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34 アーヴァメントとエグファンカ

「エグファンカは飼い慣らすのが大変だろう?その点、アーヴァメントはエル様が求める蜂に似た姿だし、オレンジ色の身体と黒っぽい脚にあのくびれ。鋭い毒針で攻撃されたら、ワイバーンだって昏倒するんじゃないかな。知らないけど。僕が知ってるのは、アーヴァメントは毒の濃度が違う2種類の毒針と、麻痺毒を使い分けるってことだよ」


「ふふんっ。それはエル様が求めている蜂じゃないわ。アーヴァメントの中でも戦闘に特化したアーヴァグレタよ」


「え?同じアーヴァメントじゃないの?」


「そうよ。アーヴァメントの仕事は採蜜だけど、アーヴァグレタの仕事は護衛。兵士なのよ。役割が違うし、能力が違うの。アーヴァメントは首周りに金色の被毛があって可愛いのよ」


「いや、可愛さはどうでもいいよ。それより、アーヴァグレタは採蜜はできないの?」


「できない事はないと思うけど、時間がかかり過ぎるわよ。どうしてもアーヴァグレタを飼いたいなら、アーヴァグレタは護衛にして、エグファンカに採蜜させた方が効率的よ」


「君はどうしてもエグファンカを飼いたいんだね。でも、アーヴァメントとアーヴァグレタを飼って交配させて数を増やしたらどう?数がいれば、短時間で花の蜜が集められるよ」


 サムサとアリアはそれぞれ譲れないものがあるらしく、わたしそっちのけで話し合いを続けたい。


 それよりわたしは、目の前の作業に集中しなくちゃ。今は野菜と鳥の骨を寸胴で煮込みながら、丁寧にアクを取っているところ。ここで手を抜いたら、アクまみれの濁ったスープができてしまう。


 わたしが作っているのは、いわゆる鳥ガラのスープ。鳥の骨に付いた汚れや血合いを綺麗に洗い、ネギと生姜、お酒(今回は蒸留酒を使った)と一緒にアクを取りながら煮込んでいく。沸騰しないようにするのがポイント。これを3時間続ければスープができあがる、はず。


 ………そう。3時間。


 サムサとアリアが交代でやってくれれば助かるのに、その気配が感じられない。今、2名はハチミツのためにどの魔物を捕まえて来るか熱く語り合っている。


「………いい?私はエグファンカを捕まえて来るわ」


「僕はアーヴァメントを捕まえる。もちろん、アーヴァグレタもね」


「ふふんっ。そんな欲張って2体とも捕まえられると本気で思ってるの?ずいぶん楽天的なのね〜」


「見てろよ!2体とも捕まえて、君を驚かせてやるよ」


「楽しみにしてるわ」


「「というわけで、行ってきます!!」」


 声を揃えて宣言すると、サムサとアリアは我先にと家を出て行ってしまった。


 なにが「というわけ」なのか。ただの意地の張り合いにしか見えなかったけれど、止めたほうが良かったのかな。………ま、いっか。あの勢いは止められなかったし。


 と思っていたら、ロコルがやって来た。


 ………やっぱり、ノックはない。


「エル様、今ギベルシェン達が出ていきましたが、纏う雰囲気が以前と違っていました。何かありましたか?」


「うん。実は………」


「何ですか?」


 ………そうだ。群れの長であるロコルに断りもなく、ギベルシェン達に名前を付けちゃった。名持ちの魔物は特別だって言っていたよね。わたし、ロコルに断りもなく余計な事しちゃったかも!


「ロコル、ごめんなさい。わたし、サムサ達に名前を付けちゃった」


「………名前ですか。なぜ、名前を付けようと?」


「わたしが呼びかける時に名前があったほうが楽だっていう話をしたら、サムサとアリアが、わたしが名付けするなら名乗っても良いって言って、それで………」


「それで、名付けを行ったと言うわけですか」


「うん。ごめんなさい」


「エル様、私は怒ってなどいませんよ?もちろん、私にも名前を頂けるのですよね?」


「え?」


 ………怒ってない?本当に?


「それで、私の名前は何と言うんですか?教えてください」


 いやー!やっぱり怒ってる!顔はニコニコしているのに、目が物凄く怒ってる!


 でもでも、代々受け継いでいく名前があるのに、それを無視した名前をつけるわけにはいかないよね!?どうしよう………あ、思いついた。こんなのはどうだろう?ロコル=カッツェ。今までの名前と組み合わせるの、良いんじゃない?


「………ロコル=カッツェと言うのはどう?」


 恐る恐る聞くと、ロコルは一度目を見開いたあと、ニコリと微笑んだ。


「気に入りました。それで、他の者の名前は何と言うのですか?」


「ええと、わたしとクロムに付いてくれてる子達がサムサとアリア、洞窟で見張りをしてくれているのがサムシとアリイ、他はサムス、サムセ、サムソ、サムタ、サムチ、サムツ、サムテ、サムト、サムナ、アリウ、アリエ、アリカ、アリキ、アリク、アリケ、アリナ、アリニ、アリヌ。それから、ロコルナはロコルナ=ティルリだよ」


「ふむ。いいでしょう。名付けは特別なものですから、あとでエル様に名を頂くよう他の者に言っておきますね。………ところで、サムサとアリアは私の命令を無視してどこへ行ったのですか?」


 ………あ。まだ怒ってる。今度はサムサとアリアに。

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