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41 マジックバッグ

 1階に降りると、クロムがわたしを下ろしてくれた。


「まだサムサとアリアは来ていないね」


「………今、こちらへ向かっているぞ」


「あ、魔力感知でわかるの?」


「そうだ」


 そっか。わたしも魔力感知をできるようになった方が良いのかな?使えたら便利だよね。でも、便利と言えばアイテムボックスだと思う。アイテムボックスは使えるようになりたい。


「クロム、アイテムボックスが使えるようになりたいの。やり方を教えてくれる?」


「ふむ。アイテムボックスは少々難しい。それに適正があるからな。教えたところで、必ず使えるようになるとは限らないぞ」


「でも、使いたいの」


「では、これをやろう。マジックバッグだ」


 クロムがアイテムボックスから取り出したのは、使い込まれた腰に付ける子供用のバッグだった。革でできていて、丁寧に使われていたのがわかる飴色だった。それをクロムが、わたしの腰に付けてくれた。


「これ、どうしたの?」


「………もらった」


「??」


 誰にもらったとか、いつもらったとか、何も教えてくれなかった。まぁ、クロムが話したくないならしかたない。でも、大人用ならともかく、子供用のバッグをクロムが持っていたなんて不思議。どこで手に入れたんだろうね?


「バッグの容量は、この家1軒分くらいだ。それほど容量は大きくないが、時間停止機能が付いているため使い勝手はいいはずだ。………どれ、魔力の登録をするぞ。使用者登録をしておけば、エル以外の者にこのバッグを使えなくなる」


 クロムがマジックバッグの蓋をめくると、その裏に赤い魔石が嵌っていた。


「この魔石に手を触れて、魔力を流せ」


 クロムの言う通り魔力を流すと、魔力が空っぽだった魔石に魔力が満たされていく。少し魔力を流しただけで軽く反発があり、そこで魔力を流すのをやめた。


「それでいい。これで、そのバッグはエルの物だ」


「ありがとうクロム。ふふっ。嬉しい。何を入れようかな。やっぱり食料かな」


「他に入れたい物はないのか」


 クロムが呆れながら言ったけれど、食料以外に入れるものなんてある?わたしには思い浮かばないよ。


 クロムが持っている食料の半分くらいをわたしのマジックバッグに移してもらった。これで、クロムを頼らなくても料理ができるよ。


「じゃあ、そろそろ朝ごはんにするね。今日のごはんはフレンチトーストだよ」


 台所に立ち、昨日仕込んでおいたパンを見た。たっぷりあった卵液をパンが吸い込んでしっとりしている。


「今度はパンを使うのか」


「そうだよ。そのまま食べると硬いパンだけど、こうして卵液に浸しておくと柔らかくなって美味しいの。フレンチトーストは柔らかいパンより、硬いパンを使ったほうが美味しいんだよ」


 熱したフライパンでバターを溶かし、パンを焼きながら両面に焼き色がついたところでお皿に移していく。そして次々と山になっていくフレンチトースト。クロムがお皿を運んでくれるので、わたしは安心してパンを焼くことに専念できた。


 最後のパンを焼き終わってお皿に乗せると、クロムがすかさずお皿を手にしてリビングへ向かった。


 わたしもクロムの後についてリビングへ行く。


「では、食べるか」


「うん。いただきます」


「いただきます?なんだそれは」


「ごはんを食べる時の挨拶だよ。命を頂きます、っていう意味なの」


「………なるほど。いいな。いただきます」


「ふふっ。いただきます」


 挨拶をして、フレンチトーストを食べ始めた。


 フレンチトーストは外はカリッとしていて、中はじゅわっと卵液が染み出して来る感じがいい。これにメープルシロップをかけたいな。楓の木、どこかにないかな?


 今日もクロムの手は止まらない。引き締まった身体のどこに入るのかと不思議になるほどの量をぺろりと平らげた。元が大きなドラゴンだからいくらでも食べられるのかな?


 わたしが自分の分を食べ終わるのを待って、クロムは立ち上がった。お皿やカラトリーを片付けてくれる気らしい。でも配膳に慣れていないから、お皿を1枚づつ運ぼうとしている。


「「クロム様、エル様、おはよう〜!」」


 相変わらずノックなしで入って来るサムサとアリア。


「あ、片付けるところだった?いいよ、私がやるから任せて」


「俺は掃除をするね。埃っぽくなるから出ててくれる?」


「うん。わたしとクロムは畑へ行く時間だから行ってくるね」


「俺も行くのか?」


「うん。一緒に行こ?」


「………わかった」


 クロムはわたしをひょいと抱き上げると、そのまま畑に向かった。


 畑には村人が12人いて、わたし達が来るのをビクビクしながら待っていた。昨日は結界の外にあることを意識せずに収穫作業を手伝ってもらったけれど、今日は長から、畑が結界の外にあることを聞いてきたんだと思う。それに、生首がいくつも畑に並んでいる様子は怖いよね。


 わたしはクロムに畑に下ろしてもらい、村人に向かって一歩前に出た。


「今日は集まってくれてありがとう。ずっと収穫を手伝ってもらうつもりだったんだけど、見ての通りギベルシェンがいっぱいいるの。だから、畑仕事はギベルシェンにお願いすることにしたの」


 わたしの言葉を聞いて、村人達がざわついた。


「今日は予定通り収穫を手伝ってもらうけど、明日からは期待しないでね。村の畑も魔力を満たせば豊かになることがわかったから、皆には村の畑の世話をするか、元々の仕事をしてほしいの」

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