表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/141

106 フィナンシェ作り

「でも、それって使っていいの?だって、バーナビー達が仕えていた魔法使いの持ち物だったんじゃないの?」


「そうですけど。「もしおまえ達を再起動できる者が現れたら、その者に使ってほしい」と言われてましたからね。いいんですよ。いまの技術に合わない物は出せませんがね、鉱石は数百年くらい年月が経ったって変わりようがないですからね」


「それを言ったら、バーナビー達自身がアスケルディアの高度な技術力を体現しているようなものだよ。皆みたいなゴーレムの存在は聞いたことないもの」


「そう、それ!」


 え、どれだ?


 バーナビーが急に人差し指を立てて、ずいっとわたしの顔の前に突き出してきた。


「ギベルシェン達にも聞いたんですけど、いまの時代のゴーレムは俺達とはまったく違う魔物みたいですね。ゴーレムを連れ歩いている人間がいないってのは衝撃でしたよ」


「そうだね。わたしから見ても、バーナビー達みたいな滑らかに動いたり喋ったりするゴーレムなんて信じられないよ。まったく別の魔物だと思う」


「ですよねー。きっと、同じ名前で呼ばれてるだけで、俺達といまのゴーレムはまったくの別物ですよ。………あ、これ、サイズはこれで合ってます?」


 話の途中で、バーナビーは思い出したようにホール型を手に取り、わたしに聞いてきた。


「これは大きすぎ。もう少し、これくらいのサイズがいいの」


 と、わたしが両手でサイズを示すと、バーナビーはその場で型を希望通りのサイズにしてくれた。


 魔法を使ったのか、それともこれが錬金術なのかわからないけれど、どっちでもいいと思った。バーナビーの手の動きが、とても綺麗だったから。


 バーナビーは次々に型の形や大きさを確認しながら調整を行っていき、テーブルには完成した型が並んだ。


「ついでに、それぞれ予備を2個作りますね」


 予備の型があれば、状況に応じて沢山お菓子を作ることができるもんね。嬉しいな。


「ありがとう。バーナビーがいてくれてよかったよ」


「え!?」


「え?」


 わたし、お礼を言っただけだよね?なにか驚く要素があったかな?


「いや〜。エル様にお仕えできてよかったです」


「お礼を言っただけだよ?」


「そうですね。ふふふん」


 なにやらご機嫌のバーナビー。


「じゃあ、次の仕事が待ってますんで、俺は行きますね」


 バーナビーの足取りは軽く、なんなら踊りださんばかりの足取りで去って行った。


 なんだったんだ。


「それでは、フィナンシェとプリンを作りましょうか」


 ユルドはバーナビーの様子に気が付かなかったのか、平然と話しかけてきた。


 なので、わたしも平然とした様子を装う。


「あ、それなんだけどね。ミルクはないかな?ミルクがないと、プリンが作れないの」


「ありますよ」


「あるの!?」


 ないと思っていただけに、ユルドの答えにびっくりした。


「以前エル様が購入されたと聞きましたので、今後も必要になるかと思い、仕入れております」


「ありがとう!地下の食料庫にあるの?」


「いえ。私のアイテムボックスに入れております」


 なんと!ユルドまでアイテムボックスを使えるの!?羨ましい!


「私のアイテムボックスは容量が少ないので、貴重な物や、腐敗しては困る物を入れているのですよ。さあ、まずはなにからいたしましょうか」


 容量が少なくたって、アイテムボックスが使えるのは羨ましい。わたしも、いつか使えるようになりたいな。


「えっと、まずは材料を揃えて………」


 ユルドに指示を出しながら、まずはフィナンシェを作ることにした。


 卵が残り少なくなっていたけれど、これもユルドが仕入れてくれていたので安心して使える。


 材料が揃ったら、小鍋で焦がしバターを作る。小鍋に入れたバターが溶けて、沸々と泡が出てくると、やがて泡が細かくなっていく。そのまま様子を見ていると、泡の下のバターが茶色いに変わった。すぐに小鍋をコンロから下ろし、用意しておいた濡れ布巾に乗せて火止めをする。


 これをしないと、バターが焦げすぎてしまうの。


 焦がしバターを冷ましている間に、フィナンシェの生地を作る。


 新たに小鍋を用意してお湯を沸かす。そしてボウルに卵白と砂糖、ハチミツを入れて湯煎にかけながら砂糖を溶かす。


 砂糖が溶けたら湯煎を止めて、ボウルに薄力粉とアーモンドパウダーを入れる。


 そのとき、ふと思い出してユルドに聞いてみることにした。


「ユルドはベーキングパウダーを持ってる?」


「なんですかそれは?」


「ケーキを膨らませる、白い粉だよ」


「ああ、ふくらまし粉ですか。持っていますよ」


 ユルドが出してくれたふくらまし粉は大きな壺に入っていて、いくらでもケーキが作れそうだった。そこからスプーンで必要な量だけすくってボウルに入れる。


 ボウルの中身を混ぜ、馴染んだところで焦がしバターを加える。今度は、生地にツヤが出てくるまでしっかりと混ぜる。


 フィナンシェの船底のような型に生地を流し込み、ユルドが温めておいてくれたオーブンに入れた。


 さてと。フィナンシェを焼いている間に、プリンを作ってしまおう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ