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54 私は食べない!

「あ、その顔は!私にいてほしくないの?私は邪魔?」


 わたしの心を読んだのか、アリアが悲しそうな顔をした。


「違うよ!アリアはすぐにエグファンカを見つけて来たし、捜索の能力は高いんじゃないかと思ったの。だから、怪しい者がいればすぐに見つけられるんじゃないかと思って………」


「そうね。探すのは得意よ」


 アリアは自慢するように胸を張る。


「やっぱり!ねえ、お願い。ロコルナ=ティルリを手伝ってあげて」


「仕方ないわね。エグファンカ達を連れて行っていい?」


「うん?なんでエグファンカ達?」


「エグファンカ達はこの森に詳しいからね。それに、けっこう使えるのよ」


「よくわからないけど、任せるよ」


「任せて。じゃあ、行くわね」


 そう言って、アリアはサムサを連れて家を出て行った。


 アリア達を見送って、わたしはすぐにピザを焼き始めた。


 までは良かったんだけど、ふと考えた。わたしとクロムは、べつにピザを食べなくてもお腹は空かないし、疲れても自然に回復する。でもガンフィは人間だから食事は必要で、さらに血を流しすぎているから栄養のある物が必要。ということは、ここでクロムにピザを食べてもらってからガンフィの所へ行くより、ガンフィの所へ持って行って一緒に食べたほうがいいんじゃない?そのほうが、ガンフィは早くピザを食べられるよね。


「あのね、クロム。ピザを食べるのはガンフィと一緒でもいい?」


「なぜだ」


「ガンフィがお腹を空かせているみたいだから、ピザを早く持って行ってあげたいの。その代わり、ケーキを全部食べていいから、いいでしょ?」


「………本当だな?」


「………え?」


 クロムの目つきが怖い。


「ケーキを全部食べていいんだな?」


「う、うん」


「なら、いいだろう。ケーキは貰っていくぞ」


 クロムはまな板ごとアイテムボックスへしまった。そんなにケーキが好きだったのかな?嬉しくて堪らない、という顔をしている。


 それはいいんだけど、まな板は返してくれないかな?………まだあるから、いまはいいけど。


 ピザが焼き上がるまでに、少し時間がかかる。アリカに鳥ガラスープを持たせて、先にガンフィの所へ行ってもらった。


 それから次々ピザを焼き、焼けるたびにマジックバッグにしまっていった。すべてのピザが焼けたところで、クロムと一緒に家を出た。さっきサムサが運んできてくれた木箱と手紙を、マジックバッグにしまってからね。


 家の前にある村の畑には、まだ村人がいない。誰も畑仕事をしていないなんて、皆のんびりだね。今頃、朝ごはんでも食べてるのかな?


 隣りにある家に入り、ガンフィがいる部屋に向かう。


 部屋には、ちょうどスープを飲み終えたガンフィと、スープ皿を片付けようとするアリカがいた。


「あ、クロム様、エル様、おはようございます」


「うむ」


 クロムは尊大な様子で頷いた。もう少し、優しくしてあげてもいいのに。


「おはよう、ガンフィ。ピザ持ってきたよ」


「ピザですか?」


「うん。知らない?パンの親戚みたいな食べ物だよ。今、用意するからね」


 わたしは部屋にあった丸テーブルに熱々のピザを2種類並べた。包丁を取り出し、それぞれ8等分にカットする。そして取り皿を用意したところで気づいた。


「ガンフィ、椅子に座れる?まだベッドにいた方がいい?」


「さきほど、トイレに行けました。テーブルにつくことはできます。しかし………」


「なに?何か問題があるの?」


「テーブルの様子を見ると、クロム様達もご一緒に食事をなさるようですが、いいのでしょうか?」


「なにが?」


「私のような者がご一緒しては、目障りではございませんか?」


「なんだ、そんなこと?」


 ガンフィは、変なこと気にするんだね。食事は皆で食べたほうが美味しいんだよ。


「問題ない。冷める前に食べるぞ」


 そう言って、クロムは椅子に座った。


 台所でスープ皿を洗って戻って来たアリカは、わたしにスープ皿を返すと手持ち無沙汰にしている。


「アリカもテーブルについてね。一緒に食べよう?」


「え?私達ギベルシェンは食べないよ。知らないの?」


「正確には、食べなくても生きていける、でしょ?知ってるよ。でも、サムサもアリアも一緒に食べてくれたよ。いまは出掛けていないから、アリカが一緒に食べて。それで、感想を聞かせてほしいの」


「嫌よ」


「どうして?」


「昔、ふざけてキノコを食べたことがあるの」


「そうなんだ。美味しかった?」


「美味しかったわ。でも、すぐに身体が痺れて動かなくなったの。完全に痺れがとれるまで、2日もかかったのよ。だから決めたの。私は食べない!ってね」


「そっか。無理強いはしないよ」


 アリカは食べることに対して、嫌な思い出があるんだね。キノコは毒があるものもあって、素人には見分けるのは難しいよね。でも、美味しくて安全な食べ物があるって、アリカには知ってほしいな。


 結局、テーブルにはクロムとガンフィ、そしてわたしがついた。アリカは部屋の隅でこちらを見ている。



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