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62 フォレストキャット

「フォレストキャットか」


「あれは猫なの?」


「そうだ」


「にゃ〜ん」


「あ、フォレストキャットが返事した!」


 フォレストキャットはわたし達の前までやって来るとスピードを落とし、腰を低くしてクロムの腕の中にいるわたしに目線を合わせた。赤い宝石のような2つの目が、わたしを見つめてくる。そしてスンスンと鼻を鳴らし、わたしの匂いを嗅いだ。


「にゃん?」


 フォレストキャットは何かを確かめるように、わたしとクロムの周りをグルグルと回った。


「にゃにゃ!」


 猫語はわからないけれど、フォレストキャットが興奮しているのはわかった。目を大きく見開き、口を開いた。


 クロムが警戒していないから大丈夫なんだと思うけど、間近で大きく口を開けた猫がいると迫力があるし、ドキドキする。


 ぺろんっ。


「ひゃっ」


 頬を舐められた!


 フォレストキャットの舌はザラザラしてて、舐められたところがちょっと痛かった。


「にゃにゃ〜」


「クロム、このフォレストキャットは何て言っているのかな?」


「エル、話がしたければ念話を使えばいい」


「そっか!念話なら、フォレストキャットとも話ができるよね」


 わたしは目の前のフォレストキャットに集中し、意識を繋ぐように心がけた。


『聞こえる?』


『にゃ〜ん。やっと話ができるにゃん』


 やった!フォレストキャットと念話ができた。


『おまえ、何者にゃん?おまえから美味しい匂いがするにゃん』


『え、美味しい匂い………?わたしを食べるの!?』


『違うにゃん。ずっと嗅いでいたい匂いがするにゃん。食べたら、そこでおしまいにゃん。食べるわけないにゃん』


 言いながら、フォレストキャットは鼻をスンスン鳴らしている。


『わたしはエル。アムナートの娘だよ』


『にゃにゃ!アムナート様の娘!?どういうことにゃ?』


『わたしはアムナートの魔素溜まりから生まれたの』


『なるほどにゃ〜。それじゃあ、アムナート様の娘と言えなくもないにゃ。だけど、エルはすごく弱そうにゃ』


『うん。たぶん、すごく弱いよ。人間の子供くらいの力しかないもん』


『仕方ないにゃ。それなら、にゃ〜が守ってやるにゃん』


『え?』


『にゃ〜に名前をつけるにゃん。それで、絆ができるにゃん。絆があれば、どこへでも助けに行けるにゃん』


 名前を付けたら絆ができるの?でも、会ったばかりのフォレストキャットにそんなことしてもいいの?


「クロム、フォレストキャットが名前を付けてって言っているの。どうしよう」


「何を迷うことがある。こう見えて、フォレストキャットはそれなりに強い。絆ができれば、エルを守ってくれるぞ」


『そうにゃ。にゃ〜は強いんにゃ。そこのギベルシェンよりも強いんにゃ。頼ればいいにゃ』


 フォレストキャットが頭を擦り寄せてきて、フワフワ出気持ちいい被毛にうっとりとなった。またこのモフモフを味わえるなら、名前を付けてもいいかな?


『でも、どうしてわたしを守ってくれるの?アムナートの娘だから?』


『ん〜、にゃ〜の気まぐれにゃ。エルは、目を離せば簡単に死んじゃいそうだからにゃ。ずっと傍にいて、守る者が必要にゃん』


『でも………』


『エルは、にゃ〜じゃ不満かにゃ?』


『そんなことないよ。あなたが一緒にいてくれたら嬉しいよ』


 またモフりたいもん。


『だったら名前を付けて、絆を結ぶにゃん』


『うん。わかった』


 ここまで言われたら断れないよ。


『名前は………ランベルでどうかな?』


『それ、いいにゃん!』


 ランベルが同意すると、わたし達の間に絆が結ばれた感じがした。


 ランベルが嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らした。


「エル、これからよろしくだにゃん」


 念話ではなく、声に出してランベルがしゃべった。………え、しゃべれるの?絆を結んだから?


 ところで。ランベルがしゃべったところで、ここに驚く人は誰もいない。クロムもギベルシェン達も魔物だけどしゃべれるから、ランベルがしゃべっても不思議に思わないの?


「それで。これからどうするにゃんか?」


「そこに倒れている魔物をマジックバッグにしまって、村の解体小屋に運ぶの。収納を持っているのはわたしとクロムだけだから、頑張るね」


「それなら、にゃんが手伝うにゃん。死体を一か所に集めて、まとめて収納すればいいにゃん」


 そう言うと、ランベルは前足で転がっている魔物の死体を猫パンチで一か所に集め始めた。ひょいひょいと空中を舞う魔物の死体。あっという間に死体の山ができ、最後の死体が宙を舞ったあと、ランベルがわたしを振り返りドヤ顔をした。ふふふ。可愛い。


 ランベルの頭を撫でてあげると、ランベルは満足そうに目を細めて喉をゴロゴロ鳴らした。


「あとは俺がやる」


 クロムが死体の山に向かって手を伸ばすと、一瞬でその山が消えてしまった。


「すごい。どうやったの?触ってもいなかったよね?」


「俺くらいになると、触れずにアイテムボックスを発動させることができるのだ」


「わあ。クロムすごいね」


 わたしもいつか、アイテムボックスが使えるようになりたいな。そうしたら、物を運ぶのが楽になるよね。



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