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82 捕らえた男に会いに行こう

 さすがに疲れた。


 まぶたが重くなってきて、クロムの胸元に顔を擦り付けた。


「もう寝ろ。俺が傍にいるから、なんの問題もない」


「うん………うん。頼りにしてるよ」


 そこまで言ったところで、意識が途切れた。

  

 次に目覚めたとき、わたしは白いモフモフに包まれていた。うわっ。なにこれ?ここはモフモフ天国?モフモフ最高!ふっふーん!


「あぁ、起きたか」


 声が聞こえて左を向くと、左手で頬杖をつき、じっとわたしを見つめるクロムがいた。


 急に嬉しさが込み上げてきて、クロムにぎゅうぎゅう抱きついた。すると、クロムはわたしの背中を優しく撫でてくれた。さらに嬉しくなって、ますます強くクロムに抱きついた。

 

「にゃーもそれして欲しいにゃ」


「えっ。ランベル?!」


 振り向くと、ランベルがベッドの上にいた。白くてモフモフの身体を揺らしている。


「ふふふっ。モフモフの正体はランベルだったんだね。一緒にいてくれてありがとう」


 クロムが手を離してくれたので、ベッドの上で膝立ちになり、伏せているランベルの首に抱きついた。モフモフを堪能し、匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。わたしは、心の底から満足した。


「もう気が済んだだろう。行くぞ」


「どこに?」


 窓の外を見ると、日が落ちて星が見えている。いまは何時頃だろう?


「地下牢に捕らえた人間に、話を聞きに行く」


「そっか。それじゃあ、ガンフィも誘わないとね」


「にゃーも行くにゃ」


 というわけで、わたし達はガンフィの部屋へやって来た。


 空の寸胴とお皿があったので、回収しておく。


 ところで。ランベルにとって部屋の入口は小さいはずなんだけど、難なくスルリと室内に入ってきた。その姿を見たガンフィは、反射的にベッドに立て掛けてあった剣に手を伸ばしたけれど、ランベルが私とクロムにすり寄っている姿を見て警戒を解いた。


「ガンフィ、この子はランベル。フォレストキャットなの」


 ガンフィにランベルを紹介すると、ガンフィはランベルを見上げてお辞儀をした。


「………ランベル殿、はじめまして。私はガンフィです。よろしくお願いします」


「ランベルでいいにゃ。よろしくにゃ」


「なんと!しゃべるのか………クロム様、黒の森では、魔物が話すのは普通なのですか?」


「いや。名持ちの魔物は話せるが、他の魔物は話せない者が多い。それより、地下牢へ行くぞ。用意はいいか」


「はい」

 

 地下牢へ行くだけなのに、ガンフィは剣を持っていくという。まぁ、何が起こるかわからないし、警戒を怠らないのはいいことだよね。


 地下への入口は、1階の奥にある。床にぽっかりと穴が開いていて、地下へと続く果てしない螺旋階段が見えた。ぼんやりと明るいのは、ヒカリゴケのおかげだね。………あれ?階段の終わりが見えないのだけど………これ、どのくらいの深さがあるの?

 

「これは………ずいぶん深くまで減ったのですね。どれくらいの深さがあるのでしょう?」


 それは、わたしが聞きたいよ。

 

「いいから行くぞ」


 クロムが先頭に立って階段を降り始めた。次にランベル、最後にガンフィが続く。


 階段はどこまでも続いていて、終わりが見えない。建物10階分ほど降りたところで、横に通路が現れた。階段はまだ続いている。


 クロムは迷うことなく、横に続く通路へと足を踏み入れた。通路の脇には小さなのぞき窓のついた扉が並んでいて、そのひとつの前にサムテが立っていた。


「クロム様、エル様!来るのが遅いよ。僕、ずーと寝てないんだからね!」


「悪かった」


「ごめんね」


「僕はもう戻っていい?もう、眠くて仕方ないんだ」


 そう言うサムテの目はトロンとしていて、本人が言うように眠そうに見える。


「あぁ。戻って休め」


「ありがとう」


 サムテはフラフラとおぼつかない足取りで去って行った。大丈夫かなぁ。


 クロムは、迷うことなく扉のひとつに手をかけた。軽く魔力を流すと、カチリと小さな音がして扉が開いた。魔力が鍵になっていたのかな?


 室内はベッドとトイレがあるだけで、家具らしき物はなにもない。広さは8畳ほど。以外に広い。ベッドの上にはツタでグルグル巻きにされた男が横たわっていて、身動きはしないものの、起きているのは気配でわかった。 


「クロム様。顔を確認したいので、目と口のツタを取ってもよろしいですか?」


「ああ」


 クロムに許可をもらったガンフィは、剣で顔の周りのツタを切っていく。少しして現れたのは、明るい茶色の髪に、緑の目をしたイケメンだった。その目は、ツタを取り払ったガンフィを見て大きく見開かれている。


「ガノンドロフ殿下!ご無事でしたか!」


「ああ、見ての通りだ。ラーシュ、君に会えて嬉しいよ」


「しかし、これはどういうことですか?なぜ、魔物と行動を共にしているのですか」



 騎士団長はわたしとクロムではなく、ランベルを見ている。その表情は険しい。

 

「ははっ。色々あったんだ。まずは、身体のツタを取ってしまおう。クロム様、よろしいですか?」


「いいだろう」


 クロムの許可を得て、ガンフィは騎士団長の身体に巻き付いたツタを取り始めた。グルグル巻きにされているから、全部とれるまで時間がかかりそうだ。



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