段を引く形でやってきたの」


「そうですか。クロム様の鱗………」


「ガンフィの服とか、わたしの服とかいっぱい買ったから、もうお金は残り少ないと思うの。これから、お金、足りるかな?」


「ははっ。どんな服を買ったのか知りませんが、服を買ったぐらいじゃ鱗の価値には及びませんよ。でも、そうですね。お金を稼ぐことも必要ですから、それも考えましょうか」


「いま、服を買ったと言いました!?」


 ユルドが大声で叫ぶと、ズンズン歩いてわたしの前までやって来た。


 こわっ。笑顔がこわいよ!


 思わずバーナビーの脚にしがみつくと、バーナビーに苦笑された。


「ユルド、ほら、エル様が恐がっているから。顔を戻して」


「は!私としたことが、少々、取り乱して申し訳ありません」


 ユルドは服のシワを伸ばすように、腰に巻いた毛皮を手で撫でた。


「エル様?お願いします。いまの流行を知るためにも、服を見せてくださいませ」


 うわ。ゴーレムの上目遣い………こわい。


「だから、普通にしろよ」


 思わずつっこむバーナビー。


 目をギラギラさせたユルドは恐かったけど、いまの流行を知りたい気持ちはわかる。だけど、流行から外れた服を作ったとしても、ここは辺境の黒の森の中だから、見るのはこの村にいる人くらいしかいない。そんなに恥ずかしくないと思うけどな。


「エル様〜。お願いします!」


 とうとう、ユルドは土下座をした。


「わわっ、わかったから!えっと、ここのテーブルに出せばいいのかな?ほら、これだよ」


 と言って、ルオーが送って来た衣類を次々出していく。


 それを見て、ユルドは目をギラリと光らせた。


「質はまあまあですね。染色はそれなり………まあ、いまはこんな可愛らしいデザインなのですか。あら、リボンもありますね。レースはなし、と。レース糸はないのでしょうか?」


 わたしが出した衣類を見てブツブツ言っていたユルドは、ふと顔を上げるとバーナビーを見た。


「お、なんだよ」


「エル様に着替えていただきますので、男性は退出してください」


「ああ、わかった」


「後で足りない物を注文してもらいますから、必ず寄ってくださいね」


「わかってるって。さあ、そこのあんた。サムサ行くぞ」


 バーナビーはサムサを連れて、追い立てられるように屋敷から出て行った。


 そして、人が入って来ないようにアリアとメイド1名が外で見張りに立つことになった。


「さあ、エル様。どの服が一番お似合いになるか、確認してまいりましょう」


「服を身体に当てるの?」


 それなら楽でいいよね。


「とんでもありません。すべて着ていただかないと、細かい部分がわかりませんわ。直しが必要かもしれませんし。さあ、まずはこちらから!」


 というわけで、怒涛の着替えが始まった。

評価、ブックマーク、いいね、ありがとうございます。


励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ