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13 オーブンを手に入れる

「それではエル様、店舗へご案内いたします。こちらへどうぞ」


「うん!」


 にっこにこで歩き出したわたしは、あっという間にクロムに捕まり、その腕にすっぽり包まれることになった。


 靴も履いているんだし、自分で歩きたいんだけどなぁ。でもまあ、楽だしいっか。


「こちらがオーブンですよ」


 ルオーが見せてくれたのは、鉄でできたオーブンだった。扉を開けると庫内は鶏が丸ごと焼けそうな広さになっていて、扉の横にはダイヤルがついている。そのダイヤルで温度調整するんだって。ダイヤルの下には小さな引き出しがあり、そこに魔石を淹れて使うらしい。さらにオーブンの上にはコンロが2つあり、そこでも調理ができるらしい。コンロの下にはそれぞれダイヤルがついていた。


「クロム、これ欲しい!」


「わかった。ルオー、これをもらうぞ」


「かしこまりました。しかし、クロム様と言えど、お代をお支払いいただかないと………」


「それなんですが、ルオー様。じつは、クロム様から鱗をお譲りいただいておりまして………」


「はっ?鱗?………!!ばかなっ。どうして、それを早く言わないんだっ!」


 そういえば、トリーにはクロムの鱗を渡していたね。ブラックドラゴンの鱗って、どれくらいの価値になるんだろう?金貨100枚とかかな?


「申し訳ございません、クロム様。こちらの連絡ミスでございます。応接室にて、鱗を確認させていただけますでしょうか?」


 そう言うルオーは脂汗が流れ、せっかくの綺麗に整えた毛並みがしっとりしている。


「………仕方ない。早く済ませろ」


 めんどくさそうにクロムに言われ、すっかり恐縮中のルオーとトリー。


 他の従業員はクロムの正体を知らないのか、わたし達のやりとりを不思議そうに見つめている。


 そうして戻って来た部屋で、トリーがマジックバックから鱗を取り出した。少し汚れているけれど、それでも美しいことには変わりない。磨けば、黒曜石みたいに輝くかもしれない。


「なんと立派な鱗だ。ふむふむ………傷もほとんどなく、状態もいい。いいでしょう。白金貨10枚お支払いいたします」


 おお、すごい!けど、白金貨10枚と言われても、実感が湧かない。どれくらいの物が買えるんだろう?


「トリーにも言ったが、金はいらん。代わりに買い物がしたいのだ」


「はい。何なりとお申し付けください。必要なものは揃えさせていただきます」


「やった!じゃあね、お菓子作りの道具が欲しいの。あと材料と、沢山の種も」


「エル様、それについては僕が把握していますのですぐに準備してきます。少々、時間がかかりますので、お待ちの間にアルトーの街の観光をされてはいかがでしょうか?」


 行きたい!こんな大きな街に来ることなんてそうないだろうし、観光したい!美味しい物を食べたいし、技術がどれだけ進んでいるのか見たいし、欲しい物がいっぱいある。


 クロムを見つめると、クロムはふふっと笑ってわたしの頭を撫でてくれた。


「ルオー、前言撤回だ。この街で使う金をくれ。エルと観光をしてくる」


「承知いたしました。金貨10枚と銀貨100枚ご用意いたします」


「それは、僕がお渡しします。………さあどうぞ。革袋に入れておきました」


 トリーがマジックバックから出した革袋を、クロムは中を確かめもせずアイテムボックスにしまった。


「クロム。トリーならクロムを騙すことはしないと思うけど、お金は確かめなきゃだめだよ」


「大丈夫だ。アイテムボックスに入れた物は、頭に思い浮かべるだけで中に何があるかわかるようになっている」


「えー、いいなぁ。わたしもアイテムボックス欲しいな」


「そのうちな」


 クロムはにっこり笑って私の頭を撫でてくれた。


「では、行ってくる。夕方には街を立つから、そのつもりで用意しろ」


「かしこまりました」


 ルオーとトリーに見送られて、わたし達はリングス商会を後にした。


「エルはどこへ行きたい?」


 わたしを抱いて歩きながら、クロムが言った。


「う〜ん、わたしは、美味しい物が食べたい。市場へ行ってどんな物があるか調べて、それから、なにが売れるか知りたいの」


「わかった、まずは飯だな。そこの店はどうだ?」


 クロムがお客さんで賑わう食堂を指して言った。


 賑わっているってことは、きっと美味しいんだろう。それに、この街での庶民の味を知るにはちょうどよさそう。


「いいよ」


 食堂に入ると、すぐに給仕の女性がやって来た。若くて、活発そうなヒト族のお姉さんだ。


「いらっしゃいませ〜。今、テーブルが全部埋まってて。相席でもいいですか?」


「相席とはなんだ?」


「え?」


 クロムの質問に、お姉さんが固まった。


「クロム、他のお客さんと一緒のテーブルにつくことだよ」


「そうなのか。俺はかまわんぞ。エルはどうだ」


「わたしも大丈夫。お姉さん、相席でお願いします」


 にこっと笑ったつもりなのに、お姉さんは青い顔をしている。


「もしかして、お客様は貴族様ですか?」


「違うが、それがどうした」


 うん。貴族とお姉さんと、どんな関係があるんだろう?

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