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38 虫小屋を作ろう

「家を作るから、どこがいいか教えてね」


 サムサがアーヴァメントとアーヴァグレタから手を離すと、2体は羽音を響かせながらそれぞれ家を作る場所を探して飛び始めた。畑をぐるりと回ったあと、2体は揃って畑の東から少し森に入った所で止まった。エグファンカは畑の西に家を作ったから、エグファンカとは畑を挟んでちょうど正反対の位置にある。


 わたしはアーヴァメント達のところへ行くと、木を育てて2軒の家にした。出入り口が狭くて、窓のない箱のような家だ。


 家ができると、1軒の家にアーヴァメントとアーヴァグレタが入ってしまった。


「あれ?同じ家でいいの?」


「本人達がそれで良ければいいのではないか」


 ふ〜ん。そうなんだ。本来は敵だったかもしれないのに、こうして同じ家で過ごすなんてすごいことだよね。いつ仲良くなったんだろう?


 家に戻ると、ロコル=カッツェがしっかりとアク取りをしてくれていた。鳥ガラスープが、澄んだスープになっている。まだ煮始めてから3時間は経ってないけど、これで良い気がする。ふふんっ。適当が大事なんだよ。


「ありがとうロコル=カッツェ。もう火を止めて大丈夫だよ。あとは綺麗な布を使って漉せば完成。サムサとアリアも見てて。次から2名にやってもらうことになるからね」


 サムサとアリアが見守る中、ロコル=カッツェに手伝ってもらって鳥ガラスープを濾していった。別の寸胴を用意して、綺麗な布を寸胴にかけ、その上から鳥ガラスープを流していくの。煮詰めたらスープの量は減っているけれど、それでも重いよ。気をつけないとこぼしてしまう。


 クロムはリビングの椅子に座り、じっとこちらの様子を見ている。うん。他にすることがないもんね。


 スープを漉したら、小鍋に取り分けて、具となる野菜や肉を加えていく。


「アリアは具が柔らかくなるまで煮てね」


「任せて」


「次はサラダの用意をするね」


 葉物野菜を3種類ちぎったり切ったりしながらボウルに入れたあと、ヘタを取ったミニトマトを半分に切ってボウルに入れた。


「………あんまり美味しくなさそうだけど、これでいいの?」


 わたしの手元を覗いていたサムサが、ぽつりと言った。


「大丈夫。これからドレッシングを作るんだよ」


「ドレッシング?」


「そう。植物油に酢と砂糖と塩を加えてしっかりと混ぜるの。簡単でしょ?」


 言いながら、ドレッシングの材料を混ぜていく。


「ふ〜ん。よくわからないけど、それで美味しくなるの?」


「そうだよ。できたドレッシングを野菜にかけて、下から野菜を持ち上げるように混ぜるの。全体にドレッシングが絡むようにね。さあできた。サムサはサラダをお皿に盛ってね」


「いいけど、エル様は何するの?」


「明日食べるフレンチトーストを仕込むの。買って来たパンは硬いから、時間をかけないと柔らかくならないでしょ」


「でしょ、って言われても、そんなことわからないよ」


 わたしはサムサの言葉を聞き流し、アルトーの街で買って来た硬いパンを縦にスライスしていく。横にスライスするより、縦のほうが切りやすいからね。


 パンが切れたら、バットに並べていく。大きなバット4枚分になった。さて、次は卵液を作る。ボウルに卵と砂糖、ミルクを入れて混ぜ、バットに並んだパンにかけていく。出来たら、バットの上に虫やホコリ避けの布をかけて仕込みは完成。


 さて。いよいよステーキを焼くよ。


 わたしは肉の塊からステーキ5枚分を切り出した。ここにいるのはわたしとクロム、ロコル=カッツェ、サムサとアリアの5名だからね。ギベルシェンにも食べてもらって、感想を聞きたい。


 ステーキ肉に塩、胡椒を振って味を馴染ませ、熱々に熱したフライパンに1枚乗せた。


 ジュワ〜〜〜!


 肉が焼ける音と匂いが広がる。


「ほお。食欲をそそられる匂いだ。音もいいな」


 いつの間にか背後に立っていたクロムが、わたしの頭越しにフライパンを覗き込む。


 わたしは背後にクロムを感じながら、フォークでステーキをひっくり返す。ああ、箸があればいいのに!


 ステーキが焼けると切り分けてお皿に盛る。


 ………あれ?スープはどうなったんだっけ?


「アリア、スープの具合はどう?もう具が柔らかくなったんじゃない?」


「まだよ。まだ形が残ってる」


「いやいやいや!それじゃ溶けちゃうでしょ!フォークで刺して、すっと刺さればいいんだよ」


「そうなのね。じゃあ、もう柔らかくなってるわ」


 アリアはニッコリ笑って火を消した。


 あぁ、これは、わたしが悪いんだね。普段、料理なんてしないギベルシェンに任せたのは悪かったよ。


 スープ鍋を覗くと、野菜はクタクタになっていた。悲しい気持ちのまま塩、胡椒で味を整えて、お皿にスープをよそう。味はいいからよしとしよう、そうしよう。


「皆でサラダとスープ、それとカトラリーをリビングのテーブルまで運んでね」


「カトラリーって何?」


「エル、俺も運ぶのか?」


「カトラリーはナイフとフォーク、スプーンのことだよ。そこの棚にあるから、5名分運んでね。クロムは手伝わなくていいよ。いまステーキを持っていくから、テーブルで待っていてね」


「エル様。僕がステーキを運ぶよ」


 わたしがステーキを運ぼうとしたら、横からスッと伸ばされたロコル=カッツェの腕に皿を持って行かれた。


 うっ。悔しいけど、あんな軽やかにお皿を運ぶことはわたしにはできない。身体強化をかけずにお皿を運ぶのは難しいし、かと言って身体強化をかけた状態ではお皿を割るかぶん投げる可能性がある。とっても緊張する作業だ。


 まぁ、いっか。わたしはステーキを焼こう。




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