表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/141

71

「では、ダイダロスについて詳しいだろう。………見た目はどうだ?どんな男だ?」


「?」


 クロムは、どうしてそんなことを聞くんだろう?騎士団長の見た目が、何と関係があるんだろう?


「ギベルシェン達がダイダロスがどんな男か知っていれば、むやみに攻撃することはないだろう。殺すことなくうまく誘い出して、この村へ連れて来るようにしたほうがよい」


「そうか!………そうですね。ラーシュを味方にできれば心強い。この村まで連れて来てもらえれば、私が説得します」


「ラーシュの背は高く、私よりわずかに低いくらいです。よく鍛えられた身体は体格がよく、自分の身の丈ほどもある大剣を背に担いでいます。年は42歳。短く切り揃えた金の髪に、青い瞳をしています」


「あれ、ガンフィと一緒だね。ガンフィも、髪の色が金色で、瞳が青だよね」


「そうです。我がハノーヴァー王家の色は、金の髪に青い瞳なのです」


「顔もガンフィと似てるの?」


「いいえ。顔は、ラーシュの方が整っていて、かなりハンサムですよ。おかげで、若い頃から女性にモテていましたね」


 王子よりモテる騎士って、どんな人なんだろう?


「アリカ、いま聞いた騎士団長の特徴をギベルシェン達に伝えてくれる?見つけたら、村まで連れて来てほしいの」


「連れてくるのはいいけど、人間の美醜なんてわたし達にはわからないよ?」


「そっか。魔物にとって重要なのは、強さだもんね」


「そうそう」


「じゃあ、人間を見つけたら村まで連れて来て。その後のことは、相手によって考えよう?」


「いやいやいや!エル様、ラーシュかわ来るとは限らないのですよ?さっきも言いましたが、ハノーヴァー国の高位貴族は王家の血を引いている者が多いのです。そして貴族家の次男以降は、騎士団に所属している者も多いのですよ。村に連れて来た人間が、中立ならまだしも、敵側の者だったらどうするのか!」


 わたしとアリカの会話を聞いていたガンフィが、慌てて話に割り込んできた。


 敵側の者だったらどうするのか?


 確かに、ガンフィの言うとおりだね。


「それなら、連れて来た人間は、森に家を建ててそこに閉じ込めておけばいいんじゃない?」


「森に?」


「そう。森ならクロムの結界がないから魔物が寄ってくるけど、ガンフィを追いかけて来るような騎士なら、魔物くらい平気だよね?」


「それは………騎士なら、魔物くらい平気でしょうが、どうやって閉じ込めるおつもりで?」


「ふふんっ。家は、地下に建てるの。あとは、ギベルシェンに見張りをしてもらえば逃げられないよ」


「なるほど。地下か。エル、よく考えたな」


 クロムに褒められて、わたしは嬉しくなった。


 とっさの思いつきだったけれど、結果オーライというやつだ。


「まあ、何にしても、ラーシュかどうか、見分けてもらえたらありがたい」


「どうやって?金髪で青い瞳の騎士はいっぱいいるんじゃないの?」


「それはそうですが。身の丈ほどの大剣を、自らの身体の一部のように扱えるのはラーシュだけです。一度戦ってみれば、ラーシュかどうか判断がつくはすですよ」


「わかったわ。おっきい剣を持ってる強い剣士を連れて来ればいいんでしょ。任せて」


 そう言って、アリカはガンフィが止める間もなく寝室を出て行った。


 ガンフィは何か言おうとしたのか、アリカに向かって手を上げたまましばらく固まっていたけれど、諦めたようなため息をついて手を降ろした。


 話は済んだので、ガンフィを残してわたしとクロムは家へ帰って来て。サムサはいなかったけれど、台所はきれいに片付いていた。


 家の居間には、木箱がふたつ置かれていた。台所にも、木箱がひとつ置かれている。サムスが洞窟から運んでくれたのかな。


 クロムに下に降ろしてもらい、台所へ行って木箱の蓋を開けた。中には大量の砂糖やバター等が入っていて、見た瞬間に嬉しくなった。


 やった!これだけあれば、色々作れるよ。


 木箱に入っていた物を、すべてマジックバッグにしまった。マジックバッグの中は時間が停止しているから、中の物が腐ることはない。


 そして、木箱の底には、わたしが欲しかった泡だて器が布に包まれて入っていた。


「なんだそれは?」


「泡だて器だよ!これがあれば、お菓子作りがうんと楽にできるの。本当に嬉しい!」


「そうか。良かったな」


 お菓子と聞いて、クロムと笑顔になった。


「うん!あっちは、何が入っているのかな?」


 小走りで居間に戻り、ひとつ目の木箱を開けた。その中には、大量の色とりどりの布が入っていた。


「??」


 1枚取り出して広げてみると、それは服だった。大きさからいって、わたしの服。綿でできた、たぶん裕福な平民の子が着る服で、フリルやレース、刺繍などで飾り付けられている。手触りもいい。生地はきれいに染色されていて、服のセンスのないわたしでも、おしゃれな服だとわかる。女の子らしい水色の可愛いワンピースは、フリルのついた袖が特徴的で、後ろのスリットからは繊細なレースが覗いている。裾には、丁寧に刺繍が施されていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ