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132 モテる男はつらい?

「こんにちは、アナベル。わたしのパーティーメンバーは変わらないわよ」


「ふふ。相変わらず、あの冴えないメンバーと一緒なの?だったら、彼は私が狙ってもいいわよね?」


 うわあ。なにこの人?他人の仲間を冴えないって言って馬鹿にしたり、堂々とクロムを狙う宣言をしたり、態度が悪いにもほどがある。これで、クロムにいい印象を与えられると思っているなら馬鹿すぎる。


「はあ………クロム、この子はアナベル。アナベル、こっちはクロムとエルよ。ふたりは父娘なの」


「「「「「え!?」」」」」


「まさかの子持ち?でも、あの顔なら子持ちでもいいわ」


「ていうか、妻子持ちなんじゃないの?」


「妻子持ちなら、勝ち目がないんじゃ………」


「私なら勝てるわよ!」


「ぷっ。あんたは無理!」


 ざわめきが広がり、女性達は勝手に言い合いを始めてしまった。


 そういえば。わたしには母親がいないんだよね。あ、べつに、それが寂しいっていうわけじゃなくて。ほら、ロゼリア妃とリドリー王子、ハワード王子と旅をするわけでしょ?だから、旅の間、親子を演じるのもいいかもしれないと思ったの。


 そのことを、念話でクロムに伝えた。


『いい考えだ。いい女除けになるだろう』


 という答えをもらったので、簡単に打ち合わせして、さっそく行動に移す。


「クロム、身分証をもらったらお母さん達と合流するんだよね?」


「ああ、そういう約束だ。久しぶりに会えるんだ。嬉しいだろう?」


「うん!お兄ちゃん達も元気にしてるかな?」


「ローゼがついているんだ。元気にしているだろう」


 ロゼリア妃の名前を出すわけにはいかないので、ふたりで勝手に考えた偽名を口にする。


「そうだね。クロムはお母さんのことを信頼しているんだね」


「当然だ」


 という会話をしていたのだけど、女性達は一向に引く気配がない。


「私、第2夫人を狙うわ!」


「クロム様を射止めた女の顔を見てやる!」


「私は第3夫人でもいいわ」


「だから、あんたは無理だって!」


「ふふんっ。私は妻子を追い出して、クロム様を私だけのものにしてみせるわ!」


 ………それ、本人目の前にして言うことかな?


 などとやっているうちに時間が経ち、クロムは冒険者ギルドの身分証を受け取ることができた。


 冒険者ギルドは成人前の13歳から登録することができるのだけど、13歳は最低ランクのFランクスタートになるんだって。


 だけどクロムは成人しているから、ひとつ上のEランクスタートになると説明された。


「じゃあ、森猫亭へ行くか」


 クロムに群がる女性陣にゲンナリしながら、ドーザーが声をかけてきた。


 行き先を口にしない、という手もあるのだけど。彼女達はついて来る気満々なので、それは意味がない。


 結局、ドーザーの先導でゾロゾロと移動することになった。


「クロム様は冒険者になったばかりなのね。でも、安心して。すぐにランクが上がるから。私がランクアップさせてあげる」


 アナベルがクロムの右側を陣取り、意味不明なことを言ってきた。どうやって赤の他人の彼女がクロムのランクをアップさせるというのか?冒険者ギルドにコネでもあるのかな?


「私、こう見えてCランクなのよ。強いでしょ?だから、クロム様のことも強くしてあ・げ・る!」


 うわっ。最後の言い方が気持ち悪い!鳥肌たっちゃった。


 クロムは表情が変わらない。アナベルに興味がないから、なにを言われても平気なのかもしれない。


「私はDランクだけど、もうすぐCランクに上がるんだから。アナベル、あんたには負けないわよ!」


 クロムの左隣を陣取っている女性が、アナベルを睨みつけた。なかなかの迫力だった。


「さあ、着いたぞ。って、なんだ?あいつら………」


 ドーザーが一軒の宿屋兼食堂へ案内してくれたのだけど、その店先にひとりの女性が子供連れで立っていたのだ。


 美しい赤い髪と茶色の瞳をした、凛とした美しい女性で、その瞳に宿した力強さは見た者をハッとさせる。身体にぴったりとした綿の服に革装備、腰にいた短剣は使い込まれた様子を見せている。


 残念なのは、その美しい髪が短いことくらい。


 子供はふたりとも男の子で、金色の髪と青い瞳をしている。女性に似た凛々しい顔をしていて、年はわたしより少し上くらい。ふたりとも油断なく周囲を見渡していて、怪しい者が近づこうものなら手加減しないと言いたげに、腰のナイフに手をかけている。


 そして、赤毛の女性よりも少し背の低いひとりの女性がいる。茶色の髪に茶色の瞳をしていて、特に特徴のない顔をしている。マントを羽織っていて、中の格好はよくわからないけれど、どこにでもいる格好だ。


 そんな4人を、男達が遠巻きにして眺めていた。女性の美しさに目を奪われ、誰が声をかけるかという相談をしているようだった。


『クロム様、エル様、お待ちしておりました。ダフネです』


 突然、頭の中に女性の声が響いた。


 マントを羽織った女性と目が合った。





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