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 わたしの場合は、卵の殻の中にいるのは退屈だった。クロムが運んで来る魔物を食べて、寝て、クロムの話を聞く毎日はそれなりに充実していたけれど、今になって思うと、退屈していたんだと思う。


 だからガンフィも、退屈しているんじゃないかと思ったの。


「わかりました。行かせてください」


「うん!一緒に行こうね」


「では。一旦、家に帰って夕食の用意をするか」


「ふふふ。じゃあ、オニオンスープを完成させるね。………メインは何がいいかな」


 夕食の時間まで、もうそんなに時間はないんだよね。簡単に、肉野菜炒めにしようかな?


 あ、それとも、オーク肉を使って村全体で宴会でもする?


 ………いや、やっぱり宴会はやらなくていい。わたしには、そこまでの社交性はないもん。


 クロムに抱かれて家に帰ると、下に降ろしてもらい、さっそくオニオンスープの仕上げをすることにした。

  

 マジックバッグからオニオンスープが入った鍋を取り出し、コンロに置く。きれいな飴色玉ねぎに水を注ぎ、火にかける。


 スープを温めている間に、パンとチーズの用意をしよう。


 スープの器をテーブルに並べ、その隣で硬いパンをスライスしては器に並べていく。チーズは………スープを注いでからでいいか。


 そうだ。オーブンを温めておかなくちゃ。


 オーブンのスイッチを入れて、スープ鍋を覗き込む。ふつふつと煮立ってきていたので、塩、こしょうで味を整えて火を消す。


 次に、地下の食料庫からキャベツ、玉ねぎ、ピーマンを持って来て、それぞれ食べやすい大きさに切っていく。


 肉は………豚肉でいいか。


 マジックバッグを漁り、豚肉の塊を取り出した。


 あ、とんかつもいいかも!


 突然閃いた思いつきに、よだれが出そう。


 ふふふ。とんかついいね!明日は、とんかつにしよう。


 明日のメニューが決まって嬉しくなったわたしは、ニコニコ顔のまま必要な肉を塊から切り出し、残りの肉をマジックバッグにしまった。切り出した肉は薄くスライスして、食べやすいようにひと口サイズに切り分けておく。


 オーブンが温まったので、パンが入ったスープ皿にオニオンスープを注ぎ、チーズを乗せてオーブンへ入れた。


 それからフライパンを出し、先に野菜を炒める。野菜が少ししんなりしたところで肉をほぐしながら投入し

全体を炒めていく。………そうだ、味付けはどうしよう。まあ、適当でいっか。


 わたしはマジックバッグを漁り、スパイスを適当にフライパンへ入れた。簡単な料理だし、おかしな味になることはないと思う。


 大皿に肉野菜炒めを盛りつけ、すぐにマジックバッグへしまった。


 そしてオニオンスープが完成したので、そちらもマジックバッグへしまう。


 最後に、パンをスライスしておく。硬いから、そのままだと食べづらいんだよね。


 後片付けはサムサがしてくれると言うので、後片付けをサムサに任せてガンフィの部屋へ向かう。もちろん、移動はクロムの腕の中。


 クロムってば、わたしを甘やかしすぎだよね。


 ガンフィの部屋に着いたら、テーブルにお皿やカラトリーを並べる。その様子を、ガンフィは目を輝かせて見ていた。ふふふ。子供みたい。


「これは何ですか?」


「こっちのチーズが乗っているのがオニオンスープだよ。熱いから気をつけてね」


「ほう。あの玉ねぎが、こうなるのか」


 クロムは、自分が丁寧に炒めた玉ねぎがスープになったことに感動しているようだ。


「スープより先に、肉野菜炒めから食べるといいよ。あと、パンもあるからね」


「ふむ。これは、スパイスを使ったのか。複雑な味がする。美味いぞ」


 肉野菜炒めに手を付けたクロムが、嬉しそうに顔をほころばせた。


「美味い!なんだこれ?これが肉野菜炒め??」


 思わず素で驚いたガンフィ。驚きつつも、食べる手は止めない。


 ふたりとも気に入ってくれたみたいでよかった。


 目の前の肉野菜炒めを食べ終わると、クロムはオニオンスープに手を伸ばした。


「ん?甘いな。これは、玉ねぎの甘さなのか?」


 わたしが料理するところを見ていたクロムは、わたしがスープに余計な物を加えていないことを知っている。だから、オニオンスープのコクのある味わいに驚いたみたい。


「オニオンスープというわりには、玉ねぎの姿が見えませんが………これは、浸したパンに旨味が移り、上に乗せたチーズがとろりと溶けてさらに旨味が増している。本当に美味しい!」


 時間を置いたおかげで、オニオンスープは食べやすい熱さになっていたみたい。ガンフィはスープをバクバクと食べている。気持ちの良い食べっぷりだ。


 スープを食べたあとは、残っていた肉野菜炒めとパンを食べるクロムとガンフィ。大量に作ったはずの料理は、ふたりのお腹に消えていった。


 と、そのとき、廊下を歩いて来る足音が聞こえたかと思ったら、ノックもなく部屋の扉が開いた。


「エル様、みーつけた!」


 そこにいたのは、サムスだった。洞窟の魔法陣で見張りをしてくれていたはずだけど、何の用だろう?何も持っていないから、手紙や物を届けに来てくれたわけじゃないよね?



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