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51 情報ギルド『月影』

「さて。王都の様子ですが。今のところ混乱などなく、民は普段通りに過ごしております。ガノンドロフ王子が行方知れずとなったことは、貴族の間でも公には広まっていない模様。しかし水面下ではガノンドロフ王子を探す部隊が活動しており、少しづつ捜索範囲を広げている様子です。表向き、ガノンドロフ王子は体調不良ということになっており、王子のご家族は離宮に軟禁状態となっております」


 なんでガンフィの家族が軟禁状態になっているんだろう?王妃かミルドレッドが手を回したのかな?


「そして、ミルドレッド姫の動きについてご報告致します。ガノンドロフ王子が毒に倒れた時には、王城ではなく王都の西にあるフラヴンという街に滞在していたことがわかりました」


 あれ?それなら、どうやってミルドレッドはクロムの鱗の存在を知って、そしてどこで受け取ったんだろう?


「ミルドレッド姫はフラヴンの街を視察中に部下からクロム様の鱗の存在を聞き、すぐに行動に移したようです。フラヴンの街から王都まで早馬を飛ばして戻り、その足で王に王太子の再選定を直訴したとのこと。今は自分の離宮に泊まりながら、ガノンドロフ王子に追手を差し向けるべく情報を集めている最中です」


 ………その情報を、ルオーはどこから手に入れているんだろう?


「ちなみに。私は『月影』という情報ギルドのギルド員で、情報を扱うのは専門なんです。ミルドレッド姫の子飼いはわざと泳がせていたのですが、面白いことをしてくれたので、今は捕らえて情報を引き出しています」


 おお。なんだか、新しい情報が出てきたよ。ルオーはその『月影』だから、色々なことを知っている、ってことかな。そりゃあ、ただの商人がこんな国家の大事なことを知っているはずがないよね」


「それにしても。その情報をどうやってやりとりしているんだろう?わたし達みたいに、転移の魔法陣を使っているのかな?」


「いや、水晶だろうな」


「水晶?」


「通信用の水晶を使えば、遠く離れた場所でも、お互いの顔を見ながら話ができるのだ」


「へえ。便利な物があるんだね」


「古代の遺物だ。今の技術では作り出すことはできん」


 古代の遺物か。それじゃあ、古代遺跡で発掘された物を使っているのかもしれないね。前にクロムが古代遺跡の話をしていたから、そういう物が存在するんだと思う。


「古代遺跡で発掘した物を使っているの?」


「そうだろうな。新たに作り出せない以上、数に限りがある。権力者が使用しているはずだ」


「そっか。『月影』は力があるんだね」


「この国では、ある程度の力を持っているとみていいだろう。第一、そうでなければ王城での出来事を知ることなどできないぞ」


 ふむふむ。


「たぶん、『月影』に所属していることは、重要な情報だよね?それを教えてくれたっていうことは、ルオーはわたし達の味方だと思っていいのかな?」


「まだ、何とも言えないな。確かに、ルオーは自分の立場を明かし、有益で貴重な情報をもたらしてくれた。だが、すべてを明らかにしているわけではない。国の行く末が変わるかもしれないのだ。情報ギルド員なら、今回の事件を利用してうまく立ち回ろうとして当然だ」


 そうか。未来の王がガンフィになるか、ミルドレッドになるかで、ハノーヴァー国の在り方は大きく変わる。国民のひとりとしては、生き残るために必死にもなるよね。


「俺達に情報を流すことは、ルオーの独断ということはないだろう。組織というものは、必ず上の指示の元に動くからな。だが、どの情報を流すか最終的に決め行動しているのはルオーだ」


「うん」


「得た情報から察するに、ルオーはかなりの裁量を与えられているとみていい」


「裁量って?」


「簡単に言うと、なにをするか『月影』からルオーが任されているということだ」


「なるほど」


「情報というのは、鮮度が大事だ。貴重な情報ほど、早く知ることで次に備えることができる。その情報を、おそらくルオーは手に入れてすぐ流してくれている。明らかに、ガノンドロフの味方であると行動で示している。だが、足りない情報があるのも確かだ」


「というと?」


「なぜ奴は、ガノンドロフの味方をする?」


「あ、そっか。その説明がなにもないね」


「だが、今日の話はここまでだ。もう遅い。風呂に入って寝るぞ」


 それから、アリアに手伝ってもらってお風呂に入った。


 わたし好みの少しぬるめのお湯に浸かり、髪を丁寧に洗ってもらうのは気持ちよかった。アリアはわたしの身体も洗うと言ってくれたけど、それは恥ずかしいからやめてもらった。いくら女同士でも、恥ずかしいものは恥ずかしいの。


「エルは、服を持ってないの?」


 わたしの髪をタオルで拭きながら、アリアがそんなことを言ってきた。


「服ならあるよ。今も着てるでしょ?」


「これは魔力で作り出した物でしょ?魔力を使えない状況になったら、服も消えちゃうよね」


「え、こわい。なにその状況!?」


 魔力を使えないって、相当追い詰められた状態だよね。それって、たとえば、魔力が枯渇した状態とか?


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