表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/141

125 報告2

「ガンフィ様は私がアルトーの街までお連れしますので、そこから自力で王都へ向かっていただきます。そうそう、騎士1名、メイド1名お付けしますのでご安心ください」


「護衛をつけてくださること、感謝いたします。しかし、アルトーの街までどうやって移動するのですか。歩くと時間がかかるが」


「もちろん、飛んでまいります。私がお連れしますので、ご安心ください」


「そ、そうか………よろしく頼む」


 ガンフィの顔が、心なしか引き攣っていた。


 一晩でこの村と王都を往復した速度を考えると、ディエゴの飛行速度は速いと想像できる。


 そしてガンフィひとりを抱えて飛ぶのは想像ができるけど、騎士とメイドが1名づついるとなると、どうやって飛ぶのか想像ができない。


 ガンフィ、大丈夫かな?


「ディエゴ、報告は以上か?」


「いえ、あと2点。ロゼリア妃と王子達が消えたことで暗殺計画が失敗し、激昂した国王が暗殺者の処刑を命じておりました」


「なんてことだ。やはり陛下が首謀者なのか………?」


 ディエゴの報告に、ラーシュは身体を小さくした。


「ここまでの話を聞いた上で、ラーシュ、あなたはどう判断しますか?まだ国王の剣として、ガンフィを討つ気でいますか?」


「陛下は、善政を敷いた尊敬すべきお方だ。しかし、いまの陛下はどうかされてしまったようだ。幼いリドリー殿下を暗殺など、正気とは思えない」


「では、ご自分の目で確かめてみますか?」


「は?」


 囚われの身でどうしろと言うのか?そう、ラーシュの目が雄弁に語っていた。


「ラーシュ・ダイダロス騎士団長。あなたには、ガンフィと共に王宮へ向かっていただきます。その上で情報を集め、仕えるべき王を決めるのがよいでしょう」


「………いいのか?」


「私達は、少々、人手不足ですからね。使える者は使わなくては」


 ディエゴが腰の剣を振るうと、ラーシュを縛っていたロープがはらりと切れて床に落ちた。


 ラーシュはディエゴの真意が掴みかけるようで、どうしたらいいか戸惑っているように見える。


 ディエゴの言葉を素直に受け取るなら、ディエゴはラーシュをガンフィの味方につけたいと思っているようだ。たしかに、ガンフィが王宮を掌握するには味方が少なすぎる。騎士団長であるラーシュが一緒にいてくれたら、行動範囲も変わってくるに違いない。


「そうそう。クロム様とエル様は、フラヴンの街でロゼリア妃達と合流していただきます」


「それはいいが、相手に俺達が行くことは伝えているのか?」


「ダフネを通して伝えますのでご心配なく」


 ふうん。ゴーレム同士、念話みたいなものが使えるのかな?


「フラヴンと言えば、近衛騎士のリヒト・ファフニールが転移した街だったな」


「そうです。ミルドレッドの息がかかった領主セゴル・フラヴン伯爵が治めています。目立つ行動は、くれぐれもお控えください」


「わかった」


 本当にわかってるのかなぁ。クロムは存在自体が目立つから、ちょっと心配。


「それから。騎士オルガ・ディフェンサーがヨアルの街に転移したとの情報を得ました」


 あ、いたね、そんな人。すっかり忘れてたよ。


 それにしても。ヨアルの街ってどこだろう?初めて聞いたよ。

 

「ヨアルの街は、ダンジョン都市です。街の中ではなく、ダンジョンに飛ばされていたとしたら、発見が遅れたことも理解できます」


 ガンフィが説明してくれた。


 でも、そうすると、魔法陣の設置場所がおかしいよね?王族の脱出用魔法陣のはずなのに、ひとつは黒の森に、もうひとつはフラヴンの街、最後はヨアルの街。黒の森は魔物が徘徊していて危険だし、フラヴンの街は王都からそれほど離れていない。ヨアルの街は、ダンジョンに繋がっているかもしれない。


 どこに転移したとしても、危険からは逃れられない気がするよ。


「それでは、それぞれ準備が整い次第、出発することといたしましょう」


 ディエゴがそう言って談話室の扉を開けると、廊下に待機していたのか、ユルドやヴィルヘルム達がぞろぞろと室内に入って来た。


 ユルドがメイド1名、騎士1名を連れてわたしの前にやって来た。


「エル様。まずは、ガンフィ様に付き添うこたになったこちらのメイドと騎士に名前を付けてくださいませ。簡単な名前で構いません」


「そう言われても………」


 いきなり言われても、名前なんて思い浮かばないよ。


 わたしは、なにかヒントになるものがないかと、目の前のふたりを見つめた。メイドはニコニコしていて、とても愛想がよさそうに見える。対する騎士は、どこか憮然としていて、与えられた仕事に不満を持っているように見える。


 それなら………。


「ええと。ニコとゼンはどうかな?」


 わたしが尋ねると、ニコは笑顔で、ゼンは目を逸らしながら「ありがとうございます。大切にします」と言った。


 急だったけれど、ふたりの名前が決まってよかった。


「では、ニコとゼンはガンフィ様、ラーシュ様と共に支度を」


「「はい」」


 ふたりは返事をして、ガンフィとラーシュを連れて談話室から出て行った。たぶん、着替えるんだろうな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ