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68 エッフェケルン・ベリオス

「………だが、私は生きています」


「たまたまエグファンカ達が森にいたおかげでね」


「そうだ。本来なら、ガンフィは死ぬはずだった」


 ガンフィは、たまたまエグファンカ達がわたしの仲間になっていて、たまたま森に採蜜に行っていたから助けることができたの。


 わたしとクロムがこの村に居なければ、ギベルシェンと出会うこともなかったし、エグファンカ達が仲間になることもなかった。


 そもそも、わたしが卵の殻を破らなければ寝床は地底湖にはなっていないし、わたしとクロムがこの村に滞在することもなかった。


 わたしという存在は、ガンフィに死んで欲しい人物にとって予想外の存在で。ひとつの要素でも欠けていれば、ガンフィは死んでいた。


 ガンフィはクロムが言った「森で死ぬはずだった」という言葉を噛み締めている。


「ですが、そうなると………私に毒を盛ったのは王妃でもミルドレッド姉上でもなく、陛下ということになりはしないでしょか?そんな………そんなことは、エーベ神に誓ってあり得ない!」


「ん?」


 エーベ神?そんな名前の神様、聞いたことないよ?この世界の神様はひとりでしょ?


「エーベ神って誰?」


「エル。エーベは神の名だ。正式にはエッフェケルン・ベリオス。略するとエーベとなる」


 それでわかった。


 エッフェケルン・ベリオスは、この世界の創世神で女神様。この世界にとって、唯一の神様だよ。


 ガンフィを見ると、彼はきょとんとした顔をしている。クロムの言ったことが理解できなかったのかな?


「ええと、えっふぇ………」


「エッフェケルン・ベリオスだ。人間は、神の名も忘れたのか?」


「エッフェケルン・ベリオスだなんて、初めて聞きましたよ!エーベ教の総本山であるオスコローザ国でさえ、神の名はエーベだと説いていますし、世界中で崇められているのはエーベ神ですよ」


「ふむ。長い年月の間に、略称が広まったのだろう」


「はあっ?!」


 ガンフィは驚き、愕然とした。信じていたことが思わぬ形で裏切られて、ショックを受けたのかもしれない。


 でも、神様にとってはエッフェケルン・ベリオスでも、エーベでも、呼び方はどちらでもいいんじゃないかな?信仰しているのは変わらないよね?


「しかし、どうしてクロム様は神の名を知っているんですか?」


「俺の親はエッフェケルン・ベリオスだ。親の名を知っていて当然だろう」


「はぁぁぁあ?!」


「それに、1000年ほど昔は、人間も神の名を省略せずに呼んでいた。そのうち、長いので面倒になったのだろう。神は、呼び名くらいで怒ることはないぞ。エーベのままで問題はなかろう。ちなみに、俺はベリオスと呼んでいる」


「いやいやいや!」


「く、クロム?クロムは神様の子なの?」


「何を驚いている。ベリオスは創世神だ。この世界を創り出した神だぞ?魔物や人間、植物、鉱物………ありとあらゆる存在を生み出している。この世界に存在するものは、等しくベリオスを親に持つ子、または子孫というわけだ」


「そうなんだ?じゃあ、わたしは神様の孫………でいいのかな?」


「まあ、そうなるな」


「ちょっと待ってください!そうなると、クロム様は創世記から生きているということになるのですが………」


 ガンフィが目を大きく見開いて、クロムを驚愕の表情手見つめている。

 

 うん?創世記?それってつまり、世界の始まりだよね?クロムは、そんな大昔から生きているってこと?!いったい、クロムは何歳なの?!


「………そこまで、おまえに話すつもりはない」


「そ、そうですよね………」


 クロムに冷たく言われて、ガンフィは肩を落とした。


 そっか。クロムだって、話したくないことはあるよね。


「………話を戻すぞ。エルは、ガンフィに毒を盛った人物が、ガンフィが魔法陣を使ってこの森の遺跡へ行くよう誘導した可能性について言っている。………可能性がないとは言えんだろう?」


「はい………ええ、そうですね。………あ、すみません」


 クロムに身振りで椅子に座るよう言われて、ガンフィは席に着いた。

 

「あのね。明日、遺跡へ行って遺跡や魔法陣を調べる予定なの。ガンフィも一緒に行く?」


「え?それは………」


 ガンフィは、まだ身体が治り切っていない。足手まといにならないか、心配しているのが表情から伝わってくる。


 でも大丈夫。わたし達には、フォレストキャットのランベルという新しい仲間がいるからね。ランベルなら、ガンフィが乗っても軽々と走ってくれると思う。


「ガンフィはフォレストキャットを知ってる?さっき仲間になってくれたんだよ?」

 

「は?フォレストキャットが?あの狂暴な魔物が、エル様の仲間に??」


 ガンフィが混乱しているのが見て取れた。でもすぐに立ち直り、「そういうこともあるか」と呟いた。


「フォレストキャットのランベルなら、ガンフィを乗せて走れると思うの。だから、ガンフィにその気があれば、一緒に遺跡に行こうよ。ガンフィの国の人間が指示して作らせた魔法陣だから、ガンフィにしか気付けない何があるかもしれないし。ずっと部屋に籠もっているのも退屈でしょ?」





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