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 じゃあ、どうしたらオークを食べられるようになるかな?魔法陣で送って、アルトーの街で解体してもらってから送り返してもらう?でもそれって、お金も時間もかかりそうだよね。


 そうだ!黒の森で暮らしている村なんだから、解体くらいできる人がいるはずだよね。そうじゃなきゃ、獲物を狩って食べるなんてできないんだから。


「クロム、長の所へ行ってきていい?村人がオークを解体できるか知りたいの」


「知ってどうする」


「もちろん、解体してもらうんだよ。だって、オークは美味しいんでしょ?でも、解体してもらわないと料理できないから、お願いしたいの」


「いいだろう。俺も行く」


「ありがとう」


「ふふっ。私も行きますよ。長の後で、遺跡へご案内いたします。オークを運んでいただかなくてはいけませんからね」


 ロコル=カッツェはオーク肉を食べることを楽しみにしているのか、嬉しそうだ。


 テーブルの上を片付けてから、長の所へ向かうことになった。


 ごはんをいっぱい食べたからか、それとも身体が回復してきたのか知らないけれど、ガンフィの足取りは朝よりしっかりしている。これなら、誰かが支えなくてもひとりで歩けそう。


 ふと、手紙を書いたことを思い出してアリカに預けた。魔法陣から転送してもらうように頼んだから、手紙は大丈夫。


 長の家に行き、扉をノックしようとして手を止めた。力加減を間違えたら壊れてしまいそうなほどボロなんだもの。ノックの代わりに、声を張り上げる。


「こんにちは。エルだよ。長はいる?」


 声をかけると、足音がして、扉が開いた。現れたのは長ではなくてオイクスだった。


「何の用だ」


「ギベルシェン達がオークの巣を潰したの。だからオーク丿死体がいっぱいあるんだけど、解体できる人がいないの。誰か、解体できる人を紹介してくれない?もちろん、手数料は払うよ」


「は?オークの巣を潰しただと?」


 オイクスの普段の仏頂面が、驚きのためか、口をぽかんと開けた姿がアホ面に見える。


「ざっと80匹はいましたね」


「ロコル=カッツェ、それは群れとして多いの?少ないの?」


「オークの群れとしては普通です。上位種もいませんでしたし、討伐は簡単ですよ」


 そうか。オークの群れで80匹は普通なんだ。それを平然と狩ってしまうギベルシェン達は、普通なのかな?


「なにが、普通だ!80匹もいて、普通なわけないだろ。普通って言うのは、せいぜい15匹くらいまでの群れだ」


「え、そうなの?」


「当たり前だ。そんなことも知らないのか?」


 オイクスが馬鹿にした様子でわたしを見下ろしてきたけど、クロムに睨まれてその大きな身体を小さくした。


 それにしても。オークが80匹もいて、ガンフィはよく逃げ出せたね。逃げ足が速かったのかと思うけど、その時は毒に侵されていたんだから、足元だって覚束なかった可能性がある。剣一本でオークの巣から逃げ出すのは、剣の腕だけじゃなくて、なにか技能が必要な気がするよ。


 オークがガンフィを追うのを諦めたのは、どうしてだろう?目の前に獲物が、それも弱った獲物がいたら狙うと思うんだけどな。………もしかして、毒に侵されていたから?毒の匂いを嗅ぎ取って、それで嫌がったのかもしれない。


 でも、しつこく追ってきた魔物が一匹いたって言っていたよね。それもオークだったのかな?


「それで。解体はできるのか、できないのか、どっちなのだ?」


 オイクスがちらりと後ろに目をやると、長が戸口にやって来た。


「もちろん、解体できます。黒の森に暮らす者として、生きていくために狩りと解体は子どものうちから教えますからな」


「それはすごいな」


 そうだね、ガンフィ。わたしもそう思う。


「生きるための技能を身に着けさせるのは、年長者として当たり前のことです」


「では、オークの解体をしてもらおう。報酬は、オーク5匹だ」


「「オーク5匹!?」」


 長とオイクスの声が揃った。


「………なんだ、不満か。ならば………」


「不満などとんでもない!それだけ頂ければ、村の者が4ヶ月は暮らせます。ありがとうございます」


 どういうこと?オークは食べられるから、食料にするのはわかるよ。でも、4ヶ月も経ったら腐るよね?う〜ん………そうか!干し肉にするのか!干し肉にしておいて、トリー達商隊が来たときに売るのかもしれない。なるほどね。それなら、村にとって貴重な現金収入の機会になるね。


 でもそれなら、魔法陣を使わせてあげてもいいな。だってトリー達が来るのは約2ヶ月後でしょ?いくら干し肉にしていても、オーク肉が傷んじゃうんじゃないかな。


「そうか。ならばよい。だが、どこで解体するのだ?村の広場か?」


「そうですね。広場には井戸がありますし………」


「待って!広場でオークを80匹も解体したら、オークの血が地面に染み込んじゃうよ。そんなことになったら、井戸にオークの血が入り込むかもしれないよ」


 わたしの言葉を聞いて、長とオイクスは顔色を青くした。


「わたしが解体小屋を作ってあげるよ。ついでに保管庫も」


「え?」

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