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77 対話

 ガガガガガッ!!


 突然、硬質な何かが連続でぶつかる音が辺りに響いた。


 何だろう?攻撃されてる?


「お嬢様、結界を攻撃されています。反撃してよろしいですか?」


 ゴーレムがわたし達を見上げたまま、そう尋ねてきた。


 結界なんて、いつの間に張ったんだろう?


 目を細めてよく見ると、遺跡のあった場所を囲うようにドーム状の結界が張ってあるのが見えた。その結界の端で、ギベルシェン達がツタを合わせて束にしたものを鋭く尖らせて結界にぶつけていた。


 ランベルもいて、素早く猫パンチを何度も繰り出している。ランベルの動きは速すぎて、集中しないと目で追いきれない。


「あれは味方だ。結界を解け。攻撃もするな」


「私のご主人様はお嬢様です。あなたの命令は聞けません」


 ゴーレムは淡々と答えた。

 

「お嬢様って、わたしのこと?」


「そうです。名を知らぬお嬢様。もう少し近くでお話をしましょう」


 お嬢様なんて言われると、背中がむず痒い。


「エル。話は結界を解いてからだ」


「うん」


 結界の外では今もギベルシェン達やランベルが攻撃を続けていて、森に派手な音が響いている。これは、急いだ方がいい。


「え〜と、ゴーレムさん?」


「私のことはディエゴとお呼びください、名を知らぬお嬢様。お嬢様のことは、何とお呼びすればよろしいですか」


「わたしのことはエ………」


「??」


 あれ?こういう場合、名乗るのは愛称でいいのかな?それとも、正式な名前?


 わたしは、クロムに小声で話しかけた。


「クロム、ディエゴには何て名乗ればいいのかな?愛称?それとも、正式なほう?」


「ディエゴに確認すればよい」


「うん。そうする」


 ディエゴの方を向くと、彼はわたし達の会話が聞こえていたようで、


「お嬢様の愛称と正式な名前の両方を教えてください」


 と言った。耳がいいんだね。


「どうして両方知りたいの?」


「愛称は、普段お呼びする際に必要です。正式な名前は、我らのご主人様としてこの身に刻み込むために必要なのです」


 いま、さらっと怖いこと言わなかった?………まあ、いいか。


「愛称はエル。正式な名前はエルスヴァーンだよ」


 名前を教えると、ディエゴは右の拳で自分の心臓あたりをトントンと叩いた。そこにうっすらと文字が刻まれたけれど、すぐに文字は薄くなり、やがて見えなくなった。


 そのまま見ていると、ディエゴは今度は胸の中央に手を当てた。すると信じられないことに、胸から剣が飛び出してきた。


 ディエゴの胸から飛び出した剣は長剣で、刀身が青く輝いていた。ゆらゆらと、青い魔力が立ち昇っているのが見える。その剣を地面に突き立て、ディエゴは地面に片膝をついた。まるで、騎士がするポーズのよう。………って、初めて見るんだけどね。


「エル様、何なりとご命令ください」


「ディエゴ、結界を解いて。結界の外にいるのは、わたしの仲間なの」


「わかりました」


 返事をした以外に、ディエゴに動きはなかった。でも、結界がドームのてっぺんから消えていく。


 その様子を見たギベルシェン達とランベルは攻撃をやめた。ギベルシェン達はその場で結界が消えるのを待ち、待ち切れないランベルだけが結界を飛び越えてわたし達の下まで駆けてきた。わたしもクロムも無事な様子を見て、嬉しそうにしている。


 ふふふ。ランベルは警戒して毛が膨らんでいるけれど、しっぽがたしんたしんと左右に揺れながら地面を打っている。嬉しさを必死に我慢している様子が可愛い。


 ようやく結界が完全に消えて、ギベルシェン達がこちらに駆けてくるのを見たクロムは、静かに地面に降り立った。


 ディエゴとは少し距離が開いているけれど、ディエゴは動かない。


 ランベルはわたしの前を行ったり来たり。ディエゴへの警戒を解いていない。何かあれば、すぐにでも襲いかかるつもりでいるみたい。


 ギベルシェン達はやって来ると、ロコル=カッツェがわたしの右側に、ロコルナ=ティルリがわたしの左側に立ち、残りのギベルシェン達がクロムの後ろに立った。………あれ、ギベルシェンがひとり足りない。


「ロコルナ=ティルリ、サムテはどうしたの?」


「ああ。サムテなら、森で捕まえた人間をエグファンカ達と一緒に村まで運んでいるよ」


「あんまり手荒な真似はしてない?」


「手荒って?あぁ、乱暴ってこと?う〜ん。どうかな。暴れるからツタで全身グルグル巻きにしてから意識を奪ったけど、それって手荒?」


「ううん。違うよ。そういえば、捕まえたあとはどうするの?村に、誰かを閉じ込めておく場所なんてあったっけ?」


「あの、ガンフィって男が泊まってる家には、空き部屋がいっぱいあるでしょ。あそこの一室に見張りと一緒に閉じ込めておけばいいって、ロコルが言ってたよ」


「そっか。村には牢屋なんてないもんね。わかったよ。ありがとう」


「ところでさぁ。あいつなに?なんでゴーレムのくせに跪いてるの」


 突然、ロコルナ=ティルリがきれいな顔を歪めて、不快感を露わにした。こんな嫌そうな表情は初めて見るよ。



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