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93 ワームは、小さくなれるらしい

「今回は、メイド5名、騎士5名、合わせて10名のゴーレムを作りました。この者達は名前も知識もなくまっさらな状態ですが、メイド頭のユルドと騎士隊長のヴィルヘルムが一から鍛えて一人前に育てます。これでエル様とクロム様の身の回りのお世話、客人のお世話、そして村の警護をすることができます」


「待って。前にも言ったけど、わたしとクロムにはお世話してくれるギベルシェンがいるの。だから………」


「もちろん、ギベルシェン達の仕事を奪うつもりはありません」


「よかった」


 わたしはほっと胸を撫で下ろした。


「しかし、ギベルシェンは本来、自由気ままな気質を持ちます。仕事をきっちりこなすことには向いていません。ですから、決まった仕事を持たないギベルシェン達には畑仕事を任せることをお勧めいたします」


「そうだな。見張り対象と仲良くおしゃべりして情報を漏らすようでは、難しい仕事はできないだろう」


 たしかに。ギベルシェンかどこまで情報を漏らしたか気になるよ。


「私達、名前持ちのゴーレム5名は以前の仕事を活かし、エル様とクロム様にお仕えさせていただきます。私は執事として、ヴィルヘルムは騎士隊長、アントンは副騎士隊長、バーナビーは食料管理改め物品管理、ユルドがメイド頭です。そしてワームのサシャも、お仕えすると申しております」


 え。あのおっきなワーム、サシャって言うんだ。まるで女の子みたいな名前だね。


「そうは言うが、おまえ達が裏切らないと言えるか?信用できない者達を手元に置くことはできないぞ」


「エル様のお力でこの時代に蘇った我ら一同、エル様に忠誠を捧げております。新たに造ったゴーレムも、エッフェケルン・ベリオス様に誓って決してエル様を裏切ることはございません」


 神様に誓うんだ。でもそれって、どんな意味があるの?


「それをどう証明する」


「信じていただくほかはございません」


 しばらく、そうしてクロムとディエゴは見つめ合っていた。


 にこやかな笑顔を浮かべるディエゴに対して、クロムは険しい顔をしてゴーレム達を睨みつけている。


 やがて、クロムが根負けしたのか深くため息をついた。


「………いいだろう。おまえを認める」


「ありがとうございます」


 そう言うと、ゴーレム達は一糸乱れぬ動きで流れるような礼をした。かっこいい。


「では、村へ行く。と言いたいところだが、そのワームはどうする。その大きさのワームが地中を移動すれば地中が荒れるぞ」


「地上を移動したら、木がなぎ倒されて道ができるにゃん」


 そうだね。大きな道が出来そう。


 サシャはここに置いて行くしかないのかな?


 ワームのサシャは口だけでも直径4メートルほどもあり、離れていてもその大きさに目眩がしそうになる。これだけ大きければ、食料だって沢山必要だよね。いまは魔物狩りで手に入れた肉が大量にあるけど、それでもたった一度の食事で食べられてしまいそう。


 サシャは、いままでどうやって生きてきたんだろう?遠慮なく食べていたら、いまごろは黒の森の魔物がすべて食べられていてもおかしくはない。そうなっていないということは、サシャが食べるのを我慢していたということかな?でも、そんなことできる?


「サシャは身体のサイズを変えることができるのです。サシャ、最小のサイズになってくれますか」


 ディエゴに言われて、サシャは「ギョエエエエ」と鳴いた。


 前にも聞いたけど、可愛くない鳴き声だ。


 ゴゴゴゴゴ!!


 サシャが身をくねらせながら地上に姿を現し始めた。あちらこちらで地面がボコボコと上下し、激しく蠢いている。わたし達の足元からも振動が伝わってくる。


 クロムが無言で浮遊魔法を使い、身体をふわりと宙に浮かせた。地面から10センチほど浮いた位置だ。


「クロム様は魔法の扱いがお上手ですね。その調子で、私共にも浮遊魔法をかけていただけますか?」


「………地中に埋もれてもつまらんしな。いいだろう」


 クロムがそう言うと、揺れる地面の上でバランスをとっていたディエゴ達の身体がふわりと浮かび上がった。こちらは、地面から50センチほど浮いた位置だ。


 ディエゴ達が浮かび上がった直後、彼らの足元の地面が陥没し、サシャが大きな身体を現した。


 見ると、至る所で地面の陥没とサシャの身体が現れるという状態が繰り返されていて、土煙が激しく舞っていた。


 土煙を避けてクロムは上空へと浮かび上がった。


 ディエゴ達も同じ高さに浮かび上がっている。


 足元では、激しく蠢く巨大ミミズの身体と土煙が見える。


 しばらくして土煙が収まったとき、足元の地形が変わっていることに気がついた。地面は深く大きく陥没し、円形の盆地が出来ている。その中央の、一番へこんだ場所にクネクネと動く生き物がいた。まるで「ここにいるよ!」と主張するかのように動いている。


「クロム、あれ、なにかな?」


「ワームだろう。どれ、近くへ行ってみるか」


 そう言うと、クロムは緩やかなスピードで蠢く物の近くへ寄った。


 ちらりと見ると、ディエゴ達も空中から降りてきていた。



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