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 それから、わたしは見張り時間ではないギベルシェンを4名連れて家まで来た。


 家の隣には木が生えているだけだから、ここに新たな家を建てることができる。ここに、ギベルシェン達の家を建てようかな?で、ついでに洞窟に置く家具を作るの。


 でも、まずはギベルシェン達の希望を聞かないとね。勝手なことをして「こんなの嫌だ!」って言われても作り変えることはできないから。


「ねえ、ギベルシェン達」


「な〜に?エル様」


「ここにあなた達の家を建てようと思うんだけど、どう思う?3階建てまでは作れるけど、人数が多いから家は4軒は必要かな?何か希望はある?」


「ああ〜、そういうのはロコルに聞いて」


「ロコルが皆のことを決めることになってるから」


 なるほど。わたしは聞く相手を間違えたらしい。


 畑に行くと、畑の隅に木箱が積まれていた。そしてロコルの指示のもと、ギベルシェン達が種や野菜、果物を手にして畑に植えているところだった。


 クロムは特にすることもなく、つまらなそうにしていた。


「クロム!ギベルシェン達を洞窟に案内してきたよ」


「ご苦労だった」


 ふふっ。嬉しい。


「エル様、ご案内いただきありがとうございます」


 ロコルがわたしに気づき、そばへやって来た。


「ロコル、あなたに確認したい事があるの。いい?」


「はい。何でしょう?」


「ギベルシェン達に家は必要?必要なら、わたしとクロムの家の隣に建てるよ。3階まで建てられるけど、なにか希望はある?家は複数あったほうがいい?」


「家、ですか」


 ロコルはぽかんとした顔でわたしを見つめている。


 これは何だろう?わたしが家を建てるのが不思議なのかな?


「はっ、失礼いたしました。我々は土に潜り暮らす種族なので、家に住むという概念がないのです。家は必要ありません」


 それは、植物系の魔物だから?


「でも、寝る時はどうするの?休んだり、食事をするときは?」


「我々は、基本的に土の中で過ごします。冬眠状態となり、何年も土の中で過ごす事もあります。食事はいたしません。我々は水と光、そして魔素と土があれば生きていけるのです」


「う〜ん。でも、ご飯を食べるのは楽しいし、ベッドで寝るのは気持ちいいよ」


「楽しい?食事をするのがですか?食事は生きるためには不要なものです。必要ありません。それに、土の中で過ごす快適さに勝るものはありませんよ」


 結構、頑固だね。


「じゃあ、どこで寝るの?森の中?」


「いえ。エル様の魔力で満たされた、この畑で眠らせていただいたいと思います」


「畑は種を植えているところでしょ。埋まる余裕なんてあるの?」


「はい。我々が埋まることを前提に種まきしております」


 なにそれ!


「クロムが許可を出したの?」


「いや、種まきはロコルに任せていた。………エル、奴らは植物系の魔物だ。家で寝泊りするよりも畑が快適だと言うなら、それで良いではないな。そもそも、自然と共に在るのが魔物の自然な姿だ。何をこだわっている」


 何と言われても、わたしは自分が良いと信じるものをギベルシェンにも体験して喜んでもらいたいだけで、決して押し付けたいわけじゃない。


 せっかく人間の村で暮らすのだから、人間の暮らしを体験するのも良いと思うのだ。


「エル様、せっかくお気遣いいただいたのにご厚意に応えられず申し訳ありません」


「ううん。いいの。わたしこそ、しつこくしてごめんね」


 ………はぁ。畑をやる仲間が増えて浮かれてたのかな。


「おい!エル!」


 オイクスの声が聞こえて振り返ると、怒りに震えるオイクスがそこに立っていた。何の用事だろう?今は、あまり話したい相手じゃないんだけどな。


 身体の向きを変えて、わたしはオイクスと向き合った。


「こいつらは誰だ!?こんな怪しい奴らを村に引き込むなんて、何を考えている!?説明してみろ!」


「村に引き入れてなんかいないよ。土に埋まってたのが、木を除けたら出て来ただけ」


「意味がわからん。もっとわかりやすく説明しろ」


「ここにいる皆は、ギベルシェンていう種族なんだって。植物系の魔物で、土に埋もれてさえいれば幸せらしいよ」


「魔物だと!?この村に魔物は入れないはずだ。………そうか。ここは元々木が生えていた村の外なんだな?だから魔物がいたのか」


「ギベルシェンは人間に害を成さない温厚な種族だ。ギベルシェンがいると土地が豊かになり、作物は収穫量が増えるぞ。どちらかというと、魔物というよりは妖精に近い」


 へえ。そうなんだ。今朝よりも収穫量が増えるのかな?


「しかし、村に魔物を入れるのは………」


「オイクス、この畑は結界の外にある。村の中ではないぞ。それに、ギベルシェンが出歩くのはこの畑と俺達の家、そして洞窟だけだ」


 ふむふむ。わたしの畑は村の外。ということは、村のルールに縛られないっていうこと?やったね。そのほうが自由に色々やれるよ。


「それは、魔物が村の中を出歩くってことじゃないですか!クロム様、結界を解いたんですか?」


「いや、結界は何もいじっていない。元々、結界は人間に害意ある者を通さないようになっている。だから、人間に害意を持つ魔物は通れないぞ」


 なるほど。そうやって、クロムは村を守っていたんだね。


「それに、だ。ギベルシェンがいる以上、畑仕事の手は足りる。もう村人を寄越さなくていいぞ」


「な!?」

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