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12 転移の魔法陣を設置する

「わざわざ当商会までお越し下さり、誠にありがとうございます。ご要望はなんなりとお申し付けください。全力で対応されていただきます」


「うむ。ルオーだったな。よい心がけだ」


「ありがとうございます」


「早速だが、転移の魔法陣を設置する場所が必要だ。案内してもらおうか」


「転移の魔法陣にございますか?それは、どのようなものでしょうか?」


「俺の洞窟の近くに獣人の村があるだろう。そこと、この街を繋ぐ魔法陣を設置するのだ。転移の魔法陣があれば、いつでも、好きな時に物を一瞬で運べる。そうすれば、わざわざ出向いて来ずとも、必要な物を手に入れられるというわけだ」


 その説明を聞いて、ルオーは考え込んだ。


 なにを考えているんだろう?


「それは大変便利ですが、危険でもありますね。その技術を悪用されないとも限らない。設置する場所も重要ですし、護衛も必要でしょう」


 技術の悪用?悪いことに使おうとする人がいるかもってこと?そうだね。それはありうる。生き物は運べないから、人や動物を運ぶことはできない。だけど、物なら運べるから、たとえば違法とされる物を運ぶこだってできるだろう。


「転移の魔法陣は、そう簡単に盗めるものではないぞ。古代の技術を使っているからな。古代遺跡で使われている技術だ、そうやすやすとは使えまい」


 へえ。古代遺跡があるんだ。行ってみたいな。


「なるほど。古代遺跡に使用されている技術ですか。それをご存知とは、さすがクロム様ですね。古代遺跡の技術は、現代の技術では解析できないものがほとんどです。となれば、転移の魔法陣を悪用される心配もほぼないでしょう。クロム様、転移の魔法陣はリングス商会で管理してもよろしいですか?」


「ああ、かまわん」


「それでは、リングス商会の倉庫の一部を提供いたします。そこは部外者は入れませんし、管理しやすいでしょう」


「いいだろう」


「それでは、ご案内いたします」


 ルオーについて行くと、最初に案内された建物を出て、中庭に面した大きな建物に入って行くことになった。天井が高く、広々とした造りになっていて、通路の奥は仕切られた部屋になっている。そこは見張りが立っていて、許可のない者は入れないようになっていた。


「この先に、貴重な品の保管庫があります。空いている部屋がありますので、そこをお使いください」


 案内された部屋は頑丈名扉がついていて、壁は石でできていた。


「少し狭いでしょうか?」


 ルオーが心配そうに言った。


 魔法陣の大きさがわからないから、適切な部屋の大きさがわからないんだと思う。


「いや、ここで十分だ。エル、少し離れて。………そう、そこでいい」


 ここまでクロムに抱っこされていたわたしは、地面に降ろされ、壁まで下がった。隣にはルオーがいる。


 トリーは、部屋の外で見張りについている。


 クロムは部屋の中央に立ち、わたしとルオーが離れていることを確認してから、なにかブツブツと呪文を唱えだした。耳を澄ませていてもなにを言っているのか聞き取れない。だけど、呪文に反応するように地面が光りだした。


 クロムを中心に円状に光り始め、それが次第に魔法陣の形を取り始める。とても綺麗だった。そして一際激しく輝いたのを最後に、地面は静まり返った。さきほどと、なにも変わらない。


「クロム、転移の魔法陣はできたの?」


「ああ。使う時だけ、一瞬、姿を現す。普段はこうして見えないようになっているものなのだ。それに、この魔法陣と対になる魔法陣を設置しない限り、これは起動せん。起動するための魔素は空気中から自動的に回収するように設定しておいたが、人間の街は古代遺跡やダンジョンと違って魔素が薄いからな」


 そこまで言って、クロムはルオーを見た。


「転移の魔法陣を使用する時は、念のため、部屋の四隅に魔石を置くがいい。そうすれば、魔法陣が足りない魔素を魔石から吸収するであろう」


「承知しました」


 魔石は、鉱山で発見されることもあるけれど、基本的には魔物の体内で作られた物を使うのが一般的だそうだ。ホーンラビットのような一般的な魔物にもあるので、魔石は簡単に採れる。人間は魔石を使って街に結界を張ったり、便利な道具を使ったりしているらしい。


 そういえば。料理をするにも、お菓子を作るにも、オーブンがあれば便利だよね。オーブン欲しいな。


「ねえルオー。オーブンはある?」


「ございますよ。ご覧になりますか?」


 わたしの突然の質問に動揺することなく、ルオーが答えてくれた。


「うん、見たい!今日、持って帰りたいの。それからね、欲しい調理道具や食材もあるし、種もまだまだ欲しいの。ねえ、砂糖の元ってある?村で育てられるかな?」


「砂糖の元ですか………それなら、グラムス芋ですね。グラムス芋を煮て汁を絞り、水分を飛ばしたもなが砂糖なのですよ」


「それ欲しい!苗はある?」


「申し訳ありません。いまは取り扱いがございませんので、至急、取り寄せさせていただきます。それでよろしいですか?」


「うん!」


 うわー、嬉しい。村で砂糖を作れたらいいよね?村に帰ったら、すぐに畑を用意しないと。

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