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52 リンゴのケーキを作ろう 5日目

「エルは可愛いから、奴隷商人には気をつけないとだめだよ。奴らは魔力を封じるアイテムを持っていて、それで抵抗できなくして言うことを聞かせようとするの」


「奴隷商人?」


「そう。見た目のいい人間を捕まえて、お金持ちに売りつけるんだって」


「奴隷商人は、魔力を封じるアイテムを持っているの?」


「そう。魔力を使えたら、奴隷に抵抗されるもんね」


 そっか。そんなアイテムがあるなら、奴隷じゃなくても、捕らえた人間の力を封じる目的で使う人間はいるかもね。


 いまのわたしはせいぜい人間の6歳児程度の力しかない。身体強化を使わないと、料理もできない。魔法が使えなかったら、ただの子供だよ。


 もしわたしが魔力が使えない状況になったら、どうしたらいいんだろう?きっとクロムが助けに来てくれるけど、クロムが駆けつけてくれるまでの間に自分にできることをしたい。それには、身体を鍛えておくことも大事だよね。


 身体を鍛えると言えば、何があるかな?体力作りのために走ったり、腕立て伏せや腹筋があるよね。あとは………素振り?わたしにできるかな。ううん。できなくても、少しづつやればいいよね。


 身体を作る以外にも、魔法の訓練もしなくちゃね。


 クロムみたいな繊細な魔力操作が出来たらいいな。


 魔法は強くイメージすることで現実となる。クロムの魔法が繊細なのは、それだけ具体的で繊細なイメージができている、ということだと思う。


 具体的なイメージに必要なのは、知識と経験だよね。わたしはそれが圧倒的に足りない。


「むうっ。どうしたらいいんだろう?」


「………何を悩んでいるのだ?」


「わわっ。クロム!?」


 ふいに声をかけられてびっくりした。


 わたしは椅子に座ってアリアに髪を梳かしてもらっていたから、アリアが驚いてバランスを崩したわたしが椅子から落ちないように身体を抱き留めてくれた。


「エル、大丈夫?」


「う、うん。ありがとうアリア」


「じゃあ、私は行くね。そうそう。服は用意した方がいいからね」


「うん。わかった。おやすみ」


 アリアに向かってひらひらと手を振ると、クロムが怪訝そうな表情でわたしの顔を覗き込んできた。


「服を用意するとは、どういうことだ?今の服では不満なのか?」


 今わたしが着ている服は、クロムとふたりで考えて作り出した服なんだよね。裾の模様は、クロムがデザインしてくれたんだよ。


「アリアがね、魔力を使えない状況になることも考えて服を用意した方がいいって言うの」


「どういうことだ?俺がいるのに、そんな状況に陥るわけがないだろ」


「あれ?そっか。クロムといれば、危険なことなんてないよね」


「よくわからんが、エルのことは俺が守ってやる。おしゃれしたいと言うなら、好きにすればいい。エルなら何でも似合うだろう」


「ありがとう。アルトーの街へ行ったときに、クロムがわたしの服を選んでくれる?」


「ああ、いいぞ。仕立屋へ行って、好きなデザインの服を作らせるのもいいな」


「クロムは服を作らないの?クロムこそ、何でも似合うと思うよ。かっこいいもん」


「ふふんっ。そうだろう。俺は何でも似合うのだ」


 褒められたことが嬉しかったのか、クロムは目を細めた。


 改めてクロムを見ると、黒い髪はしっとりと洗い上げられさっきまでより艶が増しているように見える。こんなこと言うと笑われるかもしれないけれど、普段より艶っぽい雰囲気を纏っている気がする。


「髪を結んであげようか?」


「いや、結んでも寝ている間に乱れてしまうだろう。必要ない。寝るぞ」


「うん」


 ベッドによじ登ろうとすると、すかさずクロムに抱きかかえられてベッドに横になった。クロムが腕枕をしようとしてくるけど、子供の身体にはクロムの二の腕は太い。タオルを取り出し、枕代わりに丸めて頭に下に敷いた。


 それを見たクロムが不満そうな声を出したけれど、クロムの服を掴んで身体を寄せると、今度は満足そうな声を出した。


 ふふっ。クロムってば、大きな動物みたいで可愛い。


 翌朝、まだ陽も出ていないうちに目覚めた。そっとベッドから抜け出す。


 まずは、何をしようかな?酵母ができてないからパンはまだ作れないし、そんな気分じゃないから、ケーキを作ろうかな。クリームチーズがないからチーズケーキは作れないし、ココアとチョコがないからチョコレートケーキも作れない。


 そもそも、クリームチーズはともかく、ココアやチョコはあるのかな?木の実があったとしても、食べられる状態にするまで大変だよね。砕いて石臼ですり潰せばココアになるかな?


 今あるもので作れるケーキと言えば、タルトかスポンジケーキ、パウンドケーキだよね。


 よし。リンゴのケーキにしよう!


 まず、地下の食料庫からリンゴを出してきて、皮を剥いて4等分に切る。芯を取ってから、さらに3等分に切れば、薄いリンゴのくし切りのできあがり。あとは鍋でバターを溶かし、リンゴの薄切りを並べて砂糖と少しの水をかける。シナモンパウダーがあったから、シナモンパウダーをたっぷりとかけて風味をつけていく。リンゴのシナモン煮が出来たら、鍋に入ったまま置いておく。



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