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「本当に、俺が全部食べていいんだな?」


「いいよ。今日のクロムは、スープ作りを頑張ってくれたからね。お昼までまだ時間があるから、これからクッキー。作るね。クロムはゆっくりリンゴケーキを味わっていて」


「クッキー?それは菓子か?」


「そうだよ。時間のあるときに作っておかないと、食べられないでしょ?」


「それはそうだが………エル、クッキーを作っている時間はなさそうだぞ」


 そう言って、クロムはリンゴケーキをアイテムボックスにしまった。


 疑問に思っていると、玄関の扉が開いてロコル=カッツェが入ってきた。クロムは、ロコル=カッツェが来ることがわかってたの?どうやって?


 ロコル=カッツェはクロムとわたしを見ると、軽く微笑んだ。


「いい匂いがしますね」


「………」


 う〜ん。笑顔が怖い。これは、食べ物を催促されてるのかな?


「お昼ごはんを作っていたんだよ。わたし達は食べなくても平気だけど、ガンフィは違うからね」


「そうですか。ちょうどいい時に来たようですね」


 やっぱり、食べ物を催促されてる………?


「森の様子はどうだったの?異変はなかった?遺跡は見つかった?」


 わたしは、話を逸らしてみた。


 ロコル=カッツェは不快そうな笑顔という、なんとも言えない表情をした。


「こほん。遺跡は見つけました。オーク共が群れていたので、簡単に見つかりましたよ。狩りは他の者に任せて、私は報告に戻ってきたのです」


「この短時間で見つけるなんて、ロコル=カッツェはすごいね」


 正直に言うと、ロコル=カッツェの表情が緩んだ。わたしが本心から言っているのが伝わったんだと思う。


「それで、狩りってことは、オークを仕留めているっていうこと?オークは食べるの?」


 オークはクロムの洞窟にはいなかったから食べたことはないけど、食べられたはず。それなら、無駄に捨てて来るより、運んで来たほうがいいよね。ギベルシェン達なら運べるかな?


「オークは美味いぞ。よし、取りに行くぞ」


 ロコル=カッツェではなく、クロムが答えた。


「では、私がご案内します。ごはんを頂いた後に」


「う〜ん。そうだね。ごはんの前に血なまぐさい物を見ることはないよね。それに、遺跡まで行っていたら、ガンフィがお腹を空かせそう」


 というわけで、遺跡へ行く前にガンフィの所でお昼ごはんを食べることになった。


 わたしはコーンスープと茶色玉ねぎの寸胴やポテトサラダ等をマジックバッグにしまい、台所を手早く片付けた。


 ガンフィの部屋へ行くと、ガンフィが笑顔で迎えてくれた。


「いらっしゃいませ。クロム様、エル様。そして、そちらの方は?」


「ロコル=カッツェ。ギベルシェンの長だ」


名持ネームドちの魔物ですと………?」


「そうですよ。我が名はエル様にいただいたもの。素晴らしいでしょう?」


「ええ、素晴らしいですが、そういえばアリカとサムソもギベルシェンでしたね。ギベルシェンにとって、ネームドであることは普通なのですか?」


「違います。私は長としての呼称を得ていましたが、名前を得たのはエル様のおかげです。群れの者はエル様の慈悲によってすべての者が名を得ましたが、通常は他の魔物と同じく名前を持ちません」


 わたしの慈悲って………ただ、ギベルシェンを判別したり呼んだりするのに名前が必要だったからつけただけで、そんな大げさなものじゃないのに。


 名持ちの魔物ってことは、特別なことなのかな?


「エル、そろそろ食事にしよう。出してくれ」


「あ、うん」


 わたしが深く考えるより先に、クロムに声をかけられた。


 ただ、テーブルを4人で囲んで料理ごとにお皿を並べるとなると、テーブルが少し狭い。そこで、ハンバーグとポテトサラダは同じお皿に盛り付け、テーブルの中央には、山のようなおかわり用のハンバーグのお皿を置いた。お上品じゃないけど、いいよね。スープは、オニオンスープは作りかけなので、予定通りコーンスープを出した。


 わたしは大量の料理を作ってお腹いっぱいな気分だったので、先にコーンスープから口をつけた。うん。粒が少し残っていて、でもなめやかで美味しい。今度はじゃがいもでポタージュスープでも作ろうかな?あ、でも、やっぱりコンソメスープがいるんだよね。ぐぬぬっ。コンソメスープめ!


 わたしがひとり悶えている間に、ハンバーグの山は怒涛の勢いで3人の男達に食べ尽くされた。ガンフィ以外の2人は魔物だから、食事の必要なんてないのに。


 ………これだけ食べられるなら、ガンフィは夜ごはんにステーキを食べられるかな?


 なんてことを考えているのは、ごはんのメニューを考えるのが大変だから。どこかに料理人落ちてないかな?


 そういえば。ギベルシェン達が狩ったオークはどれくらいいたんだろう?マジックバッグがあるから保存だけは大丈夫だけど、わたしは魔物どころか動物も解体できない。卵に入っていた頃は、卵が魔物を消化吸収してくれたから、解体する必要なんてなかったしね。


 わたしが現れるまでは禄に料理を食べたこともなかったクロムがオークを解体できるとは思えないし。それはギベルシェン達も一緒。

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