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92 ディエゴよ、なにが言いたい?

「ランベル、来てくれたんだね」


「当然にゃ。エルを守るのがにゃーの役目だからにゃ」


 ランベルは頭を上げると胸を張った。その仕草が可愛い。


「ありがとう」


「にゃはっ。なんてことないにゃ」


 ランベルのしっぽが左右に揺れている。機嫌がいい証拠だね。


 そんなランベルから離れた場所に、オイクスが立っている。オイクスの表情から、ランベルを怖がっているのがわかる。こんなに大きくて可愛いランベルのどこが怖いんだろう?同じネコ科なんだから、むしろ仲間じゃないのかな。


「オイクス。何の用で来たのか知らんが、話ならサムサかガンフィにしろ」


 クロムがオイクスに声を掛けると、オイクスは話そうとして身を乗り出し、振り向いたランベルに見られて固まった。


「俺達は出かけるところだ。どうしても話したいなら、帰ってからにしろ」


 そう言い捨てると、クロムはわたしを抱きかかえたまま森へ向かって駆け出した。すぐ横をランベルが並走している。木の密集地帯を抜けると、スピードはぐんと上がった。景色がぐんぐん後ろへ流れていく。


「ランベル、森の様子はどうだ。なにか異変はないか?」


 走っている最中だというのに、クロムがランベルに話しかけた。舌、噛まないかな?


「にゃ。魔物が活発に動いているにゃ。ただ、にゃーが村の周囲にマーキングしておいたから、近くに寄ってくる馬鹿はいないにゃん」


 へえ。ランベルはそんなことしてくれていたんだ。長に教えてあげたら喜ぶかな。


「そうか。引き続き、見回りを頼む」


「にゃにゃ?!それは、にゃーについて来るなと言ってるにゃんか?」


 ランベルは耳とヒゲをへにょんと下げて、悲しそうな顔を作った。


「ランベルほど有能な見張りはいないからな。いい働きを期待しているぞ」


 それって、遠回しにランベルについて来るなって言ってるの?


「にゃ〜。でも、にゃーはついて行くにゃん。あいつらがエル様のしもべになれるか、見極めてやるにゃん」


 あいつらって、ディエゴ達のことだよね?わたし、ディエゴ達をしもべにするつもりはなんいんだけど………。


 クロムは自分に逆らったランベルを叱ることもなく、「好きにしろ」とだけ言った。それに対してランベルは、嬉しそうに「にゃん!」と鳴いた。可愛い。


 そんなことをしているうちにクロムとランベルはスピードを落とし始め、開けた場所に出てすぐにぴたりと止まった。


 そこは草も木もない開けた場所で、ワームが掘り返したせいで地面がデコボコしている。広場の中心にはワームが大きな口を開けて鎮座していて、そのワームの前にディエゴ達ゴーレムが立っていた。昨日より数が増えている。


 そして、昨日は裸だったゴーレムが、毛皮を身に着け、手にはなんの鉱石を使ったのか荒削りなナイフのような物を握りしめている。


「クロム様が来た〜」


「エル様もいるよ〜」


「クロム様。疲れたから、もう帰っていい?」


「いいよね?」


 そんな呑気な声が聞こえて見ると、6名のギベルシェン達が近くの木から飛び降りてこちらへ走って来た。いつも元気なギベルシェンだけど、その表情が少し疲れて見える。ゴーレムの見張りがそんなに大変だったのかな。


「ご苦労だった。帰っていいぞ」


「わーい。ありがとう」


 ぶっきらぼうに言うクロムとは対照的に、ギベルシェン達は大喜びして仲良く村へ帰っていった。


「ところで。どうしてゴーレムが増えている」


 ディエゴ達を見つめるクロムの目が冷たい。


 対するディエゴ達はにこやかに微笑んでいて、余裕さえ感じさせる。


「エル様がご不在の間に、少しでも手勢を増やすため努力いたしました」


 ディエゴを中心として立つゴーレム達は、全部で15名いる。昨日は9名だったから、6名増えたことになる。名前持ちのゴーレムが5名、その他が10名だ。そして、名前を持たないその他のゴーレムは男性型が5名、女性型が5名いる。


 男性型のゴーレム5名は背が高く体格がいい。全身鎧を身に着けて、大剣や斧なんかの大きな武器を振り回しても平気そう。


 女性型のゴーレム5名は、人間の女性と同じくらいの背丈ですらりと細身だ。男性型と比べて圧迫感がない。ぱっと見ただけでは、戦いには向かないように見える。


「よくわからないのだけど。ゴーレムを増やしてどうするの?」


「ギベルシェン達に、現在のエル様の状況を聞きました」


「ん?」


 いま、わたしの質問をスルーされた!


 ギベルシェン達は、いったいどんなことをディエゴ達に話したのかな?


「エル様、そしてクロム様が置かれている状況は、とてもおふたりに相応しい状況とは思えません」


 あ、今度はクロムの名前が出てきた。さっきはわたしの名前しか出てこなかったからね。


些事さじに煩わされることなく、快適にお暮らしいただくための環境を整えることは急務であると判断いたしました」


「ふむ。それで、どうするつもりだ」


 あ、クロムが普通に会話してる。


 確かに、いまの状況は行き当たりばったりで良くないと思う。なんだか村の住人がどんどん増えていくし、やることも増えていく。ガンフィのこともほおっておけないし、ルオーとの取引だって必要だ。いまはギベルシェン達が手伝ってくれているけど、必要なことはすべて指示を出さないとやってくれない。


 クロムとわたしがやらないといけないことも多いし、わたしってすごく忙しいよね。



 

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